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月100時間以上の残業をゼロにしたITエンジニアに学ぶ「残業をしない働き方」

2022.06.06

残業の弊害を痛感し「残業をしない働き方」を決意

「ITエンジニア」という職種には、「仕事がきつい」「残業が多そう」といったネガティブな印象がつきまとう。

働き方改革やコロナ禍での意識改革もあり、かつてほどブラックなイメージはなくなったが、他の業種・職種に比べれば残業は多いのが実情だ。

今はフリーランスのITエンジニアである田中聡さんも、会社員時代は「月100時間以上の残業」が当たり前。有給休暇を取れたのは、風邪で寝込んだときくらいだったという。

そんな田中さんであったが、残業の弊害を痛感し、「残業をしない働き方」を決意。試行錯誤はあったが、残業ゼロと有給休暇の完全取得を達成した。

残業すれば、残業代が出て財布が潤うという一面もある。にもかかわらず、田中さんが残業ゼロを目指したのは、いくつものデメリットを実感していたからだ。例えば、仕事そのものへの悪影響。「今日のタスクが終わらなかったら残業すればいい」という思考が常態化し、業務効率が下がり、成果もなかなか出ない。そして、プライベートの時間が失われるのは言わずもがなだろう。

■面倒なタスクを後回しにする問題

多くのITエンジニアがおかれた現状を打破してほしいと、田中さんは著書『ITエンジニア残業ゼロの働き方 ~現場で本当に使えた仕事効率化の法則95』(技術評論社)を上梓している。本書は、ITエンジニアだけでなく、残業まみれの日々に疑問を抱くすべてのビジネスパーソンに役立つ知識が満載。その一部を紹介していこう。

そもそも、残業が発生する理由の1つは、「今日なすべきタスクが終わらない」から。その部分に田中さんはメスを入れる。

“すべてのタスクを終わらせようとする人は、かんたんに終わるものから取り掛かり、手持ちのタスクをできるだけ減らそうとしがちです。なぜならどうせタスクをやらないといけないのであれば、トータルでかかる時間は同じだと考え、面倒なタスクはついつい後回しにしてしまうからです。”

すると、どうなるか?

“締切が近づくにつれて無理して残業したが、かんたんなタスクは終わっていても重要なタスクは残ってしまっている。”

という状況にはまる。

対して、成果をきちんと出す人は、タスクの中から重要なもの、自分が担当する必要があるものだけをピックアップし、それに集中する。すべてのタスクを、最初から完遂しようとしない。このやり方なら、締切が間近に迫ってきたときに、大事なタスクは終わっていて、あとは細かいものだけが残ることになる。また、重要度の低いタスクは、仕様変更などで必要がなくなることすらある。

これをふまえた、田中さんのアドバイスは明快だ。

“「すべてのタスクをこなす」というのは、最初から諦めましょう。その代わり、「限られた時間で成果を出すためにはどのタスクからやる必要があるのか」というタスクの優先順位をきちんと考えてから、取り掛かっていくべきなのです。”

■仕事の効率を高めるテクニック

田中さんが、残業をなくすために非常に重視するのは「仕事の効率」だ。

効率は今までのままで単に残業をなくしたら、アウトプット(成果)も減ってしまう。「効率×時間=成果」である限り、効率を高める工夫は欠かせない。

そのために田中さんがすすめる手法に、「ポモドーロテクニック」というものがある。やり方はこうだ。

1. 実行するタスクを決める。
2. 25分間、決めたタスクを集中しておこなう(この間、一切ほかのことは着手しない)。
3. 25分経ったら5分間の休憩をとる。
4. 1~3をくり返す。
5. 25分の集中を4回行なうたびに、20分~30分間の長めの休憩をとる。

このテクニック、ライフハック好きなら知っているかもしれないが、実践している人はたぶんあまりいない。というのも、かなりエネルギーを使い、続けるのが大変だからだ。とは言っても、田中さんが、はじめての人に推奨している25分のサイクルは1日10回だけ(慣れてきたら回数を増やす)。トータルで4時間10分。この時間だけでも集中することで、達成できるアウトプットの多さに驚くはずだ。決してらくちんなワークスタイルではないが、ぜひとも習慣化したい。

■出る必要性のない会議をどうするか

ある調査によれば、ビジネスパーソン(係長級)が会議に費やす時間は週に6時間だという。おそらく会議の中には、定例だからとなんとなく全員出席したり、必然性はないがルールで参加が強制されているものもあるだろう。

田中さんによれば、そうした会議に参加しての時間の空費を食い止める方法は1つ―「できるだけ出ない」だ。

もちろん、黙って出なくなるのは、社内で生じる軋轢が大きすぎる。相手にもよるだろうが、「私は出る必要がありますか」と伺いを立てよというのが、田中さんのアドバイス。

ちなみに田中さんは、強硬手段として「その会議のスケジュールを考慮しない」という手段をとっていたという。

“つまり、クライアントとの打ち合わせや、有給休暇の取得などで、その定例会議を考慮せずスケジュールを設定するのです。実際はそれでも問題は起きなかったので、毎回出席する必要はなかったのだと思います。”

もちろん、出席する意義も必要性もある会議は、いくつかは残る。そうした会議が、ずるずると長引かず実りあるものとするために、田中さんは「雲・雨・傘フレームワーク」の活用をすすめる。

・雲(空に雲が出ている):客観的な事実
・雨(雨が降るだろう):解釈・推論
・傘(傘を持っていこう):行動(アクション)、提案

会議もこの流れで、客観的な事実をもとにメンバー同士が解釈・推論をして、アクションに結びつけるよう努める。例えばプロジェクト進捗会議の発議で、トラブルが発生という客観的事実(雲)が提示され、締切に間に合わない可能性という推論(雨)がなされ、リスケや人員増強といったアクション(傘)が結論として決まる。

こう書くと「当たり前じゃん」と言われそうだが、「多くの会議では、これら雲・雨・傘があまり区別できていません」と田中さんは述べる。不毛な会議に終わらせないために、「次に起こす行動」を明確にすることを肝に銘じよう。

「エンジニアだから」「社風だから」などと、残業を正当化する風潮は、まだまだ残っている。それに対し田中さんは、「逆にエンジニアだからこそ残業をしてはいけない」と戒める。DXなどの需要の追い風の中、その最前線に立つ知的労働者が、エンジニアだからだ。いきなり残業ゼロは無理でも、田中さんのアドバイスをもとにできることから試みてはいかがだろうか。

田中聡さん プロフィール
フリーランス・エンジニア、研修講師(プログラミング、データ解析、統計学)。
東京工業大学理学部情報科学科および北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科を卒業。高校数学・物理の塾講師を経た後、エンジニアに転職。14年間の会社員生活の間に、中小企業の下請プログラマーから大手企業のプロジェクトリーダーまでを経験。

現在は会社員時代の人脈を武器に、フリーランス・エンジニアとして独立。また、プログラミングやデータ解析・統計学の研修講師の仕事も務めている。趣味はトライアスロン。『ITエンジニア残業ゼロの働き方 ~現場で本当に使えた仕事効率化の法則95』は、初の著書となる。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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