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摂食・嚥下の専門家が解説!介護食をおいしく健康的に食べ続けるコツ

2022.06.04

近年、高齢者向け食品市場が急拡大しているといわれている。市販の介護食が進化し、ホテルのレストランでは嚥下食を提供するところもある。そうした介護食の事例とともに、近年の介護食の進化について、摂食・嚥下に対するリハビリテーションの専門家の見解も紹介する。

UDF(ユニバーサルデザインフード)が増加中

近年、UDF(ユニバーサルデザインフード)というものが増加している。

UDFとは、普段の食事から介護食まで、高齢者をはじめ、歯の治療中などで固いものが噛めない人、食べ物を飲みこむ力が弱い人など、できるだけ多くの人が利用できるように考えられた「みんなにやさしい」食品のことを指す。

簡単に調理できるレトルトパックや冷凍食品をはじめ、飲み物や食事にとろみをつける「とろみ調整食品」もあり、食べやすいのが特徴だ。

日本介護食品協議会によれば、高齢者人口の増加に比例し、UDFに登録された食品の需要も増えてきているという。同協議会の集計によると、2020年のUDF生産額は500億円超となり、前年度の118.2%となった。また、UDFとして登録された商品は、前年度から172品目増え、2,161品目となっている。

この統計だけを見ても、介護食関連市場は伸びていることが分かる。

進化する介護食の例

そうした中、世の中の介護食は進化を遂げている。より見た目よく、また食べやすく、利用しやすくなってきている。例えばこんな例がある

1.カップ介護食「やさしい献立」(キユーピー)

「やさしい献立 カップタイプ」各254円(税込)

キユーピーは、1998年に市販用の介護食市場初となる「ジャネフ介護食」8品を発売した。翌年1999年に「キユーピー やさしい献立」シリーズに一新し、現在にまで徐々に進化を遂げた。UDFにも登録されている。パウチ入りに加えて、2021年には電子レンジにそのまま入れて温められるカップ容器入りタイプをリリースした。

その「やさしい献立 カップタイプ」は、オムライスなどなじみの深い料理をやわらかく調理してとろみをつけ、カップ容器に入れた介護食。やわらか親子丼風、ナポリタン、鶏釜めし、チャーハン、オムライス風、カレーライスの6種類がラインアップされている。

「やさしい献立 カップタイプ やわらか親子丼風」

同社の家庭用本部 調理食品部 育児・介護チームの担当者に、このカップ容器入りの介護食を開発、発売しようと思ったきっかけを尋ねた。

「近年、高齢者・要介護者数は増加を続けており、食事に関するニーズも多様化しています。介助者の年代は70歳以上が約4割を占め、老々介護も増えています。さらに高齢者のうち独居高齢者は2割に迫るなど、介護を取り巻く環境は厳しさを増しています。

そのような中、市販介護食の使われ方を調査したところ、洗い物が大変などの理由からパウチのまま食べている方が4割近くいることが分かりました。また湯せんで温める際にも火を使わせたくないという声もあり、温かい食事を落ち着いて食べにくい状況が見えてきたのです。食事は栄養を摂ればいいということではなく、ご家族やご本人にとっても笑顔になれるかけがえのない時間であってほしいと想っており、その一助になればと、食事の中心になる主食メニューからカップ容器入りにして、レンジで温めればすぐに食べられるタイプを発売しました」

介護食を利用する人は、見た目など様々な要因で食事をしなくなることも多いといわれる。そのため、同商品では食材の食感や形、食材らしい香りを保つために調理法を工夫しているという。

2.嚥下食の提供「SAKURA」ホテルニューオータニ大阪

「やわらかフレンチ(摂食嚥下サポート食)」イメージ

大阪城の隣に位置し、JR大阪城公園駅、各線京橋駅から徒歩数分の場所にあるホテルニューオータニ大阪は、フランス料理店「SAKURA」で嚥下(えんげ)食の提供を行っている。嚥下食とは、飲み込む力が弱い人に合わせて食材のとろみや食感、形態を調整した食事のこと。

その嚥下食のフレンチコース「やわらかフレンチ(摂食嚥下サポート食)」を2013年から提供を始めている。

同社のマネージメントサービス部 営業推進課 吉田照佳氏は、提供の背景について次のように話す。

「もともとホテルゲストであった嚥下食に関わる医師からアドバイスをいただき、料理提供を始めました。嚥下の具合はゲストにより様々です。シェフがゲストと直接電話で、体調と要望をヒアリングして、食べやすい大きさに切り方を工夫したり、とろみをつけたり、形状を変えたりしています」

「やわらかフレンチ(摂食嚥下サポート食)」イメージ

実際にこのフレンチコースを食した人からは、どんな声があがっているのだろうか。

「記念日などの利用が多く、できるかぎり他のゲストと見た目は同じメニューを提供することにより、家族と同じメニューを同じ空間で味わうことができます。そのため、日常では味わえないお食事の愉しみを思い出していただける良い機会であると、好評をいただいております。普段は食が細くなりがちなゲストでも、SAKURAでの食事では、たくさん召し上がっていただけるとのお声もございます」

実際、リピーターになる人も多いという。

SAKURAでは個室の利用も可能。さらに玄関からSAKURAのある18階までバリアフリーとなっており、車椅子対応の広々としたトイレも用意されている。ただ嚥下食を提供するだけでなく、特別な日に家族や大切な人と一緒に食事を味わえるという価値の提供も合わせて行っているところに特徴があるようだ。

3.介護食を形作る3Dプリンタ・とろみ付き自販機など

その他にも、介護食関連の進化は目覚ましい。例えば山形大学は介護食を作る3Dプリンタの開発を進めている。市販の介護食はどうしてもペースト状での提供になるが、3Dプリンタによって形状や食感を制御することで、食欲をそそる形を再現できるという。例えば、ニンジンをペースト状にしたものを、一見、輪切りのニンジンが重なっているかのように見えるよう、3Dプリンタで形作ることが可能だ。これにより、介護食の質向上を実現する可能性が期待されている。

また飲み物にとろみをつける機能がついた自動販売機も増加している。例えば、アペックスの「とろみ自動調理機」は、レギュラーコーヒーやココア、抹茶ラテまで自動でとろみをつける機能がある。医療・介護・福祉施設等に導入されており、嚥下障害のある人が手軽に飲み物を楽しめる。

専門家が語る進化する介護食への想い

現在、市販の介護食や介護食関連のサービスなどが増えており、またそのレベルも上がってきている。こうした状況について、専門家はどのように見ているのか。摂食・嚥下に対するリハビリテーションの専門家である、日本歯科大学教授で、口腔リハビリテーション多摩クリニックの院長である菊谷武氏に話を聞いた。

【取材協力】

菊谷武氏
日本歯科大学 口腔リハビリテーション 多摩クリニック 院長
日本歯科大学口腔リハビリテーション科教授。東京医科大学兼任教授、広島大学客員教授、岡山大学、北海道大学、日本大学松戸歯学部非常勤講師。1988 年に日本歯科大学歯学部卒業後、2001 年10 月より日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンターでセンター長を務める。同大学で2005年4月より助教授、2010年4月に口腔リハビリテーション科教授、2012年1月東京医科大学兼任教授に就任。2012年10月から口腔リハビリテーション多摩クリニック院長。

――日々進化している介護食について、どのような印象を持っていますか?

「日本人の食へのこだわりは、他の国の国民に比べて大きいものと思います。よりおいしく、より見た目もよくというニーズをとらえ、日本人ならではのこだわりの介護食ができあがっていると思います。市販の介護食や、介護食調理器具などの市販化、3Dプリンターを応用しての介護食製作などがその例です。

これらは良い意味でのこだわりを持つ、肌目細やかな心の日本人を大いに満足させることになるでしょうが、海外展開を考えたときに、家電機器がそうであるように『ガラパゴス化』の恐れもありますが、それでも良いと思います。私たちは、こんなところにもこだわりをもって、食べるって楽しい、おいしいといったところに価値観を持つのですから」

――近年の介護食は、どのような点が進化していると思われますか?

「味や見た目へのこだわりが介護食を進化させていると思います。採算度外視で、中小、さらに大手の多くの食品メーカーが参入してくれていることで、競争が生まれていると感じています」

――近年の介護食について、不足している点や、改善すべきことはありますか?

「企業の独りよがり的な部分も散見されます。ある介護食を作るお助け調理補助食品の相談を受けたことがあります。食品自体は良いものだったのですが、実際にその食品を使って介護食を作る際に手間がかかってしまったのです。時短、手間いらずではないと、なかなか実際に用いられません。その介護の現場の忙しい、手がかかるといった実態を理解していないと感じたことがありました。

一般に、介護食が必要になったときに初めてその存在を知る人が大半です。そういった一般への周知の低さが、実際に必要な人に届いていないのも事実です。各介護食企業の努力や、マスコミの皆さんの力も借りて、介護食を必要としない時期から知っている状態にしないといけないと思います」

おいしく健康に食べ続けるポイント

自分自身はもちろん、家族のことを考慮して、ぜひ介護食について知識を持っておきたい。そこで菊谷氏が解説するおいしく健康に食べ続けるポイントを紹介する。ぜひ押さえておこう。

1.栄養はもちろん“おいしさを感じながら食べる”ことが大切

「『介護食はおいしくない』という印象を持っている方も多いかもしれません。確かに、栄養を重視して様々な食材を混ぜてペースト状にすると、食材らしい色や食感が失われ、味がぼやけてしまうこともあります。しかし食材らしい色やおいしさにこだわった市販の商品も続々販売されており、日々進化しています。栄養だけに注目せずに、おいしさを感じられるモノを選ぶようにすると、QOL(生活の質)も向上します」

2.“食べる機能の低下”には自分でも気が付きにくい、ご自身も周囲の方も注意する

「食べる機能の低下は少しずつ進むため、本人も周囲の人も気が付きにくく、気づいていても軽視しがちです。むせやすくなったり、せき込みやすくなったりする以外にも、痰が増えるなど食事機能の低下に該当するサインをよく注意してみましょう」

3.専門医や専門機関と相談し、その人に合った介護食や正しい調理方法の知識を身につける

「年齢や健康状態、生活習慣によって、その人に合った介護食は異なります。UDFの基準など分かりやすい基準を参考にしながら、専門医や専門機関と相談してください。また、調理方法によっては“おかゆ”でも誤嚥のリスクが高まる場合があります。一見水分が多く、とろみもあって飲み込みやすそうに見えても、さらさらした重湯とお米の2層に別れ、誤嚥を招くことがあります。正しい調理方法や市販品の選び方を知ることで、それらのリスクを下げることができます」

4.市販品や外部サービスを活用し、支援者・要支援者も、介護者・要介護者も無理をしないよう工夫する

「食事は生きているうちは毎日続くものです。家族が食べる普段の食事と、介護食を分けて作ることは単純に2倍以上の労力がかかります。さらに介護食はその人の状態によっては様々な工夫をしなければならず、一定以上の調理スキルも求められます。手作りのあたたかい食事はおいしいものですが、手作りにこだわりすぎると介助者が疲弊してしまうこともあります。市販品や外部のサービスなどを上手に利用して、支援者・要支援者も、介護者も要介護者も無理なく楽しい食事ができることが理想的です」

介護食は確かに進化を遂げている。一見、おいしそう、食べやすそうに見えても、それを実際に利用する人はどう感じるのかということも重要となるようだ。特に調理の手間軽減や見た目や食感については、今後の介護食開発の重要な視点となりそうだ。

出典:日本介護食品協議会
ユニバーサルデザインフード生産統計
「ユニバーサルデザインフード区分登録数推移」
山形大学「ひととひと 3Dプリンタで介護食革命、「食べる」を楽しく、介護を楽に。」
アペックス「とろみ自動調理機」

取材・文/石原亜香利


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