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事業立ち上げのプロが指南!誰も考えなかったビジネスモデルを生み出すデザインシンキングと想像力の鍛え方

2022.06.03

[連載/利他ビジネスの深層]

他者への貢献を体験価値として提供しながら、寄付や環境配慮とは異なる新しいビジネス「利他ビジネス」。ここまでは、グリーンワット、ナッジ、戻り苗、マイルズの4事例を紹介してきた。

では、私たちが彼らのようなユニークで巧妙なビジネスモデルを生み出すには、どうすればよいのか? グロービス経営大学院で教鞭をとる長尾景紀氏が、デザインシンキングをベースに、ビジネスモデルの構築法を語ってくれた。

デザインシンキングで「正しい問題」を発見する

長尾 景紀

早稲田大学大学院商学研究科修了。修士(経営管理) MBA in Technology Management(MOT)。大手広告会社にて、流通・食品業界のマーケティングを経験後、新規事業のビジネスモデル構築を行う。その後、研究開発型ベンチャーに参画(COO)し、食品保存技術の研究開発、特許戦略、チャネル構築、資本政策、など企業経営に携わる。同時にグループ企業において飲食店、ワインスクールの経営も行う。その後はグロービスに参画し、企業の人材育成支援、大学院の教材開発、講師の育成に従事し、経営大学院においては、経営戦略・マーケティング・デザインシンキング・ベンチャー戦略領域の講座を担当。

現在は、株式会社Naked Bulbの代表取締役として、新規事業・スタートアップのコンサルティング、エンジェル投資家としてスタートアップのインキュベーション事業を展開する。

長尾 2010年代にブームとなったデザインシンキングは、現在ではビジネススクールの科目として成立するほどに定着しています。私自身、学生に教えるだけでなく、現場で新規事業の立ち上げをサポートする際に、デザインシンキングを活用しています。

それ以前にもロジカルシンキング、クリティカルシンキングといった思考法はありました。しかし変化のスピードが高く、不確実性が高まる時代に、それだけでは問題解決できなくなりました。

--デザインシンキングはデザイナーが業務で使う思考プロセスを、ビジネス一般に置き換えたものですね。利他ビジネスは斬新でよくできたビジネスモデルばかりですから、おそらく従来通りの思考ではうまれなかったでしょう。その点、デザインシンキング的な発想が、使われているのかもしれません。

長尾 私は新しいビジネスモデルをうみだすための基本ソフト「OS」だと考えています。デザインシンキングをうまく回すために、SWOTや3Cなどアプリケーションとしてのフレームワークがあり、外部環境や他社事例といったデータがあります。

デザインシンキングは、「共感」「問題定義」「発想」「試作」「検証」といったシンプルなプロセスで表現されます。ただ、この通りのプロセスをなぞればよいわけではなく、状況に応じて順番を変えたり、何度も循環させることが必要だと、私は考えています。

もっとも重要なのが「問題定義」です。認知科学者のドナルド・A・ノーマンは、世界中で大ベストセラーとなった「誰のためのデザイン?」で、次のように述べています。

“技術者とビジネスの人々は問題を解決するように訓練を受けている。デザイナーは本当の問題を発見するように訓練を受けている。”

特に日本のビジネスパーソンは、問題解決ばかり学んだ人が多いと感じています。問題を間違えると、その後の作業をすべて間違えることになります。優秀な人材が、間違った問題を解決していたのでは、優れたビジネスモデルはうまれないでしょう。

--よくできたビジネスモデルは、何を解決するか、という問題の設定が巧みなのですね。ただ、視点がユニークでも、顧客ニーズや時代に合っていなければ、ただの「おもしろいアイデア」で終わってしまいます。本当に正しい問題を導くには、どうすればよいのでしょうか。

長尾 まずは、共感のステップで顧客の潜在的なニーズを理解することが大切。そのためには、自ら行動観察やヒアリングといった一次情報を取得します。

私がコンサルティングに入るときは、よくクライアントと一緒に行動観察にでかけます。

例えば、駅で行動観察していると、ひとりでスマホを見ている人が多いことに気づきます。そこで、想像力を働かせて、生活者のインサイトを探ります。ひとりで電車やバスを待っている人は、人や情報とつながりたいという衝動があり、そのためにスマホをいじっているのではないか、という仮説が成り立ちます。

すると、待ち時間の孤独を和らげたり、感じさせないサービスが役に立つのではないか、という問題定義ができるのです。

アンケートや他社のリサーチなどの二次情報は、比較的簡単に大量のデータを集められます。仮説の裏付けに役立ちますが、深い潜在意識を探ったり、発見されていない問題を導くには一次情報をとらなければなりません。一次/二次情報を行き来することで、インサイトを絞り込み、解決するべき問題を明確にしていきます。

このとき、問題定義のアイデアは、できるだけ多く出すことを勧めています。たくさんの仮説の中から、本当に正しいと考えられるインサイトをつかんでいきましょう。

--例えば、ナッジの沖田社長はサービス設計の段階で、「20〜30代の若者とひとくくりにしていたが、本当はもっと多様なはず」と考え直したと言っています。「推し」の文化に注目して「応援できるクレジットカード」というコンセプトをうみだしました。ユーザーをよく見たうえで問題定義したからこそ、ユニークなモデルができたのだと思います。(参考:消費するだけで推しを応援できるクレカ「ナッジ」

試作のステップもデザインシンキングの特徴ですね。いわゆる、商品やサービスのプロトタイプをつくって、具体的に考えると。

長尾 はい。プロトタイプはアイデアを形にして、議論するために製作するものです。最初の完成度は5〜10%で十分。私が最初に新規事業に取り組んだ際には、会社のデスクの中にあるもので最低限のプロトタイプをつくったくらいです。そのかわり、何度も改善を繰り返して、周囲のフィードバックを得ながらイメージを固めていきます。

一般的に日本の製造業は、「プロトタイプで良いので」と伝えても、完成度80%以上を目指してしまう傾向があります。結果としてスピードも落ちてしまうので注意が必要ですね。

形のないサービスや仕組みのプロトタイプなら、新規事業のプレスリリースを書くのが有効です。Amazonの企画書はプレスリリース形式でつくる、という話を聞いたことがないでしょうか? これもプロトタイプの考え方だと思います。

--企画書でロジカルに説明されるのもよいですが、プレスリリースならサービスが世にでたときどんなふうに見られるか、直感で理解できますね。

ニュースや事例を知り自分のビジネスに応用する

--ユニークなビジネスモデルを創造するうえで、デザインシンキングが実践的な手法であることはわかりました。しかし、良い仕組みができても、それだけで実際のビジネスは回らないような…。

長尾 おっしゃるとおり。現実のビジネスでは、定石どおりに行くことのほうが少ないものです。そこで、役に立つのが「かけ算」の考え方です。

うまくいかないときは、他者の事例や他業界で使われているテクノロジーを、自社のビジネスに利用できないか、考えてみてください。意外なところに自社の優位性を見出したり、有効な打ち手を生み出すことができます。

今回、利他ビジネスとして紹介された中にも、ヒントがたくさんあります。

マイルズはユーザーに課金せず、企業に送客することで収益を得ています。マネタイズのポイントを上手につくった好例でしょう(参考:貯金感覚で太陽光発電投資ができる利他ビジネス「グリーンワット」前編 )。

グリーンワットは、ESG経営や排出権取引の文脈で、企業から注目される環境価値を、個人への提供に置き換えた巧みなモデルです。戻り苗は反対に、ユーザーが育てた苗木を山に戻すという個人向けのサービスを、企業向けに展開してビジネスチャンスを見出しています。

--幅広い情報にアンテナを立てて、データを持ったうえでデザインシンキングというOSを回すことが大切なのですね。ニュースやビジネスの事例をただ知っているだけでは不十分で、エッセンスを理解しなければ、自分のビジネスには応用できません。

長尾 大切なのは想像力を広げることです。私はニュースやビジネス書を読むだけでなく、映画を観ることをおすすめしています。

例えば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は1985年から30年後、2015年にタイムスリップする物語です。タイムマシンはさすがに無理ですが、大画面テレビやホログラムなど一部実現しているものもあります。

1985年に映画を観て未来を想像していた人は、一歩先を読んでビジネスを考えることができたかもしれません。しかし、想像すらしていないと、変化に対応することもできないのです。

最近では2018年の「レディ・プレイヤー1」が、メタが目指すような仮想世界を描いています。ビジネスの示唆に富んだおすすめの作品です。

利他ビジネスを持続させるために

--今後、環境や社会、人権などへの意識が高まるのは間違いないでしょう。利他ビジネスが成功し、社会へ広げていくには、どんなことが必要でしょうか?

長尾 意識が高い生活者は、利他の精神だけで付いてきてくれるでしょう。ただし、利他に偏りすぎると、ビジネスはスケールしません。サービスを利用することで自分のメリットにもなる「利己」の価値と、バランスをとることが重要です。

また、マネタイズの設計はポイントになります。現在、BtoCで課金しているならBtoBも、あるいはその反対など、あらゆる収益モデルを探るべきですし、実際に各社工夫している点でしょう。

利他ビジネスを持続させるカギは、その裏側で経済的価値を担保するビジネスモデルを描くことです。社会的価値と経済的価値の両輪を回しながら、結果として社会を良くするムーブメントが広がることを願っています。

取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小に関わらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。 
https://solver-story.com/


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