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人材価値を最大化する「戦略人事」を実現している企業の割合は?

2022.06.03

パーソル総合研究所はこのほど、企業における戦略人事に関する調査結果を発表した。

本調査は、必要性が高まっている「戦略人事」(※1)に関して実態を定量的なデータで把握し、経営・人事に資する提言を行うことを目的に実施したものだ。

※1 戦略人事(戦略的人的資源管理):本調査では、「経営資源の一つである『ヒト』の価値を最大化するために、経営戦略と連動した人事戦略を策定・実行すること」を指す。

1. 戦略人事の実現度

日系企業の経営層・人事部管理職947人に、自社において「戦略人事」が実現できているかをたずねたところ、29.7%の人が「肯定」的な回答、41.6%の人は「否定」的な回答という結果となった(図表1)。また、企業規模が大きいほど、「肯定」的な回答の割合は多い傾向にある(図表2)。

図表1.戦略人事の実現度(全体)
Q. あなたの会社では「戦略人事」を実現することができていると思いますか?

図表2.戦略人事の実現度(企業規模・業種別)
Q. あなたの会社では「戦略人事」を実現することができていると思いますか?

2.戦略人事の主要要素の実現状況

経営層・人事部管理職の回答から、「戦略人事の主要な要素」として上位に挙がった要素のうち、実現度の高いものは「経営戦略に紐づいた人事」(「人事部員が事業戦略を理解」「人事部のトップが経営会議に常時参加」など)や、経営層/事業部との「社内連携」であった。

一方、実現度が低いものは「次世代人材の発掘/育成」や「事業部の人的資源の調整/配分」への深い関与、「人事ポリシーの明確な打ち出し」「従業員の前向きなキャリア形成のための施策実行」であった。また、「データドリブン人事」は、重要度・実現度ともに低くなっている。

図表3.戦略人事の実現状況

3.戦略人事の実現度と人事部員の不足状況

戦略人事が実現できている企業の人事部では、「人事戦略・企画担当」や「人材開発・育成担当」、「組織開発担当」といった人材の不足感が弱く、人材を確保できている傾向にある。

一方で、戦略人事が実現できていない企業における「人事戦略・企画」や「人材開発・育成」担当者の不足感は強く、戦略人事実現の障壁になっていると考えられる。

図表4.戦略人事実現度と人員不足状況

4.HRBP/事業部人事の設置率

戦略人事の実現・推進に向けてその役割が注目されている「HRBP(HRビジネスパートナー)」と「事業部人事」の設置率を見たところ、HRBPの設置率は11.3%であり、事業部人事の設置率は27.5%であった(※2)(図表5)。企業規模が大きいほど、ともに設置率が高い。業種別にみると、「製造業、インフラ業」「情報通信業」においてHRBPの設置率が高い(図表6)。

※2 HRBP:戦略人事実現のため、事業部の経営目標を人事観点から支援する役割・組織。
事業部人事:各事業部の人事業務を担う組織を指すが、本調査ではHRBPを含まない定義としている。

図表5.HRBP/事業部人事の設置率(全体)

図表6.HRBP/事業部人事の設置率(企業規模・業種別)

5.HRBPの認知度

人事部管理職に対し、「HRBPについてどの程度知っているか」をたずねると、HRBPを「他者に説明できる」「知っている」と回答した割合は38.3%であった。

図表7.HRBPの認知度

6.HRBP/事業部人事が担っている役割

自社におけるHRBPや事業部人事の役割を聞いたところ、「HRBP」を設置している企業であっても、20.0%の企業ではHRBPが管理的な業務のみを担っていた。一方で、組織名称が「事業部人事」であっても、65.1%の企業では事業部人事が組織・人事構想を担っており、組織名称と実態に乖離が見られた。

図表8.HRBP/事業部人事の役割

7.HRBP/事業部人事と戦略人事の実現度

戦略人事の実現度を低・中・高の3群に分け、それぞれHRBP/事業部人事の設置率や機能を見たところ、戦略人事実現度が高い企業ほど、HRBPの設置率が高く、またHRBP/事業部人事が組織・人事構想を担っている傾向が強かった。

図表9.HRBP/事業部人事と戦略人事実現度の関係

8.人事データ活用状況と戦略人事の実現度

人事データの一元管理の実施度を低・中・高の3群に分け、それぞれ戦略人事の主要な要素の実現度を見たところ、人事データを一元管理できている企業ほど、戦略人事が実現できている傾向が見られた。

その傾向は、特に「次世代人材の発掘・育成」「事業部の人的資源の調整・配分」「従業員への支援」「人事ポリシーの明確化」といった戦略人事の要素実現において顕著に見られる。

図表10.人事データの活用状況と戦略人事実現度との関係

9.人事データ活用の実態

しかし、人事データ活用の実態を見ると、戦略人事の実現に必要な「従業員のキャリア志向」や「スキル・強み」といった人事データが一元管理され、活用されている企業は全体の4割に満たない。

図表11.人事データ活用の実態

分析コメント ~戦略人事の実現には、人事の「選択と集中」が不可欠~(パーソル総合研究所 上席主任研究員 佐々木 聡氏)

1990年代にその概念が登場した「戦略人事」。近年になって、グローバル化の加速、コロナ禍による働き方の変化、SDGsによる企業の健全なる持続性、多様性が問われる過程で日本型雇用の限界が露呈し、ジョブ型雇用転換への波が押し寄せてきたことで、再び注目が集まっている。

しかし、今回の調査結果から、「戦略人事」の実現はまだ道半ばである実態が見えた。また、戦略人事を推し進める上で着目すべき点としては、次の3点が挙げられる。

【1】本社人事による「選択と集中」

重要であると認識されながらも、その実行が伴っていない人事施策が散見された。人員や時間といったリソースに限りがあるなかで戦略人事を推し進めていくためには、重要施策の選択と、それを担う部署(本社人事またはHRBP/事業部人事)への責任と権限の集中が決め手となる。

【2】戦略人事に欠かせないHRBP/事業部人事の再定義からはじめる

戦略人事の実現に向けて、HRBPや事業部人事といった部門人事の存在が、本社人事と同様に不可欠であることが調査から明らかになった。一方で、HRBPの存在・役割についての人事部管理職の認知・理解度は高いとはいえない結果であった。戦略人事をさらに推し進めていくには、改めて部門人事(HRBP/事業部人事)と本社人事の位置づけ、役割・機能を再定義し、経営と事業に資する人事としての責任と権限を明確にすることが必要だろう。

【3】戦略人事のインフラとして人事データの活用を進める

調査結果では、人事情報の一元管理ができている企業ほど、戦略人事が実現できている傾向が見られた。《経験・勘・記憶》のOld3Kによる「なんとなく人事」から、《客観・傾向・記録》といったNew3Kによって「より確かな人事」へと変貌していくことが戦略人事実現への確実な道である。多様な雇用形態、働き方の変化による人事業務の複雑性に対処していくためにも、人事データやタレントマネジメントシステムは、アジリティとサステナビリティ強化に必要不可欠なインフラになり得るだろう。

<調査概要>

出典元:株式会社パーソル総合研究所

構成/こじへい


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