コロナ禍により、リモートワークが普及し、働き方や雇用のあり方も変化しているなか、労働力不足は企業の規模にかかわらず叫ばれ続けている。今後、労働人口が減少し、ますます課題が深刻化することを見据え、副業やフリーランスの人材を活用できないかと考え、「パーソルキャリア」が新たなサービスをスタートすると発表した。それが、「ハイプロ(HiPro)」だ。働く人々のスキルを解放し、社会や企業への柔軟で多様な人材活用を推進する新サービスだ。
コンセプトは「スキルを解放し、社会を多様にする」
副業・フリーランス マッチングプラットフォームサービス「ハイプロダイレクト」
転職サービス「doda」などを手掛けるパーソルキャリアが、働き方が大きく変化するなか、複雑なビジネス課題を解決するためには、企業と従業員の雇用契約だけでは対応しきれないという状況に着目。新たな人材活用(タレントシェアリング)を当たり前にするために誕生したのが「ハイプロ」だ。
ハイプロは、『スキルを解放し、社会を多用にする』をブランドパーパスに掲げ、企業は課題解決に必要な人材と出会うことができ、個人は自分のスキルにあったプロジェクトを探すことができるというプラットフォーム。
ハイプロの「Hi」には、「Hi=あいさつ」と、「Hire=雇う」の意味を込め、堅苦しくなく、Hiと気軽に声をかけ合えるような親しみやすさも表現したという。今後、プロフェッショナル人材の総合活用支援ブランドとして、企業の課題解決の支援を多角的に行うため、ハイプロのブランド下で、さまざまなサービスを展開していく予定だ。
第一弾として、副業・フリーランス マッチングプラットフォームサービス「ハイプロダイレクト(HiPro Direct)」の企業先行エントリー・個人会員登録が2022年5月25日からスタートした。
副業・フリーランスに着目した理由
在宅や副業など働き方が急激に変化していることに着目。
第一弾は、副業・フリーランス人材のマッチングプラットフォーム「ハイプロダイレクト」だ。
これは、転職サイト「doda」における検索ワードランキングで、“在宅勤務”の検索順位は2019年1月度は36位だったのに対し、2022年4月度は1位に。さらに、“副業”については、2019年1月度は100位圏外であったのに対し、2022年4月度は20位にランクインしている。在宅で、副業も視野に入れている人が急激に増加していることがわかる。
「フリーランスで働く人は増加傾向で、企業は人材不足になっています。外部人材を活用できているのは、約1割程度です」と、パーソルキャリア株式会社代表取締役社長の瀬野尾裕さん。副業・フリーランス活用が当たり前になる社会を目指している。
マッチングプラットフォーム「ハイプロダイレクト」とは
個人の働き方の価値観も多様化し、フリーランスの増加のほか、現在、副業を行っていない正社員の副業意向のアンケートをパーソル総合研究所が行ったところ、約4割に副業意向があることがわかった。
では、なぜ企業側が活用しているのは1割程度なのだろうか。タレントシェアリング事業部兼ハイプロ事業責任者の鏑木陽二朗さんが説明してくれた。
「そもそも人材活用の選択肢としてフリーランスがありません。また、活用したことがないためリスクへの不安もあります。また、メンバーシップ型(中途採用)しかなく、具体的なやり方がわからないという企業が一定数あります。これらを支援するプラットフォームです」
課題に対しての人材のマッチングは、パーソルキャリアが持つ100万件以上のデータを活用することで、スピーディに行えるそうだ。
職種ではなく、600種類以上のジョブに細分化することで質の高いマッチングを目指す。
マッチングにとって一番大切なのは、双方が「こんなはずじゃなかった」と思わないこと。そこで、ハイプロダイレクトでは、職種ではなく、業務を600種類以上の「ジョブ」に細分化している。
例えば、「新規事業開発/事業企画」のなかでも、「ビジネスモデル策定」「ユーザー/顧客調査」「プロジェクト進捗管理」といったように37のジョブに細分化されている。
これにより、企業は、プロ人材に頼みたい業務を実態に沿った形で募集でき、質の高いマッチングを実現することができる。登録した個人会員も、自分のスキルを活かせるオファーがくるため、お互いスムーズに話が進みそうだ。
企業からのオファー、個人のスキル登録もシンプル
簡単ステップでエントリーできる。
企業が人材を探す場合、わずか4ステップでOKだ。
- 依頼形式を選択(短期 or長期)
- 独自のジョブコードから依頼したい業務を選択
- 自動でビジュアル化された案件が生成される
- 案件に紐づく最適なプロが一覧で表示される
表示された人材と、直接契約を結ぶことになる。今まで不安だったポイントがクリアになることで、活用したいと考える企業が増えることが期待される。
また、企業からのオファーが多いとなれば、フリーランスやこれから副業を考えている人の登録も増えることが期待される。個人会員登録もシンプルだ。
1 スポットコンサル or プロジェクト(必要期間)を選択
2 プロフィールとスキルを登録
3 企業とのマッチング
スキルの登録はレベルを選択するため明確。
稼働の条件など詳細を記入する。
フォーマット通りに進めていくとプロフィールができ上がる。
登録情報に企業からオファーが届くとチャットベースでやり取りをする。また、企業の案件が一覧化されているため自分自身からの応募も可能だ。
マッチングが成立すると、面談やメッセージのやり取りを行い、契約条件などを調整することになる。ここで気になるのが、プロフィールとスキルの登録だ。未経験や得意など、レベルを選ぶ形で進められる。
「情報の入力負荷を極限まで下げる体験UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)を追求しています。さらに、すべての情報を入力すると、これまでのキャリアが時系列でわかる仕様で開発しているので、単に情報を入力して終わりではなく、プロフィールにキャリアがたまっていくような仕様を目指しています。」(鏑木さん)
プロフィールにキャリアがたまっていく設計もだが、自分のスキルや強みを明確にプロフィールに簡単登録できるのは、かなり便利だと感じる。というのも、得意というのは、個人の感覚で差がありそうだが、ハイプロダイレクトでは、ジョブコードという法人/個人の共通尺度が導入されているからだ。
マッチングしたあと、「実際に聞いていた業務と違う」「自身のスキル活かせない」といったミスマッチの最小化を目指しているという。
まずは企業に対して発信を
(右)パーソルキャリア株式会社代表取締役社長 瀬野尾裕さん(左)パーソルキャリア株式会社執行役員 タレントシェアリング事業部 兼 「HiPro」事業責任者 鏑木陽二朗さん。
個人のスキルを登録して、企業からオファーがくるというシステムは、他社でも行われているが、ハイプロの強みは、職種ではなく、ジョブコードで業務が細分化され、オファーが出せるシステムにある。
「まだまだ副業NGの会社も多いので、個人より社会、企業に対して発信していきたいです」(鏑木さん)
となると、どれくらいのスピード感なのかも気になるところ。
「3年で2万社を目標にします。まだ、言ってなかったですけど」と、瀬野尾社長。その数字は本当に事前に聞いていなかったのだと一目でわかる鏑木さんの表情ではあったが、スピード感をもって進め、転職サービス「doda」に続く第2の柱へと成長させることを目標にしている。
自分自身、もっとチャレンジしたいけれど一歩が踏み出せなかったという人には、仕事との出会いのチャンスが広がることになる。スキルを解放するとは、ひとつの会社でひとりのスキルを占有するのではなく、シームレスにスキルを活用し、社会全体が進化していくための新たな働き方かもしれない。
ハイプロ(HiPro)
https://hipro-job.jp/
取材・文/林ゆり