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SDGs達成の一助となるか?大量廃棄の現実に立ち向かうサステイナブルなオフィス家具の開発

2022.05.25

各所でサスティナブルな製品がぞくぞくと増えているが、それはオフィス家具にも言えることだ。SDGs(持続可能な開発目標)を見据えて活動する会社にとって、オフィスづくりもSDGsを意識したいものだ。そんな持続可能なオフィスづくりにも役立つ、サスティナブルなオフィス家具のトピックスを紹介する。

オカムラが米国のオフィス家具環境認証を取得

オフィス家具メーカーの株式会社オカムラは、製品の第三者認証の取得を積極的に行う中、2022年4月には22製品について、環境認証の一つである「LEVEL認証」を取得した。これは国内オフィス家具メーカーで初めての取得だという。

LEVEL認証とは「家具に関する BIFMA のサスティナビリティ認証プログラム」のことで、米国オフィス家具業界団体BIFMAが提供している、家具のサスティナビリティ基準「ANSI/BIFMA e3」により、製品と生産者を評価するグローバルな環境認証だという。具体的には製品、製造施設、企業の環境負荷・健康ウェルネス・社会的影響を評価する多面的な認証となる。

認証を受けた22製品にはどのような製品があるのか。代表する製品を3つ、同社のワークプレイス製品部の吉田健介氏にピックアップしてもらった。

1.Contessa Seconda(コンテッサ セコンダ)

「オカムラのタスクシーティングのフラッグシップモデルです。人間工学に基づいた座り心地と優れた調節機能による高い機能性、海外デザイナーとの協業による高いデザイン性が評価され、メッセージアプリ企業や製薬会社など世界中で多くの企業に採用いただいております。またオフィスだけでなく、作家さんのように長時間座って仕事をされる方にも多く愛用いただいており、最近では有名なYouTuberの方にもご利用いただいております」

2.Sylphy(シルフィー)

「背のカーブを変えられる、新感覚のタスクシーティングです。従来の調節機能に加えて座る人の体格や好みに合わせて背もたれのカーブを2段階で調節できる『バックカーブアジャスト機構』を有するベストセラーモデルです。多くの日系企業に加えてグローバルなSNS企業など国内外で多く採用いただいております」

3.CYNARA(シナーラ)

「究極の軽さと考え抜かれたシンプルなデザインのタスクシーティングです。コンパクトな機構と薄いデザインにより、圧倒的な軽さを誇ります。軽量化によって製品の材料調達から輸送、生産などライフサイクルに関わるCO2排出量を当社従来品と比較して約35%削減した環境配慮製品です。ECサイト企業など多くの企業に採用いただいております」

また、どの製品もコロナ禍による在宅勤務需要の増加に伴って、家庭でも多く利用されているという。

●サスティナブルなオフィス家具の工夫

サスティナブルな製品づくりのアプローチにはさまざまな方法があるが、特に特徴的なサスティナブルな工夫が施された家具にはどのようなものがあるのだろうか。

「オカムラは『サーキュラーエコノミー』の考えに基づき、製品を売って終わりではなく、使用後の廃棄やリサイクルといったライフサイクルすべてにおいて地球環境への配慮を進めています。

例えば、デザインテーブル『nel(ネル)』は使用後のリサイクルしやすさを考慮し、すべての部材をスチールのみの単一素材で構成しています。単一素材で構成しているため分別が不要でリサイクルが容易です。最小限の材料で構成された薄い天板と脚はシンプルで様々なインテリアになじむデザインです」

「nel」

●サスティナブルなオフィス家具がもたらす会社へのメリット

こうしたサスティナブルなオフィス家具は、導入する会社にどのようなメリットをもたらすだろうか。吉田氏は次のように述べる。

「SDGs達成に向け、オフィスは持続可能で、環境やウェルネスにも配慮した空間であることが重要となります。LEVEL認証製品は、製品、製造施設・企業のすべてが環境負荷・健康ウェルネス・社会的影響の認証要件を満たすことを証明しているため、お客様は持続可能で責任ある生産を行っている製品を安心して選定することができ、お客様の環境・ウェルネスに配慮した空間作りをサポートします。

またオフィスの環境配慮やウェルネス度合いを測る指標としてLEED認証(※1)やWELL認証(※2)といったオフィス認証がありますが、認証製品はこれらオフィス認証の取得にも貢献が可能です」

※1 空間のデザイン・構築・運用に「人間の健康」という視点を加え、より良い住環境の創造をめざしたオフィス空間等の評価システム
※2 最高クラスのビルト・エンバイロメント(建築や都市の環境)を作るための戦略やそれらをどう実現させるかを評価するグリーンビルディングの認証プログラム

SDGs達成を志す企業にとって、サスティナブルなオフィス環境づくりは重要な取り組みとなる。そうした中、サスティナブルな認証を受けたオフィス家具は、手軽にサスティナブルなオフィスづくりが実施できそうだ。

オフィス家具のサスティナブルプロジェクト「OCEAN」

オフィス家具にまつわるサスティナブルプロジェクトが存在する。その名も「OCEAN(オーシャン)」だ。オフィス家具の現状である「大量生産、大量消費、壊れたら捨てる」という文化を変えるべく、賛同する企業と一緒に社会全体を変えていくことを目的としている。

●オフィス家具をとりまく課題

本プロジェクトを立ち上げた家具製造・販売等を行う株式会社秀光の代表取締役社長 佐久間悠太氏は、次のように現状課題を述べる。

「豊かな生活を求めるようになった現代。人々の働くことへの意識も変わり始め、改めてオフィス環境について考える人は多くなったように感じますが、家具にフォーカスするとまだまだ、安価なものをカタログから選び、数年で大量の廃棄物と化しているのが現状です。オフィスの家具も永く使えるものを真剣に選ぶことで、どれだけのゴミが減らせるか、もっと働く人一人一人が真剣に考える必要があると思っています。

オフィスが入れ替わるたびに捨てられるタイルカーペットを掃除も簡単にでき、環境に優しい素材でできているセラミックタイルにしたり、2~3年で故障し捨てられるオフィスチェアを、パーツやカバーを交換しながらずっと使い続けられるものに変更するだけで、どれほどのゴミが減るか。流行りのデザインは廃盤になり、継続的にパーツ提供されないことが多く、廃棄物になってしまいます。目先の値段だけでなく、何十年も先の未来のためにオフィス家具を選ぶことの大切さを、これからも当社のお客様には伝え続ける努力が必要だと、日々感じています」

●プロジェクト立ち上げの想い

そして佐久間氏は、OCEANを立ち上げた背景について次のように述べる。

「当社は、『地球環境に配慮した空間・製品づくり』を企業理念の一つとして企業活動を行っています。永く使うために自社工場で精度が高く壊れない、経年変化が起こりにくい、高品質な製品づくりをしています。将来の使い方に合わせ、同じ製品の追加や組み替えも容易で、万が一不具合が生じてもひとつのパーツを交換することで、永く使い続けることができます。また、不要になった場合でも、すべてパーツ化されているので、分別・リサイクルが可能です。創業当時から大切にしてきたこの精神を改めて『OCEAN』と名付け、プロジェクトを立ち上げました。今後も賛同企業を拡大し、取扱い商品を順次増やしていく予定です」

●サスティナブルなオフィス家具・取り組み例

同社が手がけるサスティナブルなオフィス家具の一例として、こんなオフィスチェアがある。

「SPIN」

「SPINは、パーツを交換すれば、ずっと愛着を持って使い続けられるオフィスチェアです。最もサスティナブルなのは、リサイクルやリユースではなく、捨てないでずっと使い続けられることです。そのためにはパーツを交換し、メンテナンスをしながら使い続けられる仕組みが大切だと考えています。

SPINは販売開始から28年たちますが、廃盤にすることなく生産し続けています。パーツ交換を容易にし、張地が汚れたら自分で取り換えられる手軽さと、豊富なカラーバリエーションで愛着をもって使い続けてもらえるよう改良しました」

また、特徴的な取り組み例として、「ごみゼロ」を実現したイベントの展示ブースの制作例もあるという。

「2021年にOCEANとして初めて出展したイベント『エコプロ2021』では、ごみをまったく出さないブースを実現しています。普段は保管のためや、荷物運搬用に使用している木箱のフタやパレットを使用して制作しました。思考を変えて、見え方を工夫するだけで、新しい使い方が見つかります。床に使用した大理石の板材は、13年もの間、様々な展示会のブースを支えています。

環境をテーマにしたイベントでしたが、閉幕後、周りのブースでは、大量のゴミがあふれている現状を見て悲しくなりました。OCEANをもっともっと世の中に広めていかないといけない、と強く感じました」

「エコプロ2021」展示ブース

「エコプロ2021」展示ブース

●サスティナブルなオフィス家具がもたらす会社へのメリット

佐久間氏は、サスティナブルなオフィス家具は導入する会社にどのようなメリットをもたらすと考えているのだろうか。

「サスティナブルなオフィス家具を使うことは、企業価値を高め、企業イメージの向上を図ることができるだけでなく、実際に自分たちがそれを使うことで、エンゲージメントを高めることになります。

OCEANは未来のためにつくる、家具業界を変える文化を作っていくプロジェクトであり、その文化が多くの企業へ浸透していくことで未来の環境改善につながっていくはずです」

オフィス家具のサスティナブル性を考えたときには、大量廃棄の現実を見逃すことはできない。それがこのOCEANというプロジェクトの存在が教えてくれている。サスティナブルなオフィスづくりを考えたときに、ただ新しい家具を入れるだけでなく、これまでのオフィス家具への扱いを見直すことも必要なのかもしれない。

【参考】
オカムラ「オカムラの22製品が環境認証「LEVEL認証」を国内オフィス家具メーカーで初めて取得」
「OCEAN」

取材・文/石原亜香利

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