Webマーケティング教育が必修化される日はくる?
2022年4月1日、ちょっとセンセーショナルな記事がPR TIMESに公開されました。
「2023年4月1日、小学校でWebマーケティング教育が必修化」
そんなタイトルからはじまるプレスリリースには、新型コロナウィルスの感染拡大による需要の増加に伴い、これからの時代に必要なスキルとしてWebマーケティングを必須科目にするといった内容が書いてあります。
Webコンテンツ制作者の端くれとして、これは見逃せないニュース…!
ということで、今回はWebマーケティングの概要や現在の市場動向、将来性についてご紹介します。
※注「小学校でWebマーケティング教育が必修化」する予定はまだない
【引用】Webマーケティングスクール「デジプロ」を運営する株式会社Hagakure(本社所在地:東京都渋谷区、代表取締役:奥 雄太)が日本政府と交渉を重ねた結果、2023年4月1日から小学校でWebマーケティング教育が必修化されることになりました。
該当の記事を読み進めていくと「このプレスリリースはApril Dreamに賛同したものです」といった注釈が。はて、「April Dream」とは…?
「April Dream」 夢を発信して一歩踏み出す人・企業・団体を讃え、4月1日(エイプリルフール)を利用して叶えたい夢を語れる場を提供するPR TIMES主催のプロジェクト。 |
つまりこの記事は、エイプリルフールにちなんだ企画の一環。「今はまだ “ウソ” になるようなことでも、公開することで一歩踏み出していつか “本当” にしよう」といった素敵な意図でリリースされたものだったんですね!
とはいえ、2020年度にはプログラミング教育が必修化された例もあるので、「Webマーケティングも有り得る」と思ってしまった人は少なからずいるのではないでしょうか。
しかし現段階では小学校でWebマーケティング教育が必修化する予定はまだないということなのであしからず。
Webマーケティングの概要と目的
Webマーケティング教育が必修化になる予定は未定ですが、ここ5~10年ほどでWebマーケティングの需要が拡大していることは事実です。
そもそもWebマーケティングとは、もともとはWebサイト周りに関連したマーケティング活動のみを指す言葉でした。
【Webマーケティングの概要】
Webサイトを中心に展開するマーケティング活動のこと。主な仕事内容は
- 集客(インターネット広告などを活用してWebサイトへユーザーを誘導する)
- 分析(アナリティクスなどを活用してユーザー心理を分析する)
- 改善(分析に基づいたSEO施策やUX改善を行いCVアップに繋げる)
など。
しかし近頃は領域が広がり、デジタルマーケティングとほぼ同義の意味で使われることも多くなっています。
【デジタルマーケティングの概要】
あらゆるデジタルテクノロジーを活用し、多様な顧客接点をミックスしたマーケティング活動のこと。Webマーケティングに加え、SNSアカウント・SNS広告の運用、AI・IoT・MAの活用、アプリの活用、メールマーケティング、など仕事内容は広範囲に渡る。
また、Webマーケティングやデジタルマーケティングの目的は商品(サービス)を購入してもらうことだけではありません。問い合わせ数の増加や企業の認知拡大、ブランディング、メッセージの配信など、既存客・見込み客との関係づくりやブランドイメージの確立にも効果を発揮します。
Webマーケティングの需要と市場規模
ここ数年のコロナ禍では特に、外出しなくとも非対面でやりとりできるインターネットサービス全体の需要が増加しました。
サービス内容もより多様化し、エンタメやショッピング以外にも、レジャーやビジネス、学習、芸術、投資、申請など、あらゆる日常的なアクションがインターネット上で完結できるようになっています。
それに伴ったインターネット広告の需要も見逃せません。電通が公開している「2021年 日本の広告費」(※1)によると、2020年に一時縮小したものの、好調を続けているインターネット広告費(2兆7,052億円/前年比121.4%)がマスコミ四媒体広告費(2兆4,538億円/前年比108.9%)を初めて上回り、広告市場全体では回復傾向です。
内訳をみると、テレビメディア関連動画広告(249億円/前年比146.5%)や物販系ECプラットフォーム広告費(1,631億円/前年比123.5%)などの伸長が目立ち、コロナ禍の巣ごもり需要の影響が大きく感じられます。
また、サイバー・バズの市場動向調査(※2)によると、国内のソーシャルメディアマーケティング市場も年々拡大しており、2020年は5,519億円(前年比107%)の見通し。さらに2025年には1兆円超えの規模まで成長する予測です。
経済産業省が発表している電子商取引に関する市場調査(※3)では、BtoC-EC市場は2013年~2019年まで全体で右肩上がりを続けています。2020年はコロナ禍の影響でサービス系分野が大幅に縮小し、全体で830億円減少しましたが、物販系分野だけで見ると12兆2,333億円(前年比121%)へ拡大しています。
※1 出典:2021年 日本の広告費 – News(ニュース) – 電通ウェブサイト
※3 出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)
Webマーケティングの将来性
国内のWebマーケティング・デジタルマーケティング市場はほぼ右肩上がりを続けているため、今後数年で需要が急激に落ちるということはまずない、というのが一般的な見解です。
ただし、「Webマーケターの将来性」を考えるのであればAIの進出は頭に入れておいた方が良いでしょう。Webマーケターの仕事には、AIが得意とするデータの活用や数字の分析が含まれるためです。
正確かつ高速にデータ処理できるAIがWebマーケティング業界に参入することで、将来的にWebマーケターの仕事がなくなるのでは?と危惧する声もあります。
しかし実際は、Webマーケターの仕事はデータ処理だけではありません。
分析したデータをどう活かすのか?といったクリエイティブな部分や、ユーザーとのコミュニケーションについてはAIより人間が得意とする分野。繊細な対応や、ブランドイメージを加味した判断など、人の感情が関わるような部分は今はまだAIに任せることはできない、というのもまた一般的な見解です。
筆者は以前Webサイトの運用やアフィリエイトで収益を得ていましたが、データ分析をAIがしてくれることはむしろWebマーケターにとって好都合に感じます。その分空いた時間を戦略立てやクリエイティブに使うことができるので、作業効率が上がり効果も期待できるでしょう。
反対に、今まで分析や情報収集をメインとしていたマーケターは自分の武器を見直す必要があるのかもしれません。Webサイトからの流入にこだわらず、チャネルを横断的に活用する戦略などもカギになってくるでしょう。
Webマーケティング業界の将来性は十分にあるが、Webマーケターの仕事の在り方は変化していくだろう、というのが筆者の個人的な意見です。
Webマーケティング教育が必修化される日はくるのか?
今後も拡大が見込まれるWebマーケティング・デジタルマーケティング市場。個人的には、単純に「マーケティング」の知識が学べる授業はあっても良いのではないかと思っています。
データ分析はAIがやってくれる世の中になったとしても、データの見方や、そのデータをどう活かしてアクションに繋げるかという「ひらめき力」は、どんな業種でも使い道に困らないだろうと思うからです。
そう考えると、将来的にWebマーケティング教育が必修化される可能性もあるような気がしてきますよね。
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.