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宇宙船外活動「EVA」がスキューバダイビングと同じ課題をもつ理由

2022.05.23

国際宇宙ステーションISSの船外へ出て活動している宇宙飛行士を映像で見たことがあるかたも多いことだろう。また、アルテミス計画が始動し、宇宙飛行士が月面に降り立つ日もそう遠くないだろう。そして、未来には、我々民間人も宇宙旅行の一環として、宇宙の外へと出られる日がくるかもしれない。このように宇宙の外に出て活動するこのEVAは、実はスキューバダイビングと同じ課題がある。では、どのような課題なのか、それは、どのような解決方法があるのか、今回は、そのような話題について触れたいと思う。

スキューバダイビングの課題の一つ、減圧症とは?

冒頭にあるとおり、宇宙船外活動EVAには、スキューバダイビングと同じ課題がある。まず、スキューバダイビングから話を進めたい。オープンウォータの資格は然り、スキューバダイビングの資格を取得したことがあるかたであれば、減圧症について一度は学んでいるはずだ。

減圧症とは、ダイビング中に蓄積した体内の窒素が、地上に上がることで膨張し、体にさまざまな不調を引き起こす症状のこと。潜水病と呼ばれることもある。もう少し具体的に説明すると、減圧症のメカニズムは次のようだ。減圧病の原因は窒素。背中に背負うタンクの内の気体は空気であり、その組成は地上の空気と同じであり、約7割は窒素だ。当然、窒素は空気に含まれる気体であるので、それ自体に害はない。しかし、スキューバダイビングは海に潜る行為。体に水圧がかかるのだ。海中という高圧の空間では、地上にいるときよりも多くの窒素が体内に取り込まれてしまい、これが減圧症を引き起こす原因となる。

海中から地上に上がると、体にかかる圧力は急激に変化する。そのため、海中で過剰に体内に取り込まれた窒素は、地上に上がると体内で気泡へと変化する。この気泡が血管内に発生することで毛細血管が塞がり、さまざまな不調が体に現れてしまうのだ。後遺症が残ったり、最悪、死亡というケースもある怖いものだ。もちろん、絶対に減圧症にかかるというわけではない。スキューバダイビングのアドバンスの資格以上が潜れる40mの水深など。深いところでの長時間の潜水や急浮上などは減圧症のリスクを高めてしまう。

もし減圧症にかかってしまった場合は、病院の再圧チャンバー(もしくは高圧チャンバー)に入って、窒素を体内に溶け込ませるという治療を行う必要がある。実は、この再圧チャンバーが設置されている病院もそれほど多いわけではなく、スキューバダイビングのレスキューの資格以上を保有しているダイバーであれば、ダイビングスポットの近郊で再圧チャンバーが設置された病院をあらかじめ調べておくことが必要だったりする。

再圧チャンバーのイメージ

宇宙船外活動EVAで減圧症になる理由とは?

冒頭で、宇宙船外活動EVAには、実はスキューバダイビングと同じ課題があると申し上げた。これは、どういうことだろうか。そう、宇宙船外活動EVAは減圧症になる可能性があるというリスクが存在する。ただ、宇宙船内や国際宇宙ステーションISS内に居るだけでは、減圧症にはならない。では、どのようなときに減圧症になるのだろうか。宇宙服を着るときに減圧症が起きやすくなるのだ。

宇宙には空気がない、真空状態。そこで、空気が入った宇宙服を着用する。すると、外部との気圧差によって宇宙服がパンパンに膨れ上がってしまい、非常に動きにくくなる。普段はやわらかい風船が、パンパンに膨らむと簡単には曲げられなくなるのと同じ。それを解消するために、宇宙服の内部の気圧を0.3気圧にするというが、それによって減圧症を起こしてしまう可能性があるのだ。ちなみに、ロシアの宇宙服は0.4気圧にするそうだ。

では、どのように宇宙服を着て、船外活動EVAを実施するのかというと、次のようだ。

まず、マスクを装着して100%の酸素で約60分間、呼吸する。その後、船内気圧を1気圧から約0.7気圧に下げた状態で、12時間以上その状態に保つ。この期間、船外活動EVAをしない一緒にいる仲間の宇宙飛行士も同じ環境で過ごさなければならない。

次に宇宙服を着る。宇宙服内の窒素を追い出し、100%の酸素を40~75分間呼吸した後、宇宙服内を約0.3気圧に減圧する。

そして、エアロックを減圧し宇宙空間と同じ状態にする。ハッチを開けて、エアロックから船外に出て船外活動EVA作業を開始するのだ。船外活動EVAを終了し、エアロックに戻り、エアロックを再加圧して、船内と同じ気圧にする。そして、宇宙服を脱ぐというもの。宇宙服を着て、宇宙空間の外へと出ることがどれだけ大変で、面倒なことなのかお分かりいただいたと思う。

つまり、船外活動中の宇宙服内の気圧を、約0.3気圧から0.5気圧程度にまで高く保つことができれば、減圧症の心配もなくなると言われている。

しかし、0.5気圧にすると宇宙服が風船のように膨らんでしまうので、宇宙飛行士が船外活動を楽に実施することができる動きやすい宇宙服は、未だ完成していないのも実情のようだ。そのため、膨らまない、動きやすい、減圧症フリーな宇宙服の開発が鍵だろう。

宇宙船外活動EVAのイメージ

宇宙船外活動EVAで減圧症を回避する方策

膨らまない、動きやすい、減圧症フリーな宇宙服、それにぴったりなものがある。それは、MITのDavaNewman氏が発表したBioSuits。デザインも非常に先進的で、機械的逆圧(MCP)という技術を使って、皮膚に均一な圧力を提供することができるという。しかも、見た目からは想像できないが、宇宙空間の真空からも人体を保護することができるというから驚きだ。

つまり、従来の宇宙服とは異なり、桁違いに移動や行動が楽になっているのだ。他にも、センシングファイバー、慣性測定ユニット、加速度計、ジャイロスコープ、およびオンボードの機械学習アルゴリズムを使用してリアルタイムセンサーで加えられた圧力と体の動きを監視するスマートセンシングが備えられており、スーツの圧力状態、パフォーマンス、および異常の検出を監視できるという。

このBioSuitsがもし、上記の機能を具備したものとなれば、宇宙船外活動EVでの減圧症というリスクはゼロに近づくことだろう。

MITが開発中のBioSuits

今回は、宇宙船外活動EVAでの減圧症について、スキューバダイビングと合わせてお話した。この減圧症の課題がフリーになれば、アルテミス計画を含め月面基地や火星への進出はスムーズとなるだろう。そして、冒頭で述べた我々民間人の宇宙旅行の一環である、宇宙の外へと出られる旅行というものも身近になるに違いない。

文/齊田興哉
2004年東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。同年、宇宙航空研究開発機構JAXAに入社し、人工衛星の2機の開発プロジェクトに従事。2012年日本総合研究所に入社。官公庁、企業向けの宇宙ビジネスのコンサルティングに従事。新刊「ビジネスモデルの未来予報図51」を出版。各メディアの情報発信に力を入れている。

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