小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

市民のアルコール摂取率が高い米ウィスコンシン州のレポートに学ぶ「飲酒を減らす3つの方法」

2022.05.17

米・ウィスコンシン州に学ぶ、飲酒を減らすための3つの方法

国税庁の調査によると日本では高齢化が進むにつれ、飲酒可能な人口が増加しているのに対し、アルコールの販売数量は1996年をピークに減少傾向が続いている。

飲酒習慣を見ると、男女とも30代で大きく増え、70代になると減少していく。男女別では男性、特に若い男性の飲酒量が減っている一方、女性の飲酒率は30〜70代までの幅広い年代で上昇を見せている(酒レポート 平成30年3月 | 国税庁)。

2017年に薬物医学会雑誌が発表した調査結果によると、飲酒を原因とする2013年の労働損失は2兆円を超え、医療費は3兆7千億円に上るとされる。飲酒は大きな社会問題であるといえるだろう。

また2021年のアルコール依存症患者は57万人だが、治療を受けているのは4万3000〜6万人ほど。ほとんどが専門的な治療を受けていない状況である。

アルコールの中で最も消費が多いのはビールだ。2009年に発売されたノンアルコール飲料も人気を集めている。一方でアルコール度数9%の缶チューハイ、クラフトビールなどが好調な売れ行きを見せているという動きもある(わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移|厚生労働省)。

この記事ではアメリカのウィスコンシン州が行った、アルコールの摂取を減らすためのレポートで報告された61の方法から、参考になりそうな主要な3つを紹介する。

ウィスコンシン州の現状と対策

まずウィスコンシン州の現状について簡単におさえておこう。ウィスコンシン州ではアルコールの摂取率が高く、アルコールを原因とする死亡率も低くない。2014年以来、アルコールを原因とする死亡率は54%上昇したという。

この状況を打破するため、州の「アルコールとドラッグ乱用に関する委員会」が調査を行い、アルコールの摂取を減らすためのレポート’Moving Forward : Policies and Strategies to Prevent and Reduce Excessive Alcohol Use in Wisconsin’を発表した。

2022年3月に発表されたレポートでは61の方法が紹介されており、この内容は大きく3つに分類することができる。次項で順に紹介しよう。

ウィスコンシン州のレポートが教える飲酒を減らすための3つの方法

ウィスコンシン州が発表したレポートから、飲酒を抑えるための3つの方法を順番に見ていこう。

1.アルコールを入手しづらくする

レポート内で最も多くの具体例が挙げられていたのは、アルコールを入手するハードルを上げる方法である。販売場所や、飲酒できる店の数を減らすことで、飲酒の機会や頻度を下げ、アルコールの摂取量を下げることを目的とする。

特に大学や専門学校に近い店の数を制限し、アルコール販売と提供の際の年齢チェックを厳しくする。同時に、未成年者にアルコールを提供した店に罰金を課すことで、外的な環境を整備しアルコールを遠ざける。

未成年者に対してはさらに、テイスティング会場でもIDチェックを欠かさず行い、成人前の飲酒を徹底的に防ぐとされる。また、そもそも飲酒可能な年齢を引き下げないというルールへの言及もされている。

公園や公共の場所での飲酒、飲み放題やハッピーアワーと呼ばれるような時間限定セール、ガソリンスタンドでの販売を禁止するほか、大容量の樽での販売の中止、酒類の配達サービスに制限を課す、アルコールに対する課税を重くするといった方法が提案されている。

2.法律を制定する

飲酒に関わる法律が対象とするのは、飲酒をする側とアルコールを提供する側の双方である。

飲酒をする側に対する法律としては、一気飲みや早飲み競争の禁止、法律に違反した際の罰則の厳罰化を行うといった施策が挙げられている。

アルコールの提供側に対しては、アルコール販売業者のライセンス料を上げる、アルコールの配送に関わるライセンスを作るといった提案がある。上の項で紹介したように、飲酒年齢を引き下げないこと、アルコール販売・提供の際の年齢チェックも有効とされる。

さらに飲酒年齢に達していない人に対しては、保護者や飲酒年齢の大人と一緒にいる場合であってもアルコールの販売をしない措置を取る。

このほか、警察や自治体での大規模な見回りを強化するといった方策が挙げられている。

3.アルコールに関する教育の徹底

アルコールに関する教育の対象は、幅広い関係者が想定されている。

まずアルコール摂取量とガン、脳卒中、心疾患、高血圧症、動脈硬化などの慢性疾患のリスクとの関係、酔っ払い運転が引き起こすデータの公開、飲酒が関係する事件や事故の情報、救急車の出動状況などを広く積極的に公開すること。

さらに酒類の行政担当者には、定期的にアルコール関連の教育を受けさせることを義務化する。また学校関係者やカウンセラーに対する未成年の飲酒やハイリスクな飲酒、地域のアルコールに関する専門家の情報提供、学校や自治体による保護者や両親に対する教育などがリストアップされている。

アルコール依存が疑われる人を対象にしたプログラムに、SBIRTS(エスバーツ)が存在する。SBIRTSはScreening、Brief Intervention、 Referral to Treatment and Self-help groupsの頭文字を取ったもの。

対象となるのは心身や日常生活、仕事にアルコールの影響が出ている人で、飲酒スクリーニングから始まり支援者による簡単な介入、専門治療・相談機関・自助グループの紹介といった流れで行われる。

SBIRTSは、簡単な検査によって早期に適切な指導や専門治療を始めることを目的とし、日本でもすでに各地で採用され始めている。

自宅で飲むにせよ外で楽しむにせよ、心や身体を落ち着かせリラックスするための存在として、アルコールと上手につき合っていきたいものだ。

参考:

61 New Recommendations to Reduce Excessive Alcohol Consumption | Cision

Moving Forward: Policies and Strategies to Prevent and Reduce Excessive Alcohol Use in Wisconsin | State Council on Alcohol and Other Drug Abuse

わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移 | 厚生労働省

酒レポート 平成30年3月 | 国税庁

SBIRTSの進め方(第1版)|滋賀県立精神医療センター

文/森野みどり

編集/inox.

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。