「世界がどれほど変わろうとも、紳士たるもの、その日その日、その場その場でどう振舞うかを心得ていなければならない。フォークを床に落としてしまったら、拾ったほうがいいのかそのままにしておくべきか、今でも知っている必要がある(答えは「拾って替えのフォークをお願いする」。床に自分が落としたものを放っておくことはしない)」――アメリカでエチケット、マナーについてもっとも詳しいとされるジョン・ブリッジズ氏の著書『ドアはあけたらおさえましょう』は、1998年の刊行以来、二度の改訂を経て20年以上読み継がれるベストセラーとなり、世界20言語に翻訳されている。同作がこのたび、日本上陸した。
今回はその中から、日本人にも役立つ「紳士の言葉のマナー(P 120~)」を一部抜粋して紹介したい。
紳士は、適切な「言葉」「話題」で自然に打ち解ける
■紳士が決して口にしない「質問」
・「おふたりはどうやって知り合ったのですか?」
・「どうして私はあなたの名前を知っているのでしょう?」
・「私のこと、覚えていらっしゃらないのですね?」
・「ラベルを見てもかまいませんか?」
・「それ、全部食べるのですか?」
ジョン・ブリッジズ氏は、これらの言葉は、紳士には決して口にしない質問だと指摘している。これらの質問は、一般的なコミュニケーションのマナーとして、まだそれほど親しくない間柄にしては、やや踏み込み過ぎた質問という印象を受ける。聞き手によっては、「なぜそのような質問をするのか?」「暗に侮辱しているのではないか?」と勘ぐってしまうような質問であるともいえるだろう。紳士には、相手に気持ちよくふるまってもらうための気遣いが求められると考えると、相手が答えに詰まるような話題は避けるのがベターと言うことだろう。
■「自慢話」「愚痴」「悪口」を慎む
・紳士は自慢話をしない。
・紳士は愚痴を言わない。
・紳士は遠回しに言わない。
・紳士は意図的に誰かを侮辱しない。誰かが困っているのを楽しまない。
ジョン・ブリッジズ氏は、紳士の会話で慎むべき話題をこう指摘している。紳士であろうと、主婦であろうと、「自慢話」「愚痴」「悪口」の類は、聞いていて気持ちの良いものではない。相手に不快な思いをさせることにつながるだけでなく、他者からの自分の評価を落とす危険性がある。「素敵な人だ」と周りから評価される紳士は、周囲との衝突を招くような言葉を不用意に使わないよう配慮する思慮深さが求められると言うことだろう。
■「誉め言葉」は感謝して受け取る
紳士は「ありがとうございます。そう言ってもらえてうれしいです」と言って、相手の感謝の言葉を受け取る。
友人から「いいネクタイだね、ジム」と言われて、「この古いやつが?人前でつけるのも気が引けるくらいだ」と返さない。これでは誉めてくれた相手のセンスを疑うような言い方だからだ。
ジョン・ブリッジズ氏は、誉め言葉への返し方についてもこう指摘しているが、これは日本人にも理解しやすいのではないだろうか。日本には「謙虚」や「謙遜」という言葉があるように、相手の誉め言葉をそのまま受け取るのではなく「いえいえ、そんなことはありませんよ」とへりくだることがある。しかし、これは自分を控えめに表現している一方で、「相手の誉め言葉を否定している」とも言える。誉め言葉を過大に受け止めすぎて、有頂天になったり自慢話につなげたりする必要はないが、素直に「ありがとう」と受け取ることは、日本においても失礼にはあたらないだろう。
今さら聞けない気配りやマナーの基本
今回は、本書の「言葉」についてのマナーや気配りから一部を抜粋して紹介した。
本書は「日常」「装い」「ディナー」「言葉」「招待する」「招待を受ける」「人間関係」「職場」など、様々なシーン別に10章で構成されている。
全米のベストセラーということから、基本的には海外式のマナーや気配りであり、一部日本人の文化となじみのないシーンもある。
しかし、裏を返せば、海外で受け入れられやすいスタンダードなマナーや気配りを知っておけば、仕事で外国人と接する機会がある場合や、海外旅行などに行った際の立ち振る舞いなどに役立つということだ。
本書は、どの章も短文で構成されているため、「紳士たるもの」とかしこまって読む必要はなく、電車での通勤途中など、短いスキマ時間でも充分に読み進めることが可能だ。「紳士」にむけた本ではあるが、性別にこだわる必要はないだろう。
「こんな時にはどう行動するのがスマートか?」と迷う人の世界基準のマナー・エチケットブックとして参考にしてはどうか。
「ドアはあけたらおさえましょう(サンマーク出版)」
ジョン・ブリッジズ (著), 酒井章文 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4763139754
文/平塚千晶
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