日本料理の調味料や飲用に供される、アルコール成分を有する甘みがある有色の液体である〝みりん〟。
しかし実際にそんなナイス! なみりんを入手したとしても……
・色々な種類があって、どう使えば良いのかわからない!
・料理酒や砂糖とどう違うのか、わからない!
……と疑問だらけで、みりんを購入しても実際はほとんど使わない人もいるはず。
みりん全盛のこの時代、みりんを的確かつ有用に、それにも関わらず効果的な使用方法を得る手段はないものでしょうか……。
インターネットで探してみたところ、みりんを作り続けて120年、みりん業界の雄であるキング醸造より、〝みりんの使い手〟になる豆知識を教えていただけることになったので、さっそくご紹介いたします!
みりんって実は3種類あるの知ってた?
さてココだけの話、みりんには以下の3種類があります。
本みりん
原料:もち米、米こうじ、焼酎(醸造アルコール)、糖類など
アルコール:13.5%以上14.5%未満
みりん風調味料
原料:水飴、米・米こうじの醸造調味料、醸造酢、酸味料
アルコール:1%未満
みりんタイプ
原料:水飴、米・米こうじの醸造調味料、食塩、酒精(アルコール)、調味料(アミノ酸など)、酸味料
上記の内容を具体的かつ的確に要約すると、上記の3種類とも調味効果はほぼ変わらないものの……。
・アルコール分を含み、もち米を使うのが「本みりん」!
・アルコール分をほとんど含まず、煮込んだあとにも使えるのが「みりん風調味料」! 甘さ・テリ・ツヤの効果が3種類の中でも優秀!
・アルコール分を含み、さらに塩分を含んでいるのが「みりんタイプ」!
……というワケです。
料理にコクを与えてくれるみりんは何にでもよく合う!
さてソコだけの話、みりんは味噌やしょう油同様、素材を熟成させたり発酵して作る調味料であるにせよ、製造過程で生まれる複雑な旨味が料理にコクを与えてくれます。
しかも、みりんにはテリ・ツヤ効果があり、見た目もリッチに仕上げてくれる優れものです。
また、和食だけでなく、洋食の肉料理や魚料理のソース・漬けタレ・マリネ・中華料理や多国籍料理に使ってもよく合います。
とどのつまり、みりんは今や世界的に普及したしょう」や味噌の様に優れた、注目の調味料なのです!
……ここにきて衝撃の事実をお知らせいたしますが、本みりんとみりん風調味料、そしてみりんタイプを1社ですべてラインナップとして揃えているのは、家庭用としてはキング醸造だけなのです。
この事実を知った時、「へ~そうなんだ~」と驚きました。
料理を美味しくしてくれる! みりんの7つのヒ・ミ・ツとは?
さて、みりんには7つの秘密があると言われています。秘密なので本来お知らせしてはいけないのですが、今回特別に、読者のみなさんへご案内します。
1.上品な甘みをつける!
みりんの甘みはブトウ糖やオリゴ糖など複数の糖類で構成されているので、まろやかで上品な甘みに仕上がります。
2.テリ、ツヤをつける!
複数の糖類で構成されるので、砂糖では出せないテリ、ツヤを得られます。
3.煮崩れを防ぐ!
糖類とアルコールの作用で動物性食材のエキス部分の溶出を抑制するだけでなく、植物性食材はデンプン粒の流出を抑制し、結果、煮崩れが防げます。
4.深いコクと旨味を出す!
材料のもち米から産出されるアミノ酸やペプチドが旨味成分となり、さらに糖類や有機酸が複雑に絡み合うことによって深いコクがでます。
5.味が染みこむ!
アルコールは分子が小さく食材に染みこみやすいので、アミノ酸や有機酸、糖類と一緒に食材に染みこみます。
6.素材の臭みを消す!
アルコール成分と共に素材の臭み成分が飛ばされるだけでなく、アルコール・糖類・アミノ酸、有機酸などの化学反応により臭み成分が抑制されます。
7.素材を引き立てる
香気成分により素材の味や風味を引き立てます!
……といった、様々な秘密が隠されていたのです。
知る人ぞ知るみりんの歴史とは?
さて、みりんは戦国時代、高級な甘い飲み物でした。
いわゆる正月に飲むお酒〝おとそ〟みたいな感じです。
江戸時代はウナギやソバのタレとして、そして、明治時代はまだ高級品扱いでしたが、昭和30年代の酒造法改正により一般家庭へ普及したのです。
ちなみに戦国時代から日本に伝わる本みりんの製法は今も変わらず、米、米麹にアルコールを加えてもろみを作り、そして糖化および熟成をして、しぼります。
するともち米のデンプンやタンパク質が分解され、ブドウ糖・オリゴ糖・アミノ酸・有機酸・香気成分が生成され、3~4か月ほど経ったのちに旨味や風味が形成された出荷用のみりんができあがるというワケです。結構時間がかかるんですね!
砂糖不要! みりんで作れる「スイーツレシピ」!
みりんプリン
カロリー 234kcal 調理時間20分(冷やし時間除く)
<材料>(4人分)
本みりん:200ml
牛乳:200ml
卵:2個
バニラエッセンス:少々
ミント:飾り用
【A】みりんシロップ
本みりん:大さじ3
しょう油:小さじ1/2
POINT
みりんシロップはアイスやトーストにかけても美味しく頂けます。
<作り方>
下準備
卵はよく溶きほぐしておきます。
1……鍋に本みりんを入れ、弱火で半量になるまで煮詰め、牛乳を加えて混ぜ合わせてから、冷ましておきます。
2.……卵を合わせてから「ざる」で濾し、バニラエッセンスを加えてから耐熱カップ4個に流し入れます。
3……蒸気の上がった蒸し器に入れ、強火で約1分蒸し、弱火にして約10分蒸します。粗熱を取り、冷蔵庫で冷やします。
4.……鍋に【A】の本みりんを入れ、半量になるまで煮詰め、しょう油を加えて混ぜ、冷やします。
5.……お好みの量のみりんシロップをかけていただきます。
6……食べます。「ンマ~イ!」
……とまあ、ここまで、みりんがいかにステキでムテキングなのかというお話をさせていただきましたが、筆者的にはさらに色々お聞きしたいことがありましたので、今回、キング醸造に特別・独占取材で教えていただきました!
教えてキング醸造様! みりんの使い方と使い分けについて
Q(筆者。以降、Q):みりんタイプの調味料で逆に塩が入ってしまうと困るシチュエーションはどういったものとなりますでしょうか? (加塩されているみりんというのをあまり知らなかったため)
A(キング醸造。以降、A):甘さを強調したい料理やお菓子(みたらしタレ)などでは、みりんの量を多く使う&煮切り(アルコール分を飛ばす)操作で、濃度がより濃くなり塩味を強く感じやすくなってしまいます。
また、伝統的な和食料理(割烹料理)などで繊細な味わいを表現する際には塩味の調整が難しくなります。
Q:料理に本みりんを使った場合、車の運転はしない方が良いのでしょうか。
A:本みりんを煮切らずに使う(飲料として)などでは、アルコール分(平均14%前後……日本酒と同等)になるので危険ですが、一般的な料理(肉じゃがなど)では完成品のお料理にアルコール分が残っていることはほぼないと言えます。普通に家庭料理で使われる調味料ですから、一般的な使用方法であれば問題ないと思います。小さなお子さまがいる家庭など、心配される方には日の出新味料(みりん風調味料)をお勧めしています。
Q:本みりんとみりんタイプのアルコール量は似たようなものですが、塩の有る無し以外にも大きな違いはありますでしょうか。
A:みりんタイプは、本みりんの調味効果を求めて開発された調味料ですから、家庭料理においては塩以外での大きな違いはあまり気にされないで大丈夫かと思います。メーカー視点とすれば、本みりんは「お米(日の出みりんはもち米)」由来のまろやかな甘みや旨味、風味が特徴ですので、食べ比べると違いはよく分かると思います。
Q:料理のことがよくわからないのですが「本みりん」と「みりんタイプ」で、アルコールを飛ばすというのは具体的にどうすれば良いのでしょうか。
A:一般的に煮物などに使う場合は加熱とともにアルコール分が蒸発するので、料理が出来上がる時にはアルコール分が無くなります。
みりん単体を煮切ってから使用する場合は、鍋にみりん類を入れ火にかけ沸騰させ、アルコール臭が無くなればOKです(水に比べてアルコールは沸点が低いのでアルコールの方が先に揮発します)。
Q:みりんは「テリ・ツヤ効果」があり料理にコクを与えてくれる、とのことですが、この料理には使わない方が良い、といった料理はありますでしょうか。
A:基本的には甘みをつけても良い料理であればお砂糖の代わりとしてお使いいただけます。ただし、本みりんとみりんタイプはアルコール分を含むので、加熱しない料理や、料理の仕上げ(その後に加熱工程がない最終段階)には不向きだと言えます。
Q:昭和30年代の酒税法改正まで酒税が高かったとのことですが、昔はどのレベルのお酒と同等だったのでしょうか。また今も酒税はかかっているのでしょうか。
A:当時と現在では貨幣価値も異なるので、一概には言えないのですが、昭和30年代頃の「本みりん」は贅沢品の位置付けであったため、高い税率がかかっていたそうです。
※国税庁に確認したところ、昭和28年に施行された酒税法では1000Lあたり4万500円。現在の貨幣価値で換算すると相当高い金額になるかと思います。
その後、昭和34年、37年に段階的に引き下げられ、現在は1000Lあたり2万円(1Lあたり20円)の酒税になっています。
Q:みりんで作れるレシピはほかにもありますでしょうか。
A:定番では、肉じゃが・照り焼きなどお砂糖を使わずにみりんやしょう油で味を引き出すものや、みりん本来の甘みを存分に感じる「みたらし団子」などになります。また、流行の「みりんキャラメル」も人気です。
▼基本のレシピ
https://hinode-mirin.co.jp/recipe/basic/
Q:3種類が揃うみりんメーカーのうち、家庭用としてはキング醸造だけだそうですが、なぜでしょうか。
A:「本みりん」が原点になりますが、「日の出 新味料(みりん風調味料)」を発売した1960年当時は、「本みりん」は酒類のため、酒類販売免許により一般スーパーでは取り扱うことができず、主に酒屋で販売されていました。
高度経済成長期にスーパーマーケットが全国的に広まる中、生活者からは調味料であるみりんをスーパーマーケットで買いたい。スーパーマーケット側としても自分たちで販売したい。という双方のニーズが高まっていき、そんな世の中のニーズに応えるべく開発したのが酒類に該当しない「日の出 新味料(みりん風調味料)」です。
「みりんタイプ」も酒類に該当しない調味料ですので、家庭用・業務用それぞれのニーズに「みりんメーカー」として応えていく過程で3種類のみりんを製造販売するようになりました。各メーカーの方針はそれぞれですが、弊社は3種のみりんを取り扱っているからこそ、お客様(生活者も、お店も、業務用も)1人1人に最適なみりんをご提案できると考えております。
なお、近年では糖尿病などの理由で糖質を制限しなければならない方が増えてきており、そういった方々の食事では味が犠牲になる場面が見受けられましたので、弊社では「糖質ゼロのみりん」として「日の出 甘みとコクの糖質ゼロ」を製造販売しております。こちらは使い方はみりんと同じですが、従来の3種のみりんの定義に当てはまらない調味料になりますので、「第4のみりん」と自称しております。
3種のみりんを製造販売しているのが弊社だけについては、地方の企業さんや、一般生活者の目には触れない業務用の世界については把握しきれないところもありますので、〝全国展開している家庭用のみりん〟では弊社だけ、といった方が良いかも知れません。
また弊社は家庭用では今まで、「カロリーハーフ」「オリゴプラス」「麹2倍の本みりん」「オーガニック」「アルコールゼロ」等々、様々な「みりん類」を販売してきました。ここまで多種多様な「みりん類」を販売してきた会社は珍しいと思います。
……キング醸造様、取材ご協力ありがとうございました!
【FURUやんの本音ジャッジ】
テリの度合い ★★★★★
ツヤの度合い ★★★★
煮崩れの防ぎ具合 ★★★★★
種類の多さ ★★★★
筆者「ねえねえ、このみりん欲し~い! 買ってイイ?」
奥さん「イイよ!」
……今回はチョークスリーパーをかけられず無事でした。
今後も新たなみりんの世界に期待です!
文/FURU
デジタル系ガジェットに散財する、自称漫画家 兼 実質ライター。 電脳ねたがテーマの漫画を得意とする→https://www.furuyan.com
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