血栓症とは、血管内に血栓と呼ばれる血の塊が形成され、循環系における血流が閉塞する病態のこと。脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症などに代表される病気だが、実際のところ、どれぐらいの人がその怖さを理解しているのだろうか?
トレンドラボラトリーはこのほど、「血栓症」関する街頭調査を、4月中旬に、都内で250名を対象に実施した。
「血栓症について知っていますか」という問いに対して、「名前は知っているが、具体的には良く知らない」と回答した人がおよそ6割だった。また「あたなは血栓症になると思いますか」という質問に対して、「なると思っていない」「考えたことがないのでわからない」と回答した人が、およそ9割となった。上記の2つの質問に対する回答からもわかるように、「血栓症」に対する生活者の意識レベルは低いことがわかった。
そんな血栓症について、カーディナルヘルスが開催したセミナー「静脈血栓塞栓症の予防についての現状と今後の展望」にて、静岡社会健康医学大学院大学 副学長 浦野哲盟氏が解説していた静脈血栓塞栓症に関する最新トピックスや予防法などを、以下の5つのポイントに絞って紹介する。
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1. 血栓症の原因は、血管・血液・血流の3要因に集約できる
日本の死因の1位はがん、2位が血栓症などの心疾患、3位が肺炎、4位が動脈硬化などの脳血管疾患だ。心疾患・脳血管疾患を患うと生活も人生も一変してしまうほどの大きな病だ。
脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症等々の血栓症は、がんに併発し、予後、クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)を悪化させ人生を狂わせる。また、新型コロナ感染症を患うと、敗血症や外傷後の臓器障害(微小血栓)なども引き起こす。
なぜこうした血栓症になるかというと、動脈硬化などで血管の内側の細胞(内皮細胞)が障害されたガタガタな血管や、固まりやすい溶けにくいドロドロの血液、流れが不規則で遅いトローリ血流の、3つの原因が挙げられる。
2. 肥満、生活習慣病、感染症、がん等は共通するリスクである
ガタガタな血管は、動脈硬化・メタボリック症候群・糖尿病等の血管炎症のリスク因子に。ドロドロの血液は、糖尿病・肥満・感染症・歯肉炎・生活習慣病、他にはがん、妊娠・経口避妊薬、血栓性素因、ストレス等々の慢性炎症のリスク因子になる。
また、避難所や飛行機内(下腿を下げた姿勢を長時間続ける)長期臥床、ギブス装着、妊娠などでは、血流が悪くなる。
3. リスクの評価と適切な予防法(tailor-made の対応)の実施が必要である
血管・血液・血流を健やかに保ちリスクを軽減するには、まず生活習慣の改善。具体的には食べすぎない、甘いものやコレステロールの多いもの(卵類、バター、生クリーム等)を控えめに、野菜・果物(ビタミンA、E、C)や青魚を多く摂るなどで改善していく。また薬の内服は重要だ。
さらに、20〜30分のウォーキングなどの継続運動(有酸素運動)を習慣化し、体重を落とし、高脂血症の改善、血栓を溶けやすくする、慢性炎症の改善などを図ることで、血管・血液・血流を健やかに保つことが大事だ。
4. 高リスク者には出血の危険性に配慮した薬剤による抗凝固療法が必要である
医療関係者へは、「新型コロナウイルス感染による血栓症発症リスク増大」を伝えている(日本血栓止血学会、2020/05/12)。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に際して、重症例において D-dimer値が高値を示すこと、深部静脈血栓症(DVT)/肺血栓塞栓症(PTE)を含む血栓症の併発が多いこと等々、凝固・線溶系の異常あるいは制御障害を示す事実が当初より指摘されてきた。
現時点で確固としたエビデンスを求めることは困難だが、これらの異常が症状の増悪、あるいは臨床転帰にまで影響を及ぼすことが示されており、このような情報を医療者が共有する事は大変重要と考えている。
また、重症患者では血栓症を高率に発症するので、出血リスクを勘案した上で、抗凝固療法を実施することを推奨する。
軽中等症では血栓症の発症は多くないが、臨床症状、D-dimer値等の経過を注意深く観察し、必要に応じ速やかに抗凝固療法を実施することを推奨する。そして血栓症合併症例では、退院時の抗凝固薬服用を推奨する。
5. 低リスク者、および出血リスクを有する人には、間欠的空気圧迫法あるいは弾性ストッキング等の理学的予防法を用いる
低リスク者、および出血リスクを有する人には、間欠的空気圧迫法あるいは弾性ストッキング等の理学的予防法を用いることを推奨する。
出典元:株式会社ルーティングシステムズ
構成/こじへい
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