起業家が苦労してリリースする最新ビジネスは、知恵と情熱の結晶。私たちの仕事や人生を切り拓くうえで最良の教材になる。今回紹介するのは、2022年3月にスタートしたFamilyinnのお寺暮らし予約サイト「寺あんご」。大量の情報にさらされる現代人と、お寺の衰退、さらに地域社会の課題を解決する。
心身が調うお寺での生活
「お寺に暮らし、修行体験を行うことで心と体を調えることができる」とは、同社代表の杉本朋哉氏。寺あんごは、1週間からの滞在を前提とする日本初のプラットフォームだ
利用者は僧侶とひとつ屋根の下で暮らし、読経や食法、作務といったお寺の日常生活を体験できる。「ゆっくり、しっかり、丁寧な生き方を体に染み込ませていくのがお寺という道場。『心身が調う生活習慣』のお手本と言える場(杉本氏)」。
また、檀家の減少やお参り文化の停滞など、お寺離れが進む中、寺あんごは生活者とお寺の新たな接点となる。日本のお寺の再興も寺あんごの大きな意義だ。
お寺暮らしを通して地域社会を体験する
代表の杉本氏は1998年生まれの現在24歳。Z世代の経営者は、「相互扶助の社会を構築する」をミッションに掲げ、寺あんごのほかにホームステイのマッチングサービス「田舎ホームステイ」を運営する。
背景には、大学在学中に起業して行き場すらないとき、縁もゆかりもない家庭に受け入れてもらった体験がある。都市では人と人のつながりが希薄化し、孤独や引きこもりが社会問題となる中、「お互い助け合える社会をつくっていきたい」と意気込む。都市で育った若者にとって、おせっかいも少なくない田舎ホームステイは「衝撃的な体験(杉本氏)」だという。
興味深いのは、同氏がお寺を田舎の一般家庭と同様に(あるいはそれ以上に)「地域の人とのつながりを体験できる場」ととらえていること。お寺や神社はお祭りやイベントが開催される地域の拠点であり、コミュニティの中心として機能する。
瞑想や読経といったわかりやすい価値から一歩踏み込んで、地域社会の中で生活する体験を提供するのが寺あんごの狙いだ。
社会のグローバル化が進展し、ネットやスマホで世界とつながることが容易になった。若い世代ほど、それらを使いこなすことに長け、新たなムーブメントを起こしている。
一方で、地域のつながりという古くからの価値を、若い経営者が再生しようとしている。身近な課題を再認識させられるともに、今後を担う世代の価値観が垣間見えるビジネスストーリーだ。
●プレスリリース
日本初、お寺暮らしのプラットフォームサービス"寺あんご"を開始。
取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小に関わらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。
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