ウクライナ料理ボルシチをつくってみた
ボルシチの発祥の地がウクライナだと知ったのは、ロシア政府によるウクライナ侵攻が始まった2月末のことでした。あれから2か月以上が経った現在も、脅かされ続けるウクライナ市民の状況、先行きは不透明なままです。
心を絞られるようなニュース、攻撃に晒される町の状況とともにウクライナの歴史や暮らしの情報が取り上げられるのに触れ、フリブと呼ばれるパンが主食とされていることや、野菜の煮込み料理がよく食べられていることなどを知りました。
他にもヴァレニキと呼ばれる水餃子や、ジェルーニというハッシュドポテトのような食べ物が定番料理なのだそうですが、最も有名なのはやはりボルシチです。
根菜、キャベツ、肉などを煮込んでつくるボリュームたっぷりのビーツ入り煮込み料理のことを指し、スープをあの特徴的な美しい赤色にしているビーツは日本ではあまり目にしませんが、ミネラルやポリフェノールが多く含まれて「食べる輸血」とも称される栄養価の高い野菜。
血流改善、抗酸化作用、貧血予防と、美容と健康に効果的なビーツをたっぷり使ったボルシチは貧血気味の私にうってつけ。手に入る食材で、できる限り本場の味に近いボルシチづくりに挑戦してみました。
レンズ豆のボルシチをつくろう
今回つくるのはレンズ豆をベースにしたボルシチです。
栄養価が高く、保存がきく乾燥豆の難点は一晩ほどの戻し時間が必要なことなのですが、レンズ豆は戻しが不要なのでとても便利。レンズ豆は量り売りを行っている無印良品で購入。
肝心のビーツは、近所ではフレッシュビーツを見つけることができなかったので、カルディで瓶詰めを買い求めました。
成分ラベルをチェックして、味の引き算をすれば缶詰や瓶詰めのビーツでも美味しいボルシチをつくることができます。
酢や塩が添加されていることが多いのでその分の味付けを加減します。
そのほか、角切り牛肉、にんじん、玉ねぎ、キャベツ、ディル、ローリエ、トッピングするスメタナ(サワークリームに似た発酵乳製品)をつくるための無糖ヨーグルトと生クリームをSEIYUで購入しました。
2022年の3月8日(火)から「ウクライナ人道危機救援金」が実施されているSEIYUでは、レジ横に設置されている専用の募金カードを購入品と一緒に精算することで、簡単に寄付ができるようになっています。
小額ですが私も参加。この取り組みは全国の西友、サニー、LIVINで行われています。
材料が揃ったら早速ボルシチづくりを始めましょう。
3〜4人前 レンズ豆のボルシチに使う食材
・レンズ豆140g
・角切り牛肉160g
・ビーツ瓶詰め
・ディル
・にんじん 1本
・キャベツ 半分
・玉ねぎ 半分
・じゃがいも 2個
・無糖ヨーグルト 105g
・生クリーム 100ml
ボルシチに欠かせないスメタナのレシピ
放置時間を要するスメタナから。
スメタナは生乳を発酵させてつくるサワークリームのような脂肪分の高い発酵生乳で、ボルシチの味の決め手に欠かせない存在です。
生乳を発酵させるのには時間がかかりすぎるので、水切りしたヨーグルトと生クリームを同量混ぜてつくります。
コーヒーフィルターに105gほどの無糖ヨーグルトをかけて、ラップをして2〜3時間冷蔵庫へ。
ヨーグルトにラップをかけ、重石(なんでも大丈夫!)を載せることで短時間で水切りができます。
この時にヨーグルトから出る水分、ホエーにはたんぱく質やミネラル、ビタミンが豊富に含まれ、ほのかな酸味はボルシチにもぴったり。捨てずにとっておいて最後にスープに加えます。
水切りが終わったヨーグルトに100mlの生クリームを少しずつ加え、ダマにならないようによく混ぜて、ケチャップとマヨネーズの間くらいの固さになれば完成。
冷蔵庫で寝かせておきます。
スメタナはお菓子の付け合わせにもぴったり。チョコレートケーキにたっぷりつけて食べると美味。
瓶ビーツでつくる本格ボルシチレシピ
並行してボルシチの調理にとりかかります。
大きな鍋に水を3リットル沸かして、流水で洗ったレンズ豆140gを40分ほど煮ていきます。
レンズ豆の煮汁をベースにしてつくるボルシチです。
豆を火にかけている間に野菜を切ります。
根菜類の切り方はお好みでOKです。
具材の大きさが揃っているのが好みな私はレンズ豆にあわせ、にんじん、キャベツを千切りに、玉ねぎはみじん切りに、じゃがいもは小さめの角切りにします。
根菜は皮を剥かずにたわしでよく洗って使っています。皮に含まれる栄養分を余さず使え、生ゴミの量も減らせて一石二鳥。
瓶詰めのビーツは柔らかいのでフードプロセッサーで細かくして、にんじんはスライサーで千切りに。
こんなにたくさんの野菜がスープに入ります。
少量の油をひいたフライパンで牛肉をさっと炒め、焼き目がついたら取り出す。
肉の油が出たフライパンにそのまま、細かくしたビーツを瓶の汁と一緒にいれて煮立たせ、汁気が飛ぶまで炒める。
その間にレンズ豆の鍋にキャベツの千切りとじゃがいもの角切り、ローリエを加えて10分煮込む。汁気がなくなったビーツをこちらの鍋に加え、さらに10分煮込む。
ビーツを加えると鍋が朱に染まる。
にんじんと玉ねぎをフライパンでしっかりと炒めます。
このくらいよく炒めることで甘みが増し、スープ料理の味わいを深めます。
これも先ほどの鍋に加えます。全ての野菜が鍋に入ったらさらに10分間煮込みます。
あくが出たら取り除きましょう。
塩で味を整えて、出来上がり!
つくっておいたスメタナとディルをトッピング。
赤ワインと一緒にいただきます。
滋味たっぷり赤色スープに舌鼓
塩以外の調味料を使わない素朴な味付けにもかかわらず、複雑な甘みと酸味が調和し、野菜のコクがしっかりと出た味わいには奥行きがあって、一口一口が内臓から元気にしてくれる感じ!
レンズ豆が溶けて混ざり込むことでスープにボリュームが出ているのがポイントです。
スメタナとディルがアクセントになっていて飽きのこないお味。
鮮やかで美しく、心にも身体にも嬉しいボルシチは胃腸の調子が悪い時や体調がすぐれない時などにもぴったりな優しい一皿。
日常に戻れずにいる人たちが、一時も早く安心できる環境で大切な人たちと温かいごはんを食べられますように。
そのためにできることを、諦めずに探そうと思います。
文/山根那津子
ジャーナリズム誌やカルチャー誌の編集をしていた何者でもないただのフェミニスト。自身のミソジニーに気がついて一時ベルリンに移住。書くこと、描くことが好き。
編集/inox.