一度しか切れない「新卒カード」。この特権を利用して就活生たちはどんな条件の企業を選ぶのだろうか。また、せっかく新卒カードを使ってまで入社した企業を、早期に離職する理由とはいったい何なのだろうか?
日本労働組合総連合会はこのほど、2016年の調査に続き2回目となる「入社前後のトラブルに関する調査2022」を実施。大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女1,000名の有効サンプルを集計したので、一部抜粋して紹介する。
新卒入社した会社における問題や離職理由
新卒入社した会社を選んだ理由 TOP3は「無期雇用」「業務内容」「やりがい」
卒業後に最初に就職した会社について質問した。
まず、全回答者(1,000名に)、卒業後に最初に就職した会社を選んだ理由を聞いたところ、「無期雇用(正社員)である」(33.9%)が最も高くなり、次いで、「業務内容(商品など)に興味があった」(20.7%)、「やりがいのある仕事だ」(20.1%)となった。雇用形態や業務内容、やりがいを重視して就職先を選んだ人が多いようだ。
また、「福利厚生が充実している」(15.2%)や「年間休日が多い、取りやすい」(13.8%)、「プライベートの時間を作りやすい」(12.0%)、「転勤がない」(12.0%)といったワーク・ライフ・バランス関連の理由もTOP10入りした。
男女別にみると、女性では「転勤がない」が16.2%と、男性(7.8%)と比べて8.4ポイント高くなった。女性には、同じ場所で長く働けることを重視する人が少なくないようだ。
新卒入社した会社における問題 「時間外労働が恒常的」29.2% 2016年調査から16.8ポイント下降
全回答者(1,000名)に、卒業後に最初に就職した会社における問題として、あてはまるものを聞いたところ、「時間外労働(残業)が恒常的である」(29.2%)と「仕事に見合わない低賃金である」(29.0%)が高くなった。労働時間や賃金に関する問題に直面した人が多いようだ。
次いで高くなったのは、「精神的に不調になり辞める人が多い」(23.6%)、「有給休暇が取得できない人が多い」(19.0%)、「賃金不払い残業(サービス残業)がある」(15.2%)だった。
2016年の調査結果と比較すると、「時間外労働(残業)が恒常的である」(2016年46.0%→2022年29.2%)が16.8ポイント下降したほか、「有給休暇が取得できない人が多い」(2016年35.4%→2022年19.0%)は16.4ポイント下降、「賃金不払い残業(サービス残業)がある」(2016年25.2%→2022年15.2%)は10.0ポイント下降した。
働き方改革や労働基準法遵守が一定程度進んだと考えられるが、労働基準法違反にあたる、有給休暇の未取得やサービス残業といった問題がまだ存在していることが明らかになった。
勤め先における不安や悩みの相談先 1位「家族・友人」2位「勤務先の上司・同僚」
全回答者(1,000名)に、勤め先における不安や悩みを相談したい場合、どこに相談するか聞いたところ、「家族・友人」(79.6%)が最も高くなった。次いで高くなったのは、「勤務先の上司・同僚」(34.4%)、「勤務先の相談窓口(総務・人事)」「SNS(Twitter・Facebookなど)を利用」(いずれも6.8%)だった。
男女別にみると、女性では「家族・友人」が86.4%と、男性(72.8%)と比べて13.6ポイント高くなった。
また、入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導・アドバイスがあった人では、「勤務先の上司・同僚」が37.5%と、指導・アドバイスがなかった人(22.9%)と比べて14.6ポイント高くなった。研修や指導の機会があることで、悩みなどを相談しやすい就業環境や職場の雰囲気が醸成されるのではないだろうか。
勤め先における不安や悩みを行政機関[県の労働局(労働基準監督署など)・ハローワーク]、専門家(法律事務所や弁護士・社会保険労務士など)、労働関連の団体(労働組合や労働団体など)に相談する人(70名)に、相談する際に利用する手段を聞いたところ、「インターネット相談窓口」(55.7%)が最も高くなり、次いで、「メール」(42.9%)、「電話」(30.0%)、「面談」(24.3%)となった。
新卒入社した会社を「離職した」33.2% 入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導がなかった人では41.9%が離職
全回答者(1,000名)に、卒業後に最初に就職した会社で、現在も働いているか聞いたところ、「最初の会社で働き続けている(育児休業中・休職中を含む)」は66.8%となった。他方、「離職した(半年以内)」は7.7%、「離職した(半年を超え、1年以内)」は6.2%、「離職した(1年を超え、2年以内)」は10.4%、「離職した(2年を超え、3年以内)」は5.2%、「離職した(3年を超えてから)」は3.7%となり、合計した『離職した(計)』は33.2%となった。
入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導・アドバイスがなかった人では、『離職した(計)』の割合は41.9%と、指導・アドバイスがあった人(30.9%)と比べて11.0ポイント高くなった。
また、入社時の労働条件明示方法別にみると、『離職した(計)』の割合は、社内イントラネットなどに掲示された人では40.0%、回収された・口頭で説明された・説明がなかった人では39.7%と、書面で渡された人(31.4%)と比べて高くなった。入社後の研修や指導が行われなかったケースや、書面による労働条件の明示が行われなかったケースでは、入社5年目までの若手社員の離職率が高い傾向にあるようだ。
新卒入社した会社を辞めた理由 1位「仕事が自分に合わない」
卒業後に最初に就職した会社を離職した人(332名)に、会社を辞めた理由を聞いたところ、「仕事が自分に合わない」(40.1%)が最も高く、次いで、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(31.0%)、「賃金の条件がよくなかった」(27.4%)、「会社の将来性がない」(26.2%)となった。
入社後の新入社員研修や先輩・上司からの指導・アドバイスの有無別にみると、「仕事が自分に合わない」(あった38.1%、なかった45.5%)や「人間関係がよくなかった」(あった20.1%、なかった28.4%)や「会社の将来性がない」(あった23.4%、なかった34.1%)では指導・アドバイスがあった人よりなかった人のほうが10ポイント前後高くなった。
入社時の労働条件明示方法別にみると、書面で渡されていない人では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が35.8%で最も高くなった。労働条件を書面で明示されていないケースでは、採用時の説明と実際の労働条件が異なっているためか、労働時間や休日・休暇の条件に不満を感じて離職する人が多い傾向にあるようだ。
2016年の調査結果と比較すると、「人間関係がよくなかった」(2016年33.7%→2022年22.3%)は11.4ポイント下降し、「健康上の理由」(2016年22.2%→2022年15.4%)は6.8ポイント下降した。
また、「結婚、子育てのため」(2016年14.4%→2022年7.8%)は6.6ポイント下降した。働き方改革によって育児に対して理解のある職場が増えたことや待機児童問題の解消が進んだことで、結婚・育児を理由とした離職が減ったのではないだろうか。
※連合調べ
<調査概要>
調査タイトル :入社前後のトラブルに関する調査2022
調査対象 :ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする
大学卒業後に新卒で正社員として就職した全国の入社2年目~5年目の男女
調査期間 :2022年2月28日~3月2日
調査方法 :インターネット調査
調査地域 :全国
有効回答数 :1,000サンプル(性別×卒業時期が均等になるように割付)
出典元:日本労働組合総連合会
構成/こじへい
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