多くの人が老後の自宅生活を望むがその準備をしていない
50代以降の大半の米国人が、老後も自宅で自立した生活を送りたいと思っているものの、そのために何が必要かを考えている人はわずかであるという実態が明らかになった。
米ミシガン大学看護学部のSheria Robinson-Lane氏らが行った調査の結果であり、2022年4月13日に同大学のサイト内にレポートが掲載された。
この調査は、健康的な老化に関する世論調査として、米国の高齢者団体であるAARPの後援により、2022年1~2月にオンラインまたは電話で実施された。
調査対象は、米国内から無作為に抽出された50~80歳の成人2,277人であり、同国国勢調査の人口構成データに合わせて重み付けされ選択されている。有効回答率は68%だった。
調査結果によると10人中約9人(88%)が、歳をとっても家にいることが重要であると回答していた。
一方で多くの人が、老後も安全かつ快適に自宅で暮らすために必要なことについて、ほとんど考えていなかった。
「大多数の中高年者が自宅で老後を暮らしたいと考えているが、人々がそのための生活設計を立てているようには思えない」とRobinson-Lane氏は述べている。
具体的には、自宅が高齢になってからも居住できる構造であると明確に答えられたのは3人に1人(34%)にとどまり、47%はおそらく居住可能と回答し、19%は居住できないと答えた。
高齢になってから機能性が重要になると考えるスペースとして、トイレ・風呂(88%)と寝室(78%)が挙げられた。
ただし、それらの設備の老後対策を整えている人は、わずかだった。ほかにも、ドアの間取りが車椅子の通過に十分と答えたのは約半数(54%)であり、玄関に階段がない、またはスロープがあるのは19%にすぎず、バリアフリーシャワーを備えているのは7%だった。
一人暮らしで転倒したらどうする?
米国の高齢者に関する全国会議(NCOA)のCEOであるRamsey Alwin氏は、上記の調査で質問されていた自宅の構造について、「転倒予防対策の一部だ。転倒はわれわれの大きな懸念事項であり、昨年だけでも転倒による負傷者は300万人を超え、80万人以上が入院を要した」と説明する。
しかし同氏は、「多くの人が自分の加齢の影響を考えていないという事実は、驚くようなことではない」という。
「人々は老後も自宅で過ごすことを望んでいるが、中高年者の多くは毎日の生活に追われており、老後のことを考える余裕がない」とRamsey Alwin氏は話す。
また、米国人は一般的に、加齢という現象を否定しようとする傾向があるとのことだ。それでも同氏は、高齢者か否かにかかわらず、誰もが自宅内に転倒防止対策を施すことを推奨している。
一方、Robinson-Lane氏は、どのように齢を重ねていきたいかを考えたり、自分にとって重要なもののリストを作成することから始めると良いと提案する。
「まず、今の住居が高齢になってからも住み続けたい家かどうかを考えてほしい。住み続けるのに適していないと思うのであれば、新たな住み家を探し始めるべきだ」とアドバイスする。
今回の調査では、高齢者の5人に1人(21%)が、過去5年間に転居したと答えている。転居者の半数以上(52%)は、屋内での移動が楽な住居に移り住んだという。
具体的には、49%はより小さな家に、34%は親戚の家の近くに転居している。Robinson-Lane氏によると、高齢者の住居選びには、寝室やトイレ・風呂が1階にあることが大切なポイントになるという。それらが1階にあれば、転倒リスクの高い階段昇降の機会を減らすことができる。
テクノロジーを役立てる
Robinson-Lane氏はまた、「老後も自宅で暮らしたいのであれば、テクノロジーの知識を身に着けておいた方が良いかもしれない」と語る。
「たとえ電話番号を覚えていなくても、必要な時に支援を求めることができる音声起動デバイスが既に複数販売されており、それらは買い物リストとして活用したり、備忘録としても利用できる」と、同氏はテクノロジーの有用性を強調。
しかし、それらのいわゆる「スマートホームデバイス」を利用している高齢者は半数(49%)であることも、今回の調査から明らかになった。
「高齢者はテクノロジーが苦手だという固定観念があったが、新型コロナのパンデミックはそのような考え方を大きく変えたのではないか」とRobinson-Lane氏は指摘する。
例えば、「パンデミックによる外出規制によって、人々はビデオ通話のような新しいテクノロジーに慣れ親しまざるを得なかった」と話す。
しかしそれでも、「高齢者の生活を支えるために利用可能なテクノロジーが、まだ十分に活用されていない」と同氏は語っている。(HealthDay News 2022年4月13日)
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(参考情報)
Press Release
https://www.healthyagingpoll.org/reports-more/report/older-adults-preparedness-age-place
構成/DIME編集部
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