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【ビジネスパーソンのためのニュースのミカタ】情報を正しく理解するファクトチェックの心得

2022.04.28

最近、フェイクニュースの話題が増えている。また、コロナ禍以降、虚偽情報が蔓延して社会的混乱が起きるインフォデミック(情報感染。information:情報+epidemic:流行病、伝染病の造語)という言葉も耳にする機会も多くなってきた。

 こうしたなかで、情報の事実に力点を置くファクトチェックが注目されつつある。ただし、日々を忙しく過ごすビジネスパーソンの多くは、余計な手間を増やしたり、時間をかけてでもファクトチェックをしたいと思わないかもしれない。いちいちニュースなどを疑っていられないし、手間をかけてチェックしていたらキリがない、というのが本音ではなかろうか。

 そんな方々のために、ここでは、手軽にできるファクトチェックについて考えてみることにした。

 まず、忙しく過ごすビジネスパーソンが手軽に行なえるファクトチェック入門という趣旨を意識し、いきなりだが、結論とも言えるポイントを頭出ししておこう。

1)プラットフォームを知る

新聞、テレビ、雑誌、ラジオの内容がインターネットで配信されるようになり、ニュースサービスやSNSなどの情報が、スマホ画面でフラットに並ぶようになった。とはいえ、ニュースのプラットフォームには、それぞれ特性があることを再認識する。

2)事実に関心を持つ

ニュースなどで扱う情報が事実か否か。これをチェックするのは、意外に困難なことを確認しておきたい。そのうえで、情報に接する。

3)情報の構造を知る

情報(≒ニュース、記事、コンテンツ)の構造を知ることで垣間見えてくることがある。また、タイトルと記事内容が乖離していたり、表現方法などを通じて、発信者の意図が垣間見えてくることがある。

今回は、「3)情報の構造を知る」というテーマでニュースの見方を考えていきたい。

情報を正しく理解するコツは?

「プラットフォームの特性を知り、“石”に躓かない方法とは?」「事実に関心を持つ習慣を身につけることは、ビジネスパーソンには大事なスキル」では、記事で書かれている内容について扱ってきた。今回は、少し視点を変えて、記事の構造に着目をしたい。ポイントは、以下の3つ。

1)いつ、どこの記事か

SNSやニュースサービスは、新しい情報を扱うことがほとんどだが、ウェブサイトでは、古い記事が混在していることもある。よって、その記事がいつか書かれたものかは確認する習慣をつけておきたい。また、どんな運営主体が提供しているものかも大事なポイント。

2)表現が過剰ではないか

興味を惹くタイトルで記事を読み始めたところ、内容との違いが著しかったという経験は少なくないはず。では、なぜ、そうしたタイトルにするのか? そうやって考えてみると、作り手の心理が垣間見えてくる。また、必要以上に過剰な表現が出てきたとき、その記事が事実を伝えようとしているのか、それとも感情に訴えてきているのかを意識する。後者の場合、情報の送り手の立場に都合のよい事実のみで構成されていることもある。

3)その専門家は、信頼できるか

記事を説得的にする際、専門家や有識者の発言が使われる。なかには、有識者の発言のみで構成されるものもある。では、その専門家や有識者は、記事で扱っている内容について、発言をするに足るのか。この点は、あまり考慮されずに濫用されることがある。

専門家や有識者をチェックする方法は?

「いつ」については、上述のとおり、記事の時間を確認するものなので、さほど補足をする必要ないかもしれないが、ニュースサイトで、ランキングや人気の記事などと分類されている記事には、古いものが含まれていたりすることがある。そうしたものを“ニュース”と勘違いして、共有しないように気をつけたい。

「どこの」情報かは、「プラットフォームの特性を知り、“石”に躓かない方法とは?」でも触れた情報提供元と、ほぼ同じ。付け加えると、最近は、企業がニュースサイトを装って情報発信をする手法も増えている。もちろん、有益な情報を提供していることも少なくないが、当然ながら、その企業の何らかの意図を含んだ視点が入っている。ここはニュースを生業にしているところとは一線を画すので、意識しておきたい。

 表現の過剰さについては、挙げていくとキリがないほか、情報提供元の“らしさ”としての表現もある。「ビジネスパーソンが手軽に」ということが大前提なので、深く踏み込むことは避けるが、5大全国紙と呼ばれる朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞(50音順)でも、過剰な表現はあることに触れておく。

 たとえば、ある事件をきっかけに法整備の穴が複数見つかったとする。それを「穴だらけ」と見出しをつけることも可能だが、「複数の穴」「多数の穴」という表現もできる。けれど、「穴だらけ」といわれた方が、対処を急がなければ、という雰囲気が出るだろう。つまり、情報の受け取り手に行動を促せる。ここに情報の送り手の意図を感じさせる。

 もちろん、単純に煽ったほうが注目されるというケースもあるので、そこ意図はないかもしれない。が、受け手である我々が、そうした感覚を身につけておくのは無駄にはならないはずだ。

 話は変わるが、以前に竹中平蔵氏をインタビューした際、ダボス会議に行くと、各国のリーダーたちは必ず自国のメディアの悪口をいうが、日本はその中でもかなり特殊としたうえで、「日本のメディアの最大の特徴は、取材しないで書く(笑)。これはすごいですよ」と苦笑しながら話をしていた(詳しくは、こちらの記事)。

 竹中氏は、誰かが誰かを批判した(≒喧嘩している)など、事件は伝えるが、事実を伝える姿勢が乏しいとも指摘する(詳しくは、こちらの記事)。確かに、私たちはニュースを見るとき、面白い話を求めているかもしれない。その点は、意識しておいても良さそうだ。

 専門家や有識者は、結構やっかいな話。そもそも、そこで起用されている専門家や有識者の発言を評価できる知識があれば、そもそも惑わされることはないが、それがわからないことのほうが多いはず。もし、自分でチェックするならば、記事内のプロフィールなどを参考に、どんな著書や論文などを発表しているか、どんな活動をしているかなどを確認しておきたい。

 参考にしたいのは、その専門家や有識者は、その情報について知ることができるか、そして知り得た情報を正確に教えてくれるかが、ヒュミント(人間から取る情報)の際の原則ということ。これは、外務省元主任分析官で、現在は作家として活動する佐藤優が『国家の罠』(新潮文庫、2007)で触れている。同書には、ソ連崩壊最末期の1991年8月に守旧派のクーデターが起こり、ゴルバチョフ書記長(当時)の生存について世界中が注目したときに、佐藤氏が情報を入手したエピソードが披露されている。


 情報の世界で、ヒュミント(人間からとる情報)の原則は二つである。第一は、情報源がこちら側が関心をもつ情報を知ることができる立場にいるということだ。そして第二に、情報源が自分の得た情報を私に正確に教えてくれるということだ。この場合、ゴルバチョフ氏は外部との連絡を遮断されている。従って、ゴルバチョフ氏の安否について正確な情報をもっているのはクーデターを行っている側だけだ。ゴルバチョフ派、急進民主改革派の情報は憶測か、自己の政治的利害を反映した声明なので、情報としては価値がない。(佐藤優『国家の罠』23ページ)


 この2つの原則は、その専門家や有識者の目利きにも使えるはず。こんなことを参考にすれば、そのニュースの信頼性を窺い知ることができるかもしれない。

 また、その専門家を起用しているのは、その情報提供元であることも、お忘れなく。その信頼性よりも、情報提供元の都合の良いことを、わかりやすく、気さくに話をしてくれる「専門家」が存在するからだ。

ファクトチェックと情報収集術の組み合わせてみては? 

 一部のニュース(その一例)はAIが作る時代だが、そこに人が介在していなくても、必ず視点は存在し、完全に中立的な立場は存在しない、と筆者は考える。とするならば、その視点を意識することで、相手が何を意図しているのかが垣間見えてくる。ファクトチェックは、確認できるファクトに着目し、そこから記事の信頼性を見ていくスタンス。これは、非常に有効なアプローチなので、期待される注目分野だが、時間とスキル、気構えなどが求められる側面が否めない。

 そこに、情報の送り手の視点というものさしを加えることで、そのニュースがビジネスパーソンに役立つか否かが効率よく判断できるようになるはず。いま話題になっているファクトチェックを活用しつつ、従来の情報収集術を組み合わせる。当面は、これがビジネスパーソンにとっての手軽なファクトチェックということになるように思う。

取材・文/橋本保


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