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【ビジネスパーソンのためのニュースのミカタ】事実に関心を持つ習慣を身につけて正しい情報を得る術

2022.04.27

 最近、フェイクニュースの話題が増えている。また、コロナ禍以降、虚偽情報が蔓延して社会的混乱が起きるインフォデミック(情報感染。information:情報+epidemic:流行病、伝染病の造語)という言葉も耳にする機会も多くなってきた。

 こうしたなかで、情報の事実に力点を置くファクトチェックが注目されつつある。ただし、日々を忙しく過ごすビジネスパーソンの多くは、余計な手間を増やしたり、時間をかけてでもファクトチェックをしたいと思わないかもしれない。いちいちニュースなどを疑っていられないし、手間をかけてチェックしていたらキリがない、というのが本音ではなかろうか。

 そんな方々のために、ここでは、手軽にできるファクトチェックについて考えてみることにした。

 まず、忙しく過ごすビジネスパーソンが手軽に行なえるファクトチェック入門という趣旨を意識し、いきなりだが、結論とも言えるポイントを頭出ししておこう。

1)プラットフォームを知る

新聞、テレビ、雑誌、ラジオの内容がインターネットで配信されるようになり、ニュースサービスやSNSなどの情報が、スマホ画面でフラットに並ぶようになった。とはいえ、ニュースのプラットフォームには、それぞれ特性があることを再認識する。

2)事実に関心を持つ

ニュースなどで扱う情報が事実か否か。これをチェックするのは、意外に困難なことを確認しておきたい。そのうえで、情報に接する。

3)情報の構造を知る

情報(≒ニュース、記事、コンテンツ)の構造を知ることで垣間見えてくることがある。また、タイトルと記事内容が乖離していたり、表現方法などを通じて、発信者の意図が垣間見えてくることがある。

今回は、「2)事実に関心を持つ」というテーマでニュースの見方を考えていきたい。

そもそもファクトチェックとは何か?

ファクトチェックとは、ファクトに着目して、記事の信頼性を問う手法だ。『ファクトチェックとは何か』(岩波ブックレット、2017)には、事実を重視する具体例を挙げているので、少し紹介しておこう。

岩波ブックレット
『ファクトチェックとは何か』
立岩 陽一郎/楊井 人文

 以下は、2017年の衆院解散時に安倍首相(当時)が会見で行なった「(消費税率)二%引き上げで五兆円強の税収となります」を例にして、いま話題になっているファクトチェックと、新聞記者などが言うファクトチェックの違いを紹介したもの。ファクトチェックは新聞記者の専売特許とされているが、対象となる事実が異なることを、著者の立岩陽一郎氏は指摘する。


 安倍総理が解散時の会見で語った「(消費税率)二%引き上げで五兆円強の税収となります」という言葉は、新聞、テレビ、通信社の全てで報じられています。ところが、どこも「五兆円強」の数字に疑問を投げかけることはしていません。

 ファクトチェックは新聞記者の専売特許のように語る人がいます。私たちがファクトチェックについて新聞記者に話すと、異口同音に、「ファクトチェックというのは私たち新聞記者にとっては当然のことで、いまさらという感じがします」と言います。では、なぜ新聞記者は、安倍総理の「五兆円強」をそのまま伝えたのでしょうか。

 実は新聞記者の言うファクトチェックと、ここで語られているファクトチェックとは根本的に異なるのです。新聞記者は、安倍総理の発言が発言された通りに報じられているかファクトチェックします。つまり、この場合の事実とは、安倍総理が語った内容のままかどうかを確認するという意味です。安倍総理が「五兆円強」といったのか、あるいは他の数字を口にしたのかということです。(『ファクトチェックとは何か』「おわりに」より)


 いま言われているファクトチェックは、引用した例でいうと、言ったか言わないかの事実を確認するのではなく、発言内容が事実に基づいたものかどうかを問うものであることがわかる。

 そして、多くのメディアの報道が、発言をしたかしないかは確認するが、内容に踏み込んだファクトチェックは行われておらず、そうした状況に警鐘を鳴らす。


 こうした日本のメディアの報道というのは、枚挙にいとまがありません。事件報道の多くが警察、検察の一方的な発表やリークによって新聞、テレビで伝えられ、必ずしも事実とは言えない情報が広がる問題は、これまでも指摘されています。

 ところが、これは裁判になるケース以外では問題にされず、私たちもそれを疑うことなく受け入れています。日本が民主主義の国であることは間違いありません。日本でマスメディアに携わる人に、「あなたは事実を重視しますか?」と尋ねれば、おそらく全ての人がうなずくでしょう。ただ、それは本当に「事実」を重視しているのか、実は表層的なものではないか、そういう疑問さえ感じてしまいます。(前掲書)


 少しメディアに対して厳しい指摘のようにも思えるが、立岩氏が携わるファクトチェック・イニシアティブのパートナーには、スマートニュース、LINE NEWS、Yahoo!JAPAN、Gunosyなどが名前を連ねているほか、「プラットフォームの特性を知り、 “石”に躓かない方法とは?」で紹介したファクトチェック・ナビでは、朝日新聞、産経新聞、中京テレビ、毎日新聞、琉球新報など、大手メディアがファクトチェックした事例を紹介している。

 ちなみに、「(消費税率)二%引き上げで五兆円強の税収となります」については、立岩氏が編集長を務める「InFact(インファクト)」でファクトチェックをしている。興味のある方は、目を通してみてはいかかだろう?

総選挙ファクトチェック 安倍総理が解散理由で語った税収増「5兆円強」は本当か?

 読者のなかには、忙しいビジネスパーソンのために、手軽にできるファクトチェックの入門のはずが、なんか面倒な話になってきた、とお感じになっている方も少なくないだろう。そう、実は、このトピックは、結構面倒で、文字通り“ファクトチェック沼”に沈みかねない。

 とはいえ、一定程度信頼のおける情報提供元のニュースで、手間と時間を短縮しつつも、“石”を意識し、各サービスが取り組むファクトチェックを活用していけば、偽情報を鵜呑みにするようなことは避けられるはず。

数字やグラフに騙されていないか?

「数字はウソをつかない」と言われるが、実際には、誤解を生みやすい数表現はある。たとえば、ある会社の売上が30億円のとき、3,000,000,000円と書くのでは、後者のほうが大きい数字のように見える。また、8等分されたピザの1切れと、4等分されたピザの1切れは、大きさが違う。けれど、何等分されているか前提がなく「ピザ一切れ」と言われても、その大きさはわからない。また、世帯ごとの貯蓄額のように、数の少ないけれど、金額が大きな高貯蓄世帯があるデータの場合、その平均額では実態を把握しにくいので中央値に注目する必要がある。年収数百万円の会社員の中に、年収数億円の人が1人入ったとすると、その集団の平均年収は数千万円になるかもしれない。よって平均値の数字では、その集団の実態を示していないことは容易にわかるだろう。

 これが、グラフになると、さらにやっかいだ。ウィキペディアには、誤解を与える統計グラフという項目があり、実例がいくつも示されている。たとえば、3D化された円グラフでは、奥にあるデータよりも、手前のデータが大きく見える例を示している。また、y軸(縦軸)が0から始まらず、小さな変化を大きく見せるグラフの例など、事実ではあるが、誤解を誘導させる表現があることを紹介している。

出典:Wikipedia 誤解を与える統計グラフ

 試しに、検索エンジンで「グラフ ウソ」というキーワードで検索してみると、身近に触れているメディアで、グラフによるミスリードが行なわれているケースを取り上げた記事を見つけられる。スペイン出身のジャーナリストで、マイアミ大学でビジュアル・ビジュアルジャーナリズムを担当するアルベルト・カイロ氏の『グラフのウソを見破る技術』(ダイヤモンド社、2020)では、数値的証拠を操る数値力だけでなく、画像を読みとる能力である「グラフィカシー」を養うことの大切さも説かれている。

ダイヤモンド社
『グラフのウソを見破る技術』
アルベルト・カイロ 著/ 薮井 真澄 訳

「知識は学校教科書から」が効率よい

 ファクトチェック・イニシアティブの取り組みを知ると、ニュースサービスやニュースサイトなどに含まれる、玉石混交の“石”とは? といった疑問を持つかもしれない。確かに、疑い始めると、キリがない。その一方で、情報収集は手軽に行ないたい--ここでも、やはりバランスが大切ということになるだろう。

 では、バランス感覚を磨くためには、どうするか。その際、小・中・高校までの教科書が役に立つ。教科書に書かれていることは、一定程度の合意が得られている通説が元になっているので、いわゆる“常識”のベースといっても良いし、校正などの作業もインターネットや商業出版物に比べて丁寧に行なわれている。もちろん、その教科書も、批判に晒されることはあるが、それが事実をめぐる話であることは限定的。そして、それについては、事実について議論があることが記述されていることも多い。

 たとえば、池上彰氏は、学校教科書を活用していることを公言している一人。『人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく』(中央公論新社、2020年)で、池上氏はNHKの「週刊こどもニュース」のキャスターを担当していたとき、子どもは何を知っているか(≒どこまで教えられているか)を確認するために教科書を常にチェックしていたこと明かしたうえで、次のように述べている。


 中学校までの教科書の内容を自分のものにしていれば、大変な物知りだ。当時そう思った者です。

 番組を卒業し、いまはフリーランスのジャーナリストとしてテレビでニュースをわかりやすく解説する仕事をしていますが、しばしば「いろんなことを知っていますね」と言われます。実はそのほとんどは中学校の教科書に出ていることなのです。私の知識の多くは中学校までの教科書によって得たものなのです」(前掲書、1ページ~)


 筆者も、池上氏に倣い、教科書に目を通し、取材対象者の話の誤りなどを、何度となく見つけた経験がある。ニュースに触れるときはもちろん、ファクトチェックにも役に立つことは間違いない。

取材・文/橋本保


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