VALORANT Champions Tour JAPAN 公式Twitterより
いま、とある日本eスポーツチームの活躍が全世界のゲームファンを震撼させている。そのチームはこれまで国際試合で一度も勝利したことがなかったが、2022年4月の世界大会で初勝利のみならず、ベスト4まで進出している。日本代表「ZETA DIVISION」の活躍、刮目せよ!
「最弱候補」から「優勝候補」へ
2022年4月、Twitterでハッシュタグ「#ZETAWIN」が世界トレンド1位にランクインした。これはeスポーツチーム「ZETA DIVISION」を応援する際のツイートとして用いられるものだ。
そしていま、日本eスポーツの歴史に残る快挙をこのチームは成し遂げている。
2022年4月にアイスランド・レイキャビクで開催されている「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 - Masters Reykjavík」。eスポーツの大人気タイトル『VAROLANT(※)』の世界大会で、ヨーロッパやアメリカなど世界各地域の予選大会を勝ち抜いた強豪チームが出場。本大会でZETA DIVISIONは日本チーム初となるグループステージを突破し、決勝トーナメントであるプレーオフへ進出。現在、4位タイまで勝ち上がっているのだ。
※Riot Gamesが2020年6月にサービスを開始した対戦型タクティカルFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)。
『VAROLANT』は5対5のチーム戦。攻撃と防衛に分かれ、攻撃側は制限時間以内に相手拠点に爆弾を仕掛けて爆破を狙い、防衛側はそれを阻止する。全25ラウンドで構成され、12ラウンドごとに攻守を交代。先に13ラウンド先取したチームが勝利となる。
(画像は公式HPより)
日本サッカー界の歴史的快挙といえば、1998年のフランスW杯において本戦初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」が挙げられるが、筆者は今回の快挙はそれに匹敵すると思っている。
過去にZETA DIVISION世界大会の出場を経験していながらも、国際試合ではいまだ一度も勝利したことがなかった。今大会での下馬評でも、世界各国でZETA DIVISIONが最弱チームだと予想する人がほとんどだった。
グループステージ初戦の相手は今大会の優勝候補となるアジア最強チーム、韓国代表DRXだった。ここでZETA DIVISIONは1戦目2-13、2戦目3-13と大敗。世界の壁を痛感したが、そこで終わらなかった。つづく2戦目ではイギリスの名門Fnaticを下し、世界大会初勝利を飾った。そして3戦目、ブラジル代表のNinjas in Pyjamas(NIP)に勝利し、日本チーム初となるプレーオフ進出を成し遂げた。1-1で迎えた最終試合では、8-12と大幅リードを許しながらも怒涛の5連勝で逆転勝利した。
ZETA DIVISIONの躍進は止まらない
プレーオフ初戦でドイツ代表G2 Esportsに敗北したものの、次戦のオランダ代表Team Liquidに勝利。そして初戦に大敗したDRXと再び相まみえることとなった。1セット取られたものの、緻密な分析と作戦、そしてこれまでの試合で培った経験とメンタルが功を奏し見事勝利、ベスト4に進出した。
私はZETA DIVISIONのプレーオフ進出をニュースで知り、後追いでNIP戦の配信アーカイブを見返した。日本の実況解説陣は涙を湛え、声を枯らしながら応援し、配信のチャット欄では選手たちへの応援コメントが終始流れ続けていた。そして最初は緊張で堅い面持ちだったものの、試合の中で徐々に自信を身に着け、伸びやかな表情でプレイする選手たちの勇姿。勝利の瞬間は、リアルタイムではないにもかかわらず、思わず目頭が熱くなった。
それ以降、リアルタイムで試合を観戦しているが、PCのモニターでZETA DIVISIONの躍進を見届けているときの気持ちは、サッカーなどで日本代表が世界大会で活躍する姿をテレビで応援しているときと、全く同じものだ。
次戦は2022年4月23日土曜日!
Team Liquidとの試合は日本時間で深夜2時から開始だったにもかかわらず、日本国内からの同時視聴者数は32万人を記録。これだけ多くの人がリアルタイムで熱狂しているのがeスポーツだ。
VAROLANTを含め、日本人が世界の舞台で活躍しているeスポーツタイトルは他にもたくさんある。今回のZETA DIVISIONの活躍をきっかけに、ゲームで世界と戦う日本人がもっと注目され、称賛される世の中になったら幸いだ。
ZETA DIVISIONの次戦は4月23日の土曜日、深夜5時からを予定している。時間に余裕のある方は、ぜひ配信を視聴して彼らを応援してほしい。
今大会中、ZETA DIVISIONの選手たちが勝利する度にメンバー同士で称え合う際に発した「ナイス!」という言葉が世界中のファンの間で流行語化。ついには大会中にその声をサンプリングした楽曲が流れ始めるに至った。
取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務を経て2019年5月より、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド(現ウェルプレイド・ライゼスト)のスポンサードを受け「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動開始。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。
本記事はライアットゲームズが公式承認するものではなく、ライアットゲームズ又はVALORANTの製作・管理に正式に関与したいかなる者の見解・意見に基づくものではありません。VALORANT及びライアットゲームズは、Riot Games, Inc.の商標又は登録商標です。
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