
17万人のビジネスパーソンを調査したところ、1週間の稼働時間のうち15%を資料作成に費やしていることがわかりました。原因のひとつとして考えられるのは、きれいな資料を作ることを目指してしまったり、パワポ(PowerPoint)の機能を覚えることに注力してしまったりと〝手段を目的化してしまう〟ことが多いからでしょう。
以前に行動実験を行なったクライアント企業には、資料作りが得意な「パワポ職人」が何人かいました。マイクロソフトでパワポの責任者だった私より、すてきなパワポが作れる人は多数います。しかし各社で高い評価を得ている〝活躍社員〟の中に「パワポ職人」がいることはほとんどありません。
提出書類の約23%が実は〝忖度資料〟という事実
1.9万人の資料の作成状況を調べた結果、23%ほどのページが上司や顧客に対する〝過剰な気遣い〟で作成されていることがわかりました。補足資料や説明文などがそれに当たり「必要だろう」という憶測で作成されていたのです。
上司側の協力を得て匿名でヒアリングしたところ、そうした〝忖度資料〟のうち、実際には80%以上が使われていませんでした。中にはページをめくられてもいないものも。不要な資料作成に部下が時間を割いていたことを知り、不快に思う上司もいたほどです。
じっくりと時間をかけて入念に作られた資料は〝差し戻し〟になった場合、作る側と見る側の生産性を落とすことにもつながります。作る側としては、最後の最後でダメ出しされ、また作り直すのは極めて非効率です。一方、見る側にとってはダメ出しする時間やエネルギーを奪われることになります。作る側に改善点を提示し、再提出された資料を再び見直す時間も設けなければなりません。
進捗20%で意見を聞く「フィードフォワード」のすすめ
〝忖度資料〟と〝差し戻し〟を減らせるのが「フィードフォワード」です。成果を出し続ける〝活躍社員〟は仕事を受ける際に相手の期待値を入念に確認するとともに、作成途中でチェックポイントを設け、提出相手の意見を資料に取り入れるようにしています。
こうした作成途中のチェックを「進捗20%で提出先から意見を求める」というルールとして定め、39社で行動実験を行ないました。提示相手に途中経過を見てもらい、その段階で意見を聞けば〝忖度資料〟と〝差し戻し〟を減らせるのではないかと考えたからです。
フィードバックは完成後に得るものですから、完成前に意見を聞く行為を「フィードフォワード」としました。こうして実験をニックネームのように名づけると、組織内で浸透しやすくなります。
「フィードフォワード」に関する行動実験の参加者からは「よかれと思ったことが本当によかったのか確認できた」「相手の思考や興味・関心がわかるようになった」との回答が続出しました。想定外だったのは、作る側よりも見る側の満足度が高かったことです。「最初は面倒に思ったものの、資料を見る時間が全体的に短縮できた」「質の高い資料を作るメンバーが増えた」との声が上がりました。
ある物流企業では「フォードフォワード」の実験で〝差し戻し〟が74%も減少。「作り込みすぎる資料の提出が少なくなった」と答えた管理職は約43%いました。
「フィードフォワード」とともに「フィードバック」も重要
資料を提出もしくは説明した後には、相手から感想や改善点などの「フィードバック」をもらいます。行動実験の参加者のうち、約81%が「フィードフォワード」と「フィードバック」の徹底で「資料作成が楽しくなった」と回答。「フィードフォワード」と「フィードバック」によって、次の3つのベネフィットを得られることがわかりました。
(1)無駄なことをやめることで作業時間が減る
(2)提出先の人が持つ期待を満たす可能性が高くなる
(3)資料作成者のモチベーションが上がる
資料の本質的な目的は相手と共鳴し、思いどおりに相手を動かすことです。独りよがりの資料作成から卒業し、短い時間で成果を残す働き方を実践しましょう。
「フィードフォワード」を実行する際、作る側は、自分の作業効率を高めるだけでなく、相手の思いどおりの資料を作成するためという目的を事前に説明しましょう。「来週の会議資料ですが、このように作成を進めています。イメージは合っていますか?」 と聞くことで協力を得られやすくなります。
越川慎司/全員がリモートワーク・複業・週休3日を実践するクロスリバー社の代表取締役。1000名以上がリモートワークをしているキャスター社の執行役員。自著17冊・累計62万部。『最速で結果を出す資料の作り方』(DIMEデジタル新書)が好評発売中。
@DIME公式通販人気ランキング