「熟成ホップ」による脳のパフォーマンス向上やメンタルケアの可能性
ビールの原材料として知られるホップを熟成後、水で成分抽出させ粉末化することで得られるキリン独自の素材「熟成ホップ」。
そんな「熟成ホップ」について、キリンのR&D本部キリン中央研究所はこのほど、1回摂取することで自律神経が活性化し集中力が高まることを、臨床試験で初めて明らかにした。
「熟成ホップ」はヒトの体内にある消化管の苦味センサーを通じて脳腸相関(※1)を活性化し脳機能を改善するという独自のメカニズムが確認されている。今回の臨床試験の成果より、1回の摂取でも「熟成ホップ」による脳のパフォーマンス向上やメンタルケアの可能性が期待される。
※1 ヒトにおいて脳の状態が腸に影響を及ぼし、逆に腸の状態も脳に影響を及ぼす現象
研究背景
超高齢社会を迎えた日本国内では、認知症や加齢に伴う認知機能の低下が社会問題となっている。また昨今は、新型コロナウイルスの流行に伴う急激な社会環境変化により、メンタルヘルスの悪化も問題視されており、脳と心の健康に対するニーズが高まっている。
キリンでは、ビールの原材料として知られ、西洋では薬用ハーブとして長年利用されている「ホップ」に着目し、独自の熟成技術によって脳機能改善と体脂肪低減の両方に役立つ独自素材「熟成ホップ」を開発した。
キリンは、順天堂大学と連携した臨床試験で、「熟成ホップ」を継続的に摂取することで、中高齢者の記憶力や集中力が改善し、不安感が低減することを明らかにした。また、「熟成ホップ」はヒトの体内にある消化管の苦味センサーを通じて、最近注目される脳腸相関を活性化し、脳機能改善や抗うつ作用を示すことを、東京大学や神戸大学との非臨床試験にて報告している。
しかしながら、短期間の摂取による効果や、ヒトの自律神経への作用は検証されていなかったため、今回、健常な男女を対象とし、「熟成ホップ」を1回摂取した場合に、メンタルヘルスを司る自律神経および認知機能へ及ぼす有効性を評価する臨床試験を行った。
研究概要
キリンは慶應義塾大学と連携し、30歳以上64歳以下の健常な男女を対象に、二重盲検ランダム化クロスオーバー比較試験※2を実施し、「熟成ホップ」を1回(熟成ホップ由来苦味成分を35mg)摂取することで、自律神経および認知機能に及ぼす作用を検証した。
「熟成ホップ」もしくはプラセボを摂取する群に無作為に割り付け、1回摂取した後に自律神経活動については心拍測定、認知機能については神経心理テストを用いて評価した。その結果、「熟成ホップ」を1回摂取することで、自律神経の活動レベルと、集中力を評価する認知機能課題のスコアが、プラセボの摂取と比較して統計学的に有意に向上した。
これまでの臨床試験で「熟成ホップ」の“継続的な摂取”により集中力や記憶力といった認知機能の改善が確認されていたが、今回の臨床試験では、「熟成ホップ」は“1回の摂取”でも自律神経活動が活性化し、集中力が高まることを新たに確認した。また、中高齢世代だけでなく、30代から60代といった幅広い年代を対象に、「熟成ホップ」の効果が期待できることも明らかになった。
※2 被験者を無作為に2群に分け、各群に別々の介入を行い評価した後に、各群の介入方法を交換して再度評価する方法で、実施者も被験者もいずれの介入を行っているかがわからないよう工夫された状態で行なう。
出典元:キリンホールディングス株式会社
構成/こじへい