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AIが進化しても一度壊れた街は魔法のように元には戻ることはない

2022.04.21

【連載】もしもAIがいてくれたら

【バックナンバーのリンクはこちら】 
第1回:私、元いじめられっ子の大学副学長です
第47回:自動運転社会が実現すると「宇宙船より自動車のほうが安全」な時代になるのか?

壊れた街は魔法のように簡単には元に戻らない

『ハリー・ポッター』シリーズの原作者である J.K.ローリングが脚本を担当し、『ハリー・ポッターと賢者の石』の約70年前を舞台にした『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第3作目『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が4月8日に公開されたということが話題になっています。

私はまだこの3作目は観ていないのですが、3年が経過して忘れてしまっている1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年公開)から観なおしてみました。映画の後半、魔法使いたちが魔法の杖で次々と破壊された街を修復していくシーンを見た時、公開当時には感じなかった思いを感じました。物語がヨーロッパの街並みのせいか、破壊されたウクライナの街と重なりました。破壊されたウクライナの街は、まさに、魔法でもない限り、なかなか元通りには戻らないと思うと、切なくなりました。

NHKは、何万人もが命を落としたとゼレンスキー大統領が訴える、ウクライナ最大の激戦地マリウポリの街全体の被害状況を明らかにすべく、最新の衛星画像をAIで独自に解析したとのことです。

民間施設を含む街全体に及ぶ破壊の痕跡、専門家が「戦争犯罪の可能性が高い」と指摘する攻撃の実態が明らかになったとのことです。NHKは、専門記者でチームを作り「リモートセンシング」と呼ばれる技術を使って衛星画像の解析を試みています。

衛星運用会社などのリサーチにより、4月3日に撮影されたばかりのマリウポリの広い範囲を捉えた画像を入手するとともに、侵攻前の2021年8月29日と31日の画像も取り寄せ、建物に注目して被害を解析しています。その際、人手で一つ一つ解析することは難しいため、画像解析系AIが用いられたようです。解析手順は以下の通りです。

(1)衛星画像から建物の位置や形を抽出

侵攻前の画像から、畑や公園などを除いた「建物」だけをAIで抽出し、その位置や形などをデータ化します。この作業を侵攻後の画像でも行います。

(2)侵攻前後の建物データを比較

変化が見られた場所を「攻撃で損傷を受けた」としました。

(3)領域ごと変化の割合を色づけ

画像を20メートル四方に区切り、データが変化した場所ごとに色を付けました。

変化した可能性が高い場所ほど色を黄色から赤に変えて表示しています。

その結果、民間施設への被害が当初知られていた以上に大きいことがわかったようです。

ウクライナの被害を3Dで可視化することも行われています。東京大学によると、情報学環の渡邉英徳教授は、情報デザイン技術により、人工衛星の撮影画像をもとにウクライナの街を3Dモデルで可視化しているとのことです。同大のウェブページには、破壊された建物の窓に炎が見えている様子などが掲載されています。

ネット記事やTwitterなどを通じて世界中に拡散されている画像には、詳しい位置情報は示されておらず、ウクライナのどの地点のものなのか正確にはわからないため、配信された衛星画像の詳細な地点をGoogle Earth上で探し出し、自分の目で見て、特定するということを行っているとのことです。特定できたら、画像の縦横比や方位、歪みを調整して実際の場所にぴったり重なるように調整し、デジタル地球儀プラットフォーム「Cesium」にマッピングして公開しているそうです。一般の人が拡散する画像と、衛星画像を組み合わせることで、戦争の実態がよりリアルに可視化できるようになっていると言えます。

こういった技術の進化により、現状を詳細にデジタル化することや、デジタルデータをもとに3Dプリンターなどでモノづくりができるデジタルファブリケーション技術も進化していますが、破壊された街を魔法のように瞬時に修復することはできません。悲惨な事実をリアルに知ることが、今できることとして大切なのかと思いました。

坂本真樹(さかもと・まき)/国立大学法人電気通信大学副学長、同大学情報理工学研究科/人工知能先端研究センター教授。人工知能学会元理事。感性AI株式会社COO。NHKラジオ第一放送『子ども科学電話相談』のAI・ロボット担当として、人工知能などの最新研究とビジネス動向について解説している。オノマトペや五感や感性・感情といった人の言語・心理などについての文系的な現象を、理工系的観点から分析し、人工知能に搭載することが得意。著書に「坂本真樹先生が教える人工知能がほぼほぼわかる本」(オーム社)など。

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