VTuberの活躍はYouTubeにとどまらない。多くの企業が彼ら彼女らの集客力に期待をし、さらに新たなビジネスを生み出す存在として注目している業界もある。2022年のビジネスはVTuberなしでは語れない!
【経済】VTuberが日経平均を動かす時代がやってきた!?
VTuberが日本経済のカンフル剤になるかもしれない。2022年1月、ステーキチェーン『いきなりステーキ!』は女性VTuber・猫又おかゆ(ホロライブ所属)との〝異色コラボ〟を実施し大成功をおさめた。彼女が監修したオリジナルメニューの販売や描き下ろしグッズの配布、店内を〝猫又おかゆ仕様〟に装飾するなど徹底したコラボぶりにファンが殺到。開店前から数百人の大行列ができ、SNSで話題になると同チェーンを運営するペッパーフードサービスの株価は前日比10%高を記録した。
今、VTuberとコラボする企業が後を絶たない。日清食品は2014年に誕生した新ブランド『カレーメシ』のCMに2020年、21年と2度にわたりホロライブのVTuberを起用。コンビニ大手のローソンも21年内にホロライブとのコラボキャンペーンを2度も実施。2度目となる12月にはオリジナルのお菓子や飲料を販売し、売り切れ続出の大ヒットとなった。
エンタメ社会学者でRe entertainment代表取締役の中山淳雄さんは「需要と供給のアンバランスが起こした奇跡でしょう」と分析する。
「VTuberは活動拠点がネット上にあるため、人気に対してまだまだグッズが少ない。そのためコラボ商品などが販売されると、VTuberを応援したい人たちが殺到するため、飛ぶように売れるのでしょう。他のコラボ商品の数倍以上の売り上げになる事例をいくつもみてきました。VTuberとコラボをすると他社が次々と追随するのは、その売り上げの良さを証明していると言えるでしょう」
【テレビ】バラエティー番組では2次元と3次元の境界が曖昧に
彼ら彼女らのタレント性にいち早く着目していた業界がある。
2019年、まだ多くのメディアがVTuberの扱いに手探りの中、テレビ朝日は女性VTuber・電脳少女シロをメインレギュラーに据えた地上波番組『超人女子戦士 ガリベンガーV』の放送を開始した。VTuberに芸人・バイきんぐ小峠英二が容赦ないツッコミをすることで人気番組となっている。
21年には日本テレビもVTuberによる地上波バラエティー番組『プロジェクトV』の放送を開始した。もはやVTuberたちがバラエティータレントとして扱われるのは珍しいことではなくなってきている。
さらに22年には『ルパン三世 PART6』(日本テレビ系)にて、ホロライブ所属の大空スバルが声優として出演。〝キャラクターがアニメキャラクターの声優に起用された〟のである。
テレビ、アニメといったエンタメ業界では、アイドルや芸人、タレントと並んでVTuberという〝枠〟が出来上がりつつあるようだ。
バーチャルエンタメメディア・MoguLiveの堀田隆大さんは次のように予想する。
「現在はVTuberという言葉が浸透し職業名のように取り上げられることも多いですが、将来的にはわざわざVTuberと掲げずとも『バーチャルな姿で活躍するタレント』として、生身のタレントと自然に交流する人も増えるでしょう」
一方で、こうも指摘する。
「3次元と2次元が同じ空間にいることの違和感は大きい。まだ次元をまたいだ共演には絶対的な壁があるといえるでしょう」
【eスポーツ】VTuberがeスポーツ界に殴り込み
VTuberとゲームとの親和性は非常に高い。彼女たちにとってゲーム実況が人気コンテンツというだけでなく、時にはコラボして彼女たちがキャラクターとしてゲームに登場することもある。
さらにはプロゲーマーと遜色ない腕前を持つVTuberも増えてきており、次に期待されるのがプロゲーマーVTuberの誕生だ。
前出の中山さんが言う。
「物理的な接触が必要となるリアルなサッカーや野球の参加は限定的にならざるをえない。しかし競技のステージがデジタル空間であるeスポーツであれば、3次元的な肉体の有無は全く関係ありません。プロがVTuberというアバターを着ることはeスポーツで今後許容されてしかるべきでしょう」
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集客力のあるキャラクターIPとして多くの企業が注目しているだけでなく、アイドルやタレントとしてエンタメ業界からも注目されている〝VTuber〟たち。
「キャラクターとアイドルの良いところを併せ持った新しい存在」ということは彼ら彼女らの魅力だが、それ以上に中山さんが注目しているポイントがあるという。
「これからメタバースでの経済活動も増えてくることが予想されます。そうなった時、すでにアバターであるVTuberにはアドバンテージがあり、彼女たちがこれからの時代を牽引する存在になるのではないでしょうか」
取材・文/峯 亮佑
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