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三重構造で男女の機微と愛憎が描かれたミア・ハンセン=ラブ監督作「ベルイマン島にて」の見どころ

2022.04.23

■連載/Londonトレンド通信

ミア・ハンセン=ラブ監督『ベルイマン島にて』が4月22日公開となる。昨年カンヌでお披露目されたこの映画が、10月のロンドン映画祭で上映された際は「クリエイト」区分だった。

映画の性格から、「カルト」、「ラブ」、「ジャーニー」等々の区分けで上映されるロンドン映画祭で、「クリエイト」は「芸術的な表現とクリエイティブな過程の興奮を祝して」のような説明になっている。

停滞期カップルの間の日常のささいな食い違いの行く末は…

確かにこの映画は、その区分にふさわしい。だが、興味をひかれたのは、もっと下世話な理由だった。

というのも、ミア・ハンセン=ラブ監督の元パートナーはオリヴィエ・アサヤス監督だ。そして、この映画の主人公も監督カップル、それもすでに名を成した男性監督と新人女性監督で、アサヤス監督とハンセン=ラブ監督もそういうカップルだった。

出演者名を見ると、ヴィッキー・クリープスとティム・ロスがカップルらしい。そこにミア・ワシコウスカの名前もある。

さては、カップルの間に若い女性が現れる?と、現実のハンセン=ラブ監督たちが別れた理由を探る気分で観た。

カップル間に若い女性登場の方は早合点、三角関係の話ではなかった。ワシコウスカは、クリス(クリープス)が構想を練る映画の登場人物だった。

それでも、やはり、ハンセン=ラブ監督たちもこうだったかと思わせる箇所が多々あった。

さて、映画の作りからいくと、芯となる監督カップルの物語に、彼らが構想する映画の物語、さらには、カップルが滞在する島にゆかりの深い巨匠イングマール・ベルイマン監督にまつわるあれこれの、三重構造になっている。ベルイマン監督は作品だけでなく、人生にもドラマがあったようで興味深い。

まず映画は監督カップルがスウェーデンのフォーレ島にやってくるところから始まる。

フォーレ島は、ベルイマン監督が多くの作品で撮影地とした島だ。巨匠にあやかり、自分たちも映画の構想を練ろうという計画に、娘を預け、2人で過ごすホリデーも兼ねているらしい。

とはいえ、子ども抜きで熱々の時を過ごすカップルというより、倦怠期のスパイスになればというふうだ。

滞在先であるベルイマン関連の家に着いてすぐ、クリスが自分の仕事場はここ!と、トニー(ロス)に先んじて陣取るのは、離れになっている風車小屋だ。良く言えば、お互いのスペースを尊重する、悪く言えば、すきま風の吹き始めたカップルだ。

かといって、彼らは喧嘩することもない。トニーは穏やかでユーモアがあり優しい。クリスの方も知的で静かな女性だ。会見など公の場で見る限りでは、アサヤス監督も、ハンセン=ラブ監督も、それぞれにそんなイメージだ。

喧嘩せずとも、ほんとうは不満があるのだろうと思わせる場面が、所々ある。

ベルイマン作品やベルイマンその人に対する意見でも、そういうちょっとしたズレを感じさせるのが、いかにも監督カップルらしい。

予想したようなドロドロが楽しめたのは、ワシコウスカが登場してくる、クリスの構想する映画の方だった。再会するかつての恋人たちの話になっている。

それぞれに今は別のパートナーがいるのだが、友人の結婚式で再会した元恋人への想いを、まだ断ち切れていない女性の切なさが沁みる。

そこまでドラマチックなことは起こらない監督カップルの方だが、日常のささいな食い違いのあれこれに、現実のハンセン=ラブ監督の別れを勝手に重ね、別れに向かうカップルとはこういうものかと思う。

有名監督がパートナーなのは、新人監督にとって、ためになりそうだが、そればかりではなさそうなのも、観ているうちにわかってくる。

芸術的な表現とクリエイティブな過程を堪能しつつ、下世話な興味もけっこう満たされた。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。
http://eigauk.com

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