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「賃上げ税制」の効果は?令和4年税制改正の要点をおさらい

2022.04.18

2022年4月1日から税制改正法案が施行された。その改正で最も注目されているのが「賃上げ税制」の拡充だ。

先日、今回の税制改正のポイントについて昨年12月に公表された「令和4年税制改正大綱」をもとに、「MJS税経システム研究所」で顧問を務める税理士の植田卓氏がセミナーで独自に解説した内容を紹介する。

【取材協力】
植田 卓氏
MJS 税経システム研究所 税務システム研究会 顧問/税理士/立命館大学客員教授/植田会計事務所 所長)

【参考】自由民主党・公明党「令和4年度税制改正大綱」令和3年12月10日

令和4年税制改正のポイントとは?

植田氏によると、税制改正の改正内容は、大きく3つに区分できるという。

1.所得税、法人税、消費税、相続税、国税通則法などの租税制度の基本的な構造やそのあり方に関する改正

2.租税特別措置法によって各税制の特例として設けられる政策税制に関する改正

3.納税環境の適正化を目的として設けられる納税環境の整備に関する改正

令和4年度改正では、1に関する改正項目は少なく、2についても令和3年8月に各省庁から出された改正要望に特に目新しいものはなく、令和3年度において期限が切れる特例についての見直しが目立つ程度だという。

ただ、今年度は菅内閣に変わって岸田内閣が立ち上がり、成長と分配の好循環とコロナ後の新しい社会の開拓をコンセプトに「新しい資本主義実現会議」が立ち上げられ、積極的な賃上げを促すため、所得拡大促進税制が抜本的に見直された。

これに対して、3の納税環境の整備については、記帳水準が著しく低い納税者に対して必要経費や損金算入を制限したり、過少申告加算税を加重したりするなどの今までにない大胆な改正が行われた。

賃上げ税制の積極的な改正とその効果

令和4年度税制改正のうち、世間的に最も注目されているのが「賃上げ税制」だ。

「賃上げを積極的に行うとともに、マルチステークホルダーに配慮した経営に取り組む企業に対し、税制上の措置を抜本的に強化する」旨が税制改正大綱には書かれている。

●ポイント1 賃上げ税制 中小企業向けは既存制度を少し見直す程度

植田氏によると、大綱には賃上げ税制について書かれているが、だからと言って新しく制度を作るわけではなく、中小企業向けについては既存の制度を少し見直す程度だという。ただし、岸田内閣の「新しい資本主義」の考えを取り入れたいという部分は表れているという。

「税制上の措置を抜本的に強化する」というのは具体的にどのように行うのか。大綱には下記の記述がある。

「具体的には、継続雇用者の給与等支給額及び教育訓練費を増加させた企業に対し、給与等支給額の増加額の最大30%を控除する措置を設ける。その際、資本金10億円以上かつ常時使用従業員数 1,000 人以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言することを要件とする。

中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除する措置を設ける。」

●ポイント2 賃上げの意味は大企業と中小企業で異なる

大企業向けと中小企業向けで賃上げの意味が異なる。

植田氏によると、賃上げには2通りあるという。それは、賃上げとは「1.従業員一人一人の給料が上がった」という意味なのか、「2.会社全体の給料が上がった」という意味なのかである。

【大企業】

大企業は、従来から「1.従業員一人一人の給料が上がった」という意味の賃上げが行われてきた。しかし、その対象とする従業員は昨年の、令和3年度の税制改正で変更された。

令和3年度改正以前は、賃上げ比較の対象は、「正規の継続雇用者で前年度と今年度でフルに在籍した人同士の給料」だった。そして令和3年度改正では、コロナ禍を受け雇用が冷え込む中、「正規の新規採用を増やさねばならない」課題から、賃上げ比較の対象は「採用されて一年以内の正規雇用者同士の給料」となった。

一方、今回の令和4年度改正では、以前の「正規の継続雇用者で前年度と今年度でフルに在籍した人同士の給料」の計算方法に戻った。今回の賃上げ税制では「マルチステークホルダーに配慮した経営への取組み」を行うということから、やはり一人一人の給料が増えなければならないということになったのだ。

【中小企業】

中小企業の賃上げは「2.会社全体の給料が上がった」の意味である。雇用者全体の、正規も非正規、アルバイトも含めてトータルで増やしてくれればいいということだ。会社全体の給料は、従業員が増えれば増えるので、一人採用するだけで増える。

●ポイント3 今回の控除の措置は大胆と言われるが…

賃上げを行った企業には、法人税が控除される。

先述の通り、大企業については、給与等支給額の増加額の最大30%を控除。資本金10億円以上かつ常時使用従業員数 1,000 人以上の大企業は、要件があり、「マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言する」ことが必要。

中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除する。

植田氏によれば、中小企業への適用要件は従来通りという。雇用者全体の給与総額が、対前年度1.5%以上増加した場合に適用される。つまり、1.5%以上給料が増えれば、その増加額の15%、法人税が控除されるということだ。


1.基本:雇用者全体の給与総額の対前年度 増加額 × 15%
2.賃上げ率による上乗せ:雇用者全体の給与総額が対前年度2.5%以上増加した場合 15%
3.教育訓練費による上乗せ:教育訓練費が対前年度10%以上増加した場合 10%


上乗せ措置もある。2.5%増加させれば、さらに15%控除を上乗せする。また、教育訓練費が対前年度10%以上増加した場合は、10%上乗せする。

「1の15%」+「2の15%」+「3の10%」を合計すれば40%となる。つまり100万円給料を増やすと、40%法人税が下がるということ。これは、国から補助金を受けたのと同じことになる。税額控除は補助金と同じ意味を持っているそうだ。

この控除は過去最高水準であるため、大胆な法改正だと一般的には報道されている。ところが、税理士の立場からすれば、「本当に引けるか?」というところが素朴な疑問だという。

なぜなら、大綱には「控除上限は、法人税額の20%」という記述があるためだ。

40%フルで控除を受けるためには、法人税額が、給与増加額の2倍ないといけないことになる。

例えば、1と2と3すべて実施し、雇用者全体の給与総額を前年度に対して100万円増加させた場合には、控除額は40%の40万円になる。しかし控除の上限は法人税額の20%までなので、40万円を差し引くには法人税額が200万円以上必要となる。法人税額が200万円以上にするには所得金額が約1,150万円以上必要になる。つまり、その年の利益が1,150万円ないと差し引けないということになる。

●所得金額が1,150万円の場合の法人税額の計算(※)
800万円×15%=120万円
350万円×23.2%=81.2万円
計201.2万円

※普通法人で、資本金1億円以下の法人などは、年800万円以下の部分は税率15%で計算。年800万円超の部分は税率23.20%で計算。
参考:国税庁「法人税の税率」

●【参考】賃上げ税制 中小企業の対応について

税理士として、今回の賃上げ税制について、中小企業にはどのようにアドバイスをするだろうか。実際の中小企業を想定して解説してもらった。

「税理士が関与先にアドバイスする際には、実現可能な形で会社の年度初めに具体的に説明する必要があります。具体的な対応策を示さずに『結果を頑張りましょう』というアドバイスは通常、ありません。

中小企業者については、賃上げを以前のように『継続雇用者に対する給与の増加割合』で判定している場合には、『いくら昇給すれば、税額控除がこれだけできる』と、前もって具体的にシミュレーションして説明できました。

しかし、今の制度は『1年間の総額(パートなどの非正規雇用者も含めて)が結果的に何%増加したか』で判定しますので、前もっての対応を具体的にシミュレーションして説明することは不可能といえます。結果的に税額控除が適用できれば『適用できました』と報告している状況です」

中小企業の場合、具体的なシミュレーションはできない状況の中、賃上げを行う必要があるようだが、中々難しい判断となりそうだ。

さらなる詳細は財務省のホームページを参照してほしい。

財務省「税制改正の概要」

取材・文/石原亜香利

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