2022年4月から「年金制度改正法(2020年5月成立)」の制度の適用が開始されました。
今回は、なかでも「確定拠出年金における加入可能要件の見直し」のポイントについて詳しく解説していきます。
「確定拠出年金における加入可能要件の見直し」とは
「確定拠出年金の加入可能要件の見直し」として、大きな改正点は以下の2点です。
1.加入可能年齢の引き上げと、受給開始時期などの選択肢の拡大
2.中小企業向け制度の対象範囲の拡大
以下、それぞれのポイントを解説していきます。
加入可能年齢の引き上げと、受給開始時期などの選択肢の拡大
まず、企業型DCと個人型DC(iDeCo)に加入できる年齢が拡大します。現在の加入可能年齢は企業型DCでは65歳未満、iDeCoでは60歳未満ですが、企業型DCでは70歳未満、iDeCoでは65歳未満まで拡大します。ただし、企業型DCでは、企業によって加入できる年齢などが異なるため、注意しましょう。こちらは2022年5月から施行されます。
出典:厚生労働省ホームページ
あわせて、受給開始時期の選択肢が拡大します。
これまでは、DCの受給開始時期は「60~70歳までの間」でしたが、「60~75歳までの間」になります。こちらは2022年4月から施行となります。
出典:厚生労働省ホームページ
中小企業向け制度の対象範囲の拡大
これまでは、企業型DCに加入している人がiDeCoに加入するには、各企業の労使の合意が必要でした。今後は、合意が不要となり、原則加入できるようになるため、企業型DCに加入している人がiDeCoに加入しやすくなります。こちらは、2022年10月から施行となります。
ただし、以下の通り、掛金の拠出には限度があります。
出典:厚生労働省ホームページ
掛金については、年単位の拠出をすることも選択可能ですが、今回の要件では、各月の拠出限度額の範囲内での各月拠出に限られているので注意しましょう。
また、マッチング拠出を導入している企業の企業型DC加入者は、マッチング拠出とするかiDeCoに加入するかを各自で選択することが可能になります。
高齢化する老後の資金確保にむけて
私たちの老後が昔と比べ格段と長くなったことにより、懸念されるのは老後の資金の確保です。
「60歳で定年し、その後は悠々自適な年金生活を送る」という昔の高齢者像は、今の時代には即していません。
「公的年金だけで生活できるのだろうか」「老後資金が不足したらどうしよう」といった漠然とした不安を解消するひとつの方法として、公的年金制度だけでなく、確定拠出年金制度を利用したいと考えている人も多いでしょう。
公的年金制度の改正にあわせ、今後、確定拠出年金制度に加入できる要件などが、段階的に変更されていきます。
長寿による老後の長期化、定年制度の延長などを背景に、高齢期の就労は今後ますます拡大していくことが予測されます。
「何歳まで働き、何歳から年金を受け取るのか」といった老後の資金計画を、公的年金だけでなく確定拠出年金も含め、より綿密に立てていく必要があります。
老後の資金を確保する方法
今後は、「60歳を超えても元気にできるだけ長く働き、老後資金をできるだけ準備してから年金生活を迎える」ことが老後のスタンダードになっていきます。
高齢期でも公的年金や確定拠出年金で老後の資金を準備することがしやすくなる一方で、なかには「60歳を超えてもまだ仕事をしなくては生活できないのか」とうんざりしてしまう人もいるのではないでしょうか。
また、健康であれば「就業を継続し年金を増やす」といった計画も立てやすくなりますが、健康に不安がある人は「そんなに長生きできるか分からない」と考えてしまう人もいるでしょう。
今回の改正は、おもに高齢期であっても就業などを継続する人の選択肢が広がる内容でしたが、もし「就業を希望せず早期リタイアを希望する」なら、「公的年金」「確定拠出年金」などを高齢期に活用することを考えるだけでは老後資金の準備としては不十分です。
そもそも「確定拠出年金」のための資金が捻出できないなど、「若いうちから家計の問題」にとりくむことも合わせて行うことで、はじめて老後資金を効果的に準備できるのだということを忘れないでほしいものです。
※データは記事執筆時点での情報。公開後に制度や内容が変更される場合がありますので、最新の情報についてはホームページなどでの確認をお願いします。
※情報は万全を期していますが、その内容の完全性・正確性を保証するものではありません。
文/家計簿・家計管理アドバイザー あき
著書に「1日1行書くだけでお金が貯まる! 「ズボラ家計簿」練習帖(講談社の実用BOOK)」「スマホでできる あきの新ズボラ家計簿(秀和システム)」他