街中で見かけることがぐっと増えた、ブルーのデリバリーバッグ。2020年3月に日本に上陸した、フィンランド発のデリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」の配達パートナーが持つものだ。
デリバリーサービスと聴くと、Uber EATSに代表されるフードデリバリーをイメージする人が多いだろう。「Wolt」の最大の特徴はフードデリバリー以外に、食料品や日用品、化粧品などの小売り商品を、注文から30分程度で届けてくれる「Qコマース(即時配達)」を掲げている点にある。Qコマースとは「クイックコマース」の略語だ。
「Wolt」を運営するるWolt Japan株式会社と、配達専用スーパー「Wolt Market」を展開するWolt Market Japan株式会社が「Wolt Qコマース戦略説明会」開催し、今後のビジネス戦略の説明を行った。
業界最安値の配送料かつ安全なお届けを、効率化で実現
最初にビデオメッセージに登場したWolt Japan株式会社 代表 野地春菜さんが、「Wolt」のサービス詳細やや新規の取り組みについて発表した。
「Wolt」の特徴は世界最高の顧客体験「おもてなしデリバシー」の提供にある。特徴的なのが品揃えで、フードデリバリーでは、地元の名店から全国チェーン店まで、幅広い商品ラインアップを提供ている。
フードデリバリー以外の食料品、日用品の配送では、全国でコンビニストアやドラッグストア、百貨店、スーパーマーケットなど、さまざまな店舗とパートナーシップを締結し、商品の充実を図っている。
また、高い配送効率を実現することで、業界最安値の配達料金、全国50円からという設定が可能になった。ちなみにい「Wolt」の配達料は配達元から配達先の直線距離で価格が設定されている。
最後に、配達パートナーの強固なサポート体制や、適正テストに合格した配達パートナーのみが配達を行い、専属スタッフが商品の到着までモニタリングを実施することで、安心と安全性を高めている。
新たな取り組みとして発表されたのが「Wolt Drive」という法人向け即時配送プラットフォーム。「Wolt」に掲載する必要はなく、自社WEBサイトからの受注を可能にするものだ。連携方法はふたつあり、「Drive UI」(Wolt Driveの専用管理ポータル)を利用してWEB上から配送サービスをWoltに依頼するか、API連携による「Drive API」を利用すると、より企業のオウンドサイトとシームレスな連携が可能になる。
企業は自社ECではどうしても配送までの時間がかかるため、「今すぐ必要」というニーズに対し、ローコストで応えることができる。
一方、「Wolt」にとっても法人と連携することで、配送パートナーの安定的な収入確保に繋がる。
コストコ品も薬も届けて前年比15倍のGMVを狙う
Wolt Japan株式会社 リテール事業本部長 髙木慶太さんからは、「Wolt」のリテール事業、つまりスーパーやドラッグストアなどの小売業者から消費者に商品をお届けする事業について、説明があった。
「ポケットの中のショッピングモール」を目指している「Wolt」にとって、あらゆるものが30分で届くことは、創業者の起業時からのビジョンだ。フードデリバリーはあくまでもエントランスポイントにすぎない、と強調した。
コストコとも連携し、非会員でも車がなくても頼めたり、ドラッグストアで医薬品の注文も可能だ。
※コストコは専用のオペレーションを組んでいて、シャトル運行をするような形のため、30分ではなく90~120分などかかる。
意外なことに、配送パートナーは自転車だけでなく、原付や車両も使用する。北海道に関しては、90%以上が車両による配達だとか。
「Wolt」の顧客や動向の特徴としては、30代の子育て世代やDINKSの家庭に多く利用されている傾向だ。
なんと「Wolt」を経由したスーパーマーケットの一番の売れ筋商品は「もやし」だとか。わざわざ宅配でもやしを買う必要ある?と不思議にも感じるが、最低注文金額が700円からのため、注文金額の調整に使われたり、あると便利な食材なので「とりあえず買っておくか」という人が多いとのこと。
Qコマースと競合しそうなのがネットスーパーだが、実はそうでもない。ネットスーパーは実店舗の顧客の囲い込み施策であることが多く、年齢層も少し高めだったり、スマートフォンよりパソコンのブラウザでの注文が多く、重いものを運んでもらうために使うなどの傾向があり、意外とサービス同士が競合することはないのだそうだ。
これに関しては、後ほど行われたトークセッションに登壇した、イオン九州株式会社 コーポレートトランスフォーメーション(CX)推進本部 デジタル推進部 部長 板木伸也さんも同意。
イオン九州ではネットスーパーの運営もしているが、「Wolt」との取り組みで生鮮食品も始めたところ、受注件数と単価が上がってきた。ネットスーパーほど商品数は揃っていなくても、手軽に「すぐ買いたい」という需要があることを知ったのだとか。
「Wolt」はリテール事業のGMV(流通取引総額)を、2022年は2021年の15倍に設定。2022年を「Qコマース元年」と定め、ナンバーワンを狙う。
「ダークストア」の分野でも22年中に全国拡大を狙う
次に登壇したのは、Wolt Japan株式会社 エクスパンションマネージャー 福井優貴さんだ。新規事業を立ち上げ責任者で、自社で運営する配達専門スーパー「Wolt Market」を、昨年に札幌からスタートし、現在は8拠点を構える、
「Wolt Market」はいわゆる「ダークストア」にあたり、スーパーのように食料品や日用品がずらりと並ぶが、一般客がそこで直接ショッピングをすることはできない。配達拠点という位置付けだ。
札幌の「Wolt Market」では、スープカレーや餃子、北海道日本ハムファイターズのグッズなど地域色に合わせたラインアップが自慢だ。
降雪地域からは特に利用が多いため、22年初夏には東北、22年後半には全国に拡大予定だ。
左から配達パートナー、Wolt Japan株式会社 髙木慶太さん、福井優貴さん
コロナ禍をきっかけに「宅配」に初めて挑戦した人も多いだろう。登壇した流通アナリストの渡辺広明さんは「日本人はいつでもどこでも、すぐコンビニで買えることに慣れているので、すぐ手に入れられるQコマースは、とても向いているサービス」と今年は本格的に「Qコマース元年」になりそうだと見ている。
必要なときにすぐ注文し30分以内で届くなら、隙間時間で買い物を終わらせることができ、スケジュールも立てやすい。仕事に子育てに忙しい家庭にはピッタリの「Qコマース」。
確かに、風邪をひいて薬を買いにいくのも難しいときは、ドラッグストアから薬の配送をオーダーし、ギフトを買い忘れた!なんていうときは、「Wolt」と提携しているフレッシュハンドメイドコスメブランド「LUSH」のギフトの定番・バスボムを取り寄せたり…など、いろいろな困ったシーンをも解決してくれる。今年はさらに、水色のロゴを目にする日が増えそうだ。
Wolt
https://wolt.com/
取材・文/安念美和子