原材料価格の高騰・不足が続くなか企業を取り巻く環境は、急激に進む円安が輸入物価を一段と高め、仕入コストの押し上げに拍車をかけ、一層厳しさを増している。
円相場は2022年3月28日に一時6年7か月ぶりに1ドル125円台を付け、以降121~124円台で推移しながら2週間後の4月11日に再び125円台となった。
こうした中、帝国データバンクが4月12日、昨今の円安に対する企業の対応状況についてアンケートを行ったので、その結果を紹介する。
企業の56.5%で円安対策を実施
昨今の為替相場は1ドル125円台となり、急激な円安が進行している。そのようななか、自社の円安対策について尋ねたところ、円安に関して「対策を行っている」企業は56.5%となった。また、業界別にみると、『製造』(68.0%)、『運輸・倉庫』(64.9%)で6割を超える企業で円安への対策を実施していた。他方、「特に何もしていない」企業は43.5%となっている。
円安に対する対応策、3割を超える企業で販売価格への転嫁を実施
円安に対する具体的な対応策について尋ねたところ、「原材料やエネルギーコスト上昇分の販売価格への転嫁」(31.7%)が3割台でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「燃料費等の節約」(24.2%)や「固定費削減」(17.4%)、「仕入先・方法の変更」(8.9%)、「既存の仕入価格の変更」(7.5%)が上位に並んでいる。
特に、製造業を中心に円安による仕入上昇分を販売価格へ転嫁しているケースが多く聞かれ、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(56.8%)や「飲食料品・飼料製造」(52.3%)、「化学品製造」(50.0%)などでは5割を超える企業で転嫁を実施していた。
対策を行っている企業からは、以下のような意見が寄せられている。
・円安については以前から危惧されていたため販売価格を見越して設定している。しかし設定していても利益が薄くなってしまうため、今後は経費削減と人員を最小にしてまわしていこうと思う(衣服身辺雑貨卸売、東京都)
・やむを得ず製品価格の値上げを行ったが、購買意欲を下げないか懸念している(菓子製造小売、石川県)
・輸入品については、運賃も高騰しているためルートの精査も行っている(精密機械器具卸売、東京都)
・自社は海外顧客を多く抱えていることから、円安は売上増、利益増に繋がる。さらなる拡大で海外顧客比率を上げ、利益増を図りたいと思っている(専門サービス、神奈川県)
一方で、特に何もしていない企業からは、以下のような意見が寄せられている。
・コスト管理と受注計画について、ある程度予測出来ているため、特段対応する必要はないと考えている(機械器具設置工事、栃木県)
・余りにも急な円安のため、「何もしていない」のではなく、何も出来ていないのが正直なところである(医療用計測器製造、長野県)
・輸出・輸入の両方あるが、ビジネス的に輸出超過であり、円安は利益拡大に繋がる。そのため、静観している(環式中間物等製造、京都府)
本アンケートの結果、企業の半数超で急激に進む円安に対し対応策を行っていることが明らかになった。とりわけ3割の企業でコストの上昇分に対して販売価格への転嫁を行っていた。
新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ情勢にともなう原材料価格の高騰・不足が続くなか、急激な円安による仕入コストの上昇は二重の痛手として多くの企業に悪影響を与えている。また、原材料などの仕入れコスト関連だけでなく、燃料や電力などに直結するエネルギーコストの上昇は、直接海外との取引きを行っていない企業にとっても大きな痛手となる。
政府には、急速に進行した円安に対し影響を受けている企業に向け、早急な対策が求められている。
出典元:帝国データバンク
構成/こじへい