少しでも不安に思ったら、消費生活センター等に相談を
近年、恋人探しの手段として一般的になってきた出会い系サイトやマッチングアプリ。アプリをインストールするだけで気軽に使えることから急速に普及してきているが、同時にトラブルも起きているという。
そこで独立行政法人国民生活センターは、出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資等に関する詐欺トラブルであるロマンス投資詐欺を防ぐため、消費者への注意喚起を行ったので、詳しくお伝えしよう。
「出会い系サイトやマッチングアプリ等で出会い、恋愛感情を持った相手から、実態のわからない投資等の海外サイトを紹介され投資したが、出金できなくなった」等の相談が多数寄せられている。(図1)
また、2020年度と2021年度を比較すると、契約当事者のうち女性が占める割合が増加しており(図2)、決済手段別にみると、暗号資産(仮想通貨)や銀行振り込みが用いられるケースが多く見られることが分かった。
国民生活センター越境消費者センター(CCJ*)では、2021年2月にも出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺について注意喚起を行ったが、増え続けるこのトラブルは投資等のサイトを運営する事業者の実態をつかむことが難しく、被害回復は困難であることから、改めてトラブルの未然防止、拡大防止の観点から消費者に注意を呼び掛けると共に、関係機関へ情報提供を行っている。
*CCJ:Cross-border Consumer center Japan の略
図1:年度別相談件数:2018年度は12件(うち投資等に関する相談は2件)、2019年度は25件(うち投資等に関する相談は5件)、2020年度は109件(うち投資等に関する相談は84件)、2021年度は12月31日までで187件(うち投資等に関する相談は170件)。
図2.CCJにみる、出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとした投資等に関する相談における相談者の男女別割合
主な相談事例
事例1:投資金を個人名義の銀行口座に振り込み、利益を出金しようとすると、所得税を支払うように要求された
マッチングアプリで連絡を取り始めた男性から、暗号資産(仮想通貨)取引でもうけさせてあげると誘われ、指示された英語表記の投資サイトに口座を作った。
やり取りは無料会話アプリで行った。初めは、少額を入れると利益が出て、銀行口座に引き出せた。このためさらに、消費者金融から投資金を借り入れ、複数回に分けて毎回別の個人名義の銀行口座に投資金を振り込んだ。
取引後、利益を投資サイトの口座から自分の銀行口座に振り込もうとすると、サイトで得た利益約1400万円相当に対し19%の個人所得税を送金するよう投資サイトから連絡があった。期限内に納付しない場合、毎日、滞納金が追加されるとも連絡があった。(2021年11月受付 20歳代 女性)
事例2:投資金を出金するための手数料等を支払ったが出金できない
マッチングアプリで知り合った自称シンガポール人女性と、無料会話アプリでやり取りしていると、ニューヨークの取引所だというアプリで投資をするように勧誘された。暗号資産で20万円取引したところ、利益が出てアプリの口座から出金できた。
その後も、女性からの勧めで投資した。アプリから資金を国内暗号資産交換業者に送付しようとしたところ、アプリの運営事業者から「マネーロンダリングの嫌疑があるため、納入保証金を支払う必要がある」と連絡があった。
さらに「マネーロンダリングに使われたため口座が凍結された。口座の凍結解除金が必要」「所得税」「手数料」などさまざまな名目で、次々に、合計約4000万円を請求され、一部支払ったが、結局出金できなかった。また、「払わなければ法的責任を追及される」等とも言われた。女性とは音信不通になり、アプリにもログインできなくなった。(2021年10月受付 30歳代 男性)
事例3:2人の将来のためと勧誘され投資したが、出金しようとすると保証金を要求された
マッチングアプリで自称韓国人経営者、ファッションブランドでVIP待遇を受けているという男性と出会った。男性がアプリを退会し、無料会話アプリでやり取りする中で、「Baby」「妻」と呼ばれるようになった。
将来のため、紹介する投資サイトで投資するよう何日か説得され続け、断り切れず投資した。少額を投資したところ利益が出て出金できた。元金が多ければもうけも多いと説得され、銀行や消費者金融から借り入れて、合計約500万円投資した。
出金しようとしたところ、利益を含めた総資産の15%(180万円)を保証金としてさらに支払う必要があると言われたため、50万円をさらに借り入れた。残りの130万円についてマッチング相手に相談していたところ、連絡が途絶えた。(2021年11月受付 30歳代 女性)
トラブルの特徴、手口
ロマンス投資詐欺では、以下1~8の流れで財産的な被害が発生している。少しでも怪しいと思ったら次のステップに進まず、早い段階で消費者ホットライン:「188(いやや!)」番や周囲に相談しよう。
出会い
1. 出会い系サイトやマッチングアプリ等でマッチングが成立。
勧誘
2. 実際に会う前に、出会い系サイトやマッチングアプリ等以外でのサービスで
やり取りしないかと持ち掛けられる。
3. マッチングの相手から、投資サイトを案内され、投資を勧められる。
投資
4. マッチングの相手から、投資用資金の送金を指示される。
5. 初めは少額からの投資を勧められ、投資サイト上では利益が出る。
6. マッチングの相手から、さらに高額の投資をするよう勧められ、送金する。
7. 出金しようとすると、さまざまな名目で送金を要求され、結局出金できない。
8. マッチングの相手、投資サイト運営事業者と連絡がとれなくなり、返金されない。
相談事例から見た問題点とアドバイス
1.出会い系サイトやマッチングアプリ等で出会った相手の指示で投資するのはやめよう!
2. 出会い系サイトやマッチングアプリ等は、ルールに従って利用しよう!
出会い系サイトやマッチングアプリ等を利用する際は、事前に規約や注意事項をよく読み、違反する行為や疑わしい行為を持ち掛けてくる相手とはやり取りを行わないようにしよう。また、そうした行為を受けた場合は、サイトやアプリ運営会社に報告するといい。
もしトラブルに遭ってしまった場合は
トラブルに遭ってしまった、または少しでも不安に思うことがある場合は、すぐに居住地域の消費生活センター等に相談しよう。
海外事業者とのトラブルについては、国民生活センター越境消費者センター(CCJ)でも相談を受け付けている。
*消費者ホットライン:「188(いやや!)」番
市町村や都道府県の消費生活センター等を案内する全国共通の3桁の電話番号。
*国民生活センター越境消費者センター(CCJ)
相談はウェブフォームで受け付けている。https://www.ccj.kokusen.go.jp/
関連情報:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220303_2.html
構成/Ara