アップルの「AirPods Pro」やソニーの「WF-1000XM4」といったように、強力なノイズキャンセリング機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンは、3万円を超えることも珍しくありません。
しかし近年は、1万円前後の“準ハイエンド”ともいえる価格帯のイヤホンにも、ノイズキャンセリング機能を搭載するモデルが多く登場しています。ノイズの除去レベルはまちまちですが、製品選びの選択肢が増え、自分に合ったモデルを選ぶのが難しくなってきているのも事実でしょう。
そんな中、ハーマンインターナショナルは2022年4月1日に「JBL Live PRO 2」を発売。直販価格1万7600円の完全ワイヤレスイヤホンで、7段階に調節できる強力なノイズキャンセリング性能を有しています。
本記事では、実際にJBL Live Pro 2を試して分かった、使用感や装着感、音質について紹介していきます。ノイズキャンセリング機能に加え、カスタマイズ力に優れた専用アプリも魅力なので、ぜひ製品選びの参考にしてみてください。
デザイン・装着感
まずは、イヤホン本体や充電ケースのデザインについて。イヤホン本体はハウジング部に棒が付いたショートスティック型を採用。ぱっと見た印象は、AirPods Proに近いかもしれません。
サウンドチューブ(音筒)とイヤホン本体には、JBLが開発した楕円形の「デュアル・オーバルシェイプデザイン」を採用。シンプルですっきりした印象を受けるデザインは、耳のくぼみにすっぽりとはまり、カナル型らしい高い密閉感があります。耳の穴が小さい人だと、若干圧迫感を覚えるかもしれませんが、3サイズのイヤーチップが同梱されているので、付け替えてからの使用がおすすめです。
イヤーピース3サイズ(1つは本体装着済み)と充電ケーブルが同梱される
本体側面はタッチ操作に対応しており、曲送りや再生・停止の操作が可能です。声の操作でGoogleアシスタントやアレクサの起動もできる(Androidスマートフォンとの接続時のみ)ので、ハンズフリーでさまざまな操作を行えます。
イヤホン本体はIPX5規格の防水性能を有しており、汗や雨による故障の心配が少ないのも特徴。今回は試していませんが、水洗いもできるほどの耐水力があるとのことなので、汚れが気になる人にもおすすめです。
充電ケースもすっきりとしたコンパクトなデザインを採用しており、比較的薄型になっています。蓋にマグネットが入っているのか、少し力を入れると“パカっ”と開くのが心地よく、何度も開閉したくなります。
バッテリーはイヤホン単体で約10時間、ケース併用で最大40時間(ノイズキャンセリングOFF時)の再生が可能で、完全ワイヤレスイヤホンとしてはかなりのロングバッテリーといえるでしょう。15分の充電で約4時間の再生が可能となる、急速充電にも対応しています。また、充電ケースはQi規格でのワイヤレス充電も可能です。
音質・ノイズキャンセリング性能
音質としては、ボーカルの息使いまで聞こえてくる明瞭さが特徴です。音の定位がはっきりと感じられる立体感も魅力なので、複数の楽器で音作りをしているバンドミュージックやクラシック音楽を頻繁に再生する人におすすめです。
低音域、高音域もしっかりと鳴ってはいますが、身体の芯に響くような低音や、耳を包み込むような特徴的な高音といった特性はあまり感じず、あくまでフラットな印象。
ただし、詳しくは後述しますが、アプリを使ってイコライザーを自由にいじれるのも特徴。大きくしたい音域を、ある程度自由に調節できるので、このイヤホン1つだけで、複数のイヤホンを使用しているかのような充足感が味わえます。
本製品の大きな特徴の1つが、7段階に調節可能なノイズキャンセリング性能。装着した瞬間に、周囲のノイズが除去されていることがわかるほどで、エアコンの動作音などは全く聞こえないレベルです。
今回は、移動中や仕事中といったシーンで本製品を着用していますが、自分のタイピング音なども全く気になりません。電車の騒音もしっかりと除去できるので、移動時も音楽に集中したいという人にピッタリです。
また、装着中に周囲の音を取り込む「アンビエントアウェア」モードに加え、より人の声を聞き取りやすくする「トークスルー」モードも搭載。特にトークスルーモードでは、音楽の音量を抑えながら、周囲の話し声をしっかりとキャッチできるので、会計時なども快適。ノイズキャンセリングモードで使用していても、片側を外した時に、自動的にアンビエントアウェアモードになるのも便利です。
アプリ
本製品は、「JBL Headphonesアプリ」と接続することで、簡単にさまざまな機能が楽しめます。個人的に最も気に入っているのは、このアプリの使い勝手と多機能さです。
スマートフォンと本製品を初めてペアリングした際には、アプリのインストールを案内するポップアップが表示されます。自分でアプリを検索する手間が省けているのは好印象です。
また、アプリを起動し、初めてJBL Live PRO 2を登録した場合には、フィット感、外耳道のテストが案内されます。フィット感はその名の通り耳にしっかりとイヤホンがはまっているかのテストで、装着感の安定に加え、密閉感を高め周囲の音をより聞こえにくくする機能があると考えられます。
外耳道のテストは、外耳道の形状をスキャンして、ノイズキャンセリングの補正を行うという内容。テストはノイズがある環境で数秒間イヤホンを装着しているだけで済み、自動的にノイズキャンセリングのプロファイルを作成してくれます。
いずれも、本製品を快適に使用し、特徴を最大限引き出すためのテストです。全行程を足しても数分の作業なので、購入時にはアプリをインストールし、テストしておくのがおすすめです。
また、JBL Headphonesアプリでは、細かくイコライザーの調節ができるのもポイント。「フラットな印象」の音質と紹介しましたが、低音重視・高音重視など、ある程度自分好みに調節できるのが魅力で、「JAZZ」「BASS」といったプリセットも用意されているので、音楽にあまり詳しくない人でも、音質の変化が楽しめるようになっています。
そのほか、音声案内の言語を変更できたり、ノイズキャンセリングのレベル調節、本体タッチ時の操作設定、「オーディオモード」「ビデオモード」の切り替えなど、あらゆる設定がアプリ内で完結できるようになっています。イヤホンのバッテリー残量も一目で確認できるなど、完成度の高いアプリになっています。
1つのイヤホン、1つのアプリで複数のイヤホンを使っているような満足感が得られる「JBL Live PRO 2」
JBL Live PRO 2は、高レベルのノイズキャンセリング機能に加え、優秀なバッテリー性能、専用アプリ「JBL Headphones」でのカスタマイズ力が魅力的な製品。
アプリでのイコライザー調節や、7段階に調節できるノイズキャンセリング機能をうまく使いこなせば、この製品だけで複数のイヤホンを使っているかのようなカスタマイズが可能。1万7600円という販売価格は、安すぎるとも感じられます。
音質やノイズキャンセリングレベルのカスタマイズは、アプリから簡単に行えるので、「あまり音楽に詳しくない」「煩雑な操作を行いたくない」という人にもおすすめ。これまで数千円から1万円台前半のワイヤレスイヤホンを使ってきたという人にも、ちょっとした贅沢として手に取ってほしい製品です。
【ジャッジメント】
デザイン・質感 ★★★★
装着感 ★★★★
機能 ★★★★★
音質 ★★★★
アプリ ★★★★★
※採点は各項目5点満点で判定
取材・文/佐藤文彦