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【深層心理の謎】過度な期待と思い込みによって実際の出来事の順番が変わって認識されてしまうのはなぜ?

2022.04.13

 現場で目撃していれば、打った瞬間にホームランであることがわかるのだろう。打球がフェンスを越える前に多くの観客がホームランを祝い、そして実際にボールは客席に吸い込まれていった――。

信号の順番について考えながら小滝橋通りを歩く

 今回のアカデミー賞では日本映画も話題になり、今後多くの人々が各種の受賞作を鑑賞するだろう。

 映画作品のネット配信サービスなども充実している昨今、以前よりも“受け身”で映画を観ることが増えたような気がしてならない。自発的に新作を映画館へ観に行くこともめっきり少なくなり、賞を受賞した作品やかつての話題作などを、ネット配信でとりあえず観ておこうかという視聴スタイルになってしまっている。こうした“受け身”の映画観賞ばかりでは、よもや映画ファンと自認できそうもない。

 新宿区某所からの帰路、市ヶ谷から乗ったJR中央線を大久保を降りた。北口を出て大久保通りを左に進んでしばらくすると小滝橋通りと交わる交差点までやってくる。

 だいぶ日が長くなっていて午後6時を過ぎてもまだ薄明るい。交差点を右折して小滝橋通りを北上してみたい。日常生活の中のちょっとした散歩である。どこかで何か食べて帰ってもいいのだろう。

 映画賞受賞という“後知恵”に影響されてその映画を観たのではなく、新作公開後に自らの意思で選んでその映画を観て高評価していたのだとすれば、時系列に沿ったリアルタイムのプロセスであったことになり、自他共に納得できるというものだ。つまりそれは“後知恵”でははないのだ。

 小滝橋通りを進む。JRの高架陸橋を潜り抜けて少し歩くと、左手に東京都の中央卸売市場のひとつである「淀橋市場」の広い敷地が見えてきた。市場の直前で信号待ちをする。言うまでもないが歩道用の信号は赤と青しかないが、車道の信号には青と赤の間に黄信号がある。そして点灯は青、黄、赤の順番で繰り返されている。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 信号待ちをしている歩行者の中には、まだ青になっていないのに歩き出してしまう者がたまにいるが、それも赤の次には必ず青になるからゆえの“フライング”なのだろう。とすれば本当に信号の色の意味を理解しているのかどうかを試すためにも、時にはランダムに点灯させてみたらどうなるのかと思ってみたりもする。

 が、もしも信号の順番が変わってみなければわからないということになれば、特に車道では大パニックになりそうだ。歩道の信号では“フライング”からの信号無視が急増しそうである。

 やはり青の次に必ず黄色になり、その次に必ず赤になると決まっているからこそ、信号は機能しているのだ。その意味でも我々にとって時系列の順番に従うことは、重要なことなのだともいえる。

思い込みと期待が実際の“順番”を入れ替えてしまう

 市場の広い出入口の脇を通り過ぎる。もう夕方ということもあり、車両の出入りはほとんどないようだ。とはいってもゲートの脇には警備員の方が立っている。いつ大型車両が出入りするかわからない以上は、交通誘導が必要であることは確かだ。信号に加えて交通誘導も円滑な交通のためにも重要である。

 通りをさらに進む。市場の施設を抜けると車道には再び信号があるが、歩道側は横断歩道のみで信号はない。周囲に気を配りながら横断歩道を渡る。

 赤信号を待つドライバーは次に青に変わることを確信して発進の準備をしているわけだが、たとえばもしも赤の次に黄色信号が僅かばかりでも灯ったとしたらドライバーはどう感じるのだろうか。最新の研究では、黄信号が灯ったのは見間違いであって、あくまでも信号は順番通りに変わっていたと思い込む傾向があることを報告している。思い込んでいる順番と実際の順番が違った際には、我々の知覚は思い込み通りになるように修正さえするというのである。


 知覚の目標は、感覚刺激の最も妥当な源を推測することです。ただし、時間的順序の単純な感覚知覚は感覚信号が到着する順序からイベントの順序を一律に決定できるため、推論を必要としないように見えます。

 ここでは、この直感に疑問を投げかける新しい知覚的錯覚を示します。

 成人の実験参加者は、因果関係の原則に沿って、通常ABCとして記憶されている単純な3項目のシーケンスにおいて、(順番を変えた)ACBを見せられました。

 イベントBとCが発生した時刻を示すように求められた場合、十分な注意と繰り返しの視聴にもかかわらず、主観的な同時性のポイントがシフトし、想定される原因Bが早く現れ、想定される効果Cが遅くなりました。

※「Queen's University Belfast」より引用


 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンをはじめとする合同研究チームが2022年1月に「Psychological Science」で発表した研究では、我々の期待と思い込みによって実際の出来事の順番が変わって認識されることを実験で明らかにしている。

 たとえばビリヤードでは最初に当てたポールが別のボールに当たることを見込んでプレイを組み立てたりするが、自分が打った球Aが球Bに当たり、転がりはじめた球Bが球Cに当たり、球Cが転がってポケットに落ちるというようなことが起こる。

 ポールがA、B、Cと転がりはじめる“順番”は我々にとって自明の理であり、当然のことであるが、研究チームは球Bよりもぶつかってもいない球Cが僅かに先に転がりはじめる現象(A、C、B)を作り上げて実験参加者に繰り返し見せたのである。

 その後、参加者はBとCが動き始めたタイミングを示すように求められたのだが、 実際の移動開始順序(A、C、B)ではなく、BがCの前に移動し始めたと報告する強い傾向があることが突き止められたのだ。ポールがA、B、Cと順番に転がるはずであるという思い込みと期待が、現実の出来事を歪めて誤った認識へと導いているのである。

 時系列で起きていることはいったんはそのままの順番で認識しているはずであるが、そこに“因果関係”が見出されてしまう場合、我々の認識は歪められて、時には順番を入れ替えてしまうということにもなる。

 かつての旅の思い出などでは、楽しかった思い出が真っ先に思い出されてくるなど、旅の出来事が時系列的にあいまいになっていたりもするのだが、それもそのはずで我々にとって体験した時系列は“再構成”できるものなのだ。

町の洋食店でしょうが焼き定食をいただく

 さらに通りを進むと今度は歩道にも信号がある交差点にやってくる。信号が赤なので立ち止まったのだが、左に延びる通りはちょっとした商店街になっているようだ。飲食店らしき店も見える。左折して通りを進んでみることにしたい。

 通りを進むと左手に銭湯が入っている3階建てのビルがあった。鉄筋コンクリートの建物だがかなりの築年数なのだろう。出入口を飾る屋号が記された青い庇が年季を感じさせる。時間があればひと風呂浴びるのも悪くないが今は無理だ。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 もう少し先に行ってみることにする。右手にはとんかつの店があり扉には「営業中」の札がかかってる。左手には喫茶店があり、どうやら軽食もできそうである。このどちらかの店にしてもよいのだが、あと少し歩いてみたい。なさそうなら引き返してくればよい。

 右手にあるコンビニ店の先に洋食店があった。店名には見覚えがあり、確か高田馬場にもあるはずである。町の洋食店で定食類を食べるのもよい。入ってみることにしよう。

 テーブルが4卓ほどとカウンターのこぢんまりした店内である。お店の人にカウンター席に案内されて着席する。コップの水に続いて渡されたメニュー表の一番上にはおすすめであることを示すマークと共に「ポークジンジャー定食」が記されている。何の異論もない。これにしよう。さっそくお店の人に注文する。

 通路側の一角の天井付近に架かっている液晶テレビはニュース番組を流している。ちょうど日本人メジャーリーガーがホームランを打ったシーンが目に入る。客席のファンは打った瞬間にホームランを祝っているようなリアクションである。球場で直接見ているとその打撃の強烈さですぐにホームランだとわかるのだろうか。

 料理がやって来た。なかなかのボリュームだ。味噌汁を少し啜ってから、さっそく肉を一切れ口に運ぶ。しょうがが効いたタレがよく絡まっていて美味しい。すぐにご飯をひと口頬張る。かつてどこかで食べたことのある料理の味のようにも思えてきて、微妙な懐かしさも感じられてくる。

※画像はイメージです(筆者撮影)

 ともあれメジャーリーグが開幕を迎え、今年も連日このニュースがテレビやネットを賑わせることになるのだろう。“二刀流”の日本人メジャーリーガーの今シーズンの活躍には個人的にも期待している。

 この選手にはずっと前から注目していたとは思うが、振り返ってみれば気にするようになったのはやっぱりメジャーリーグに移ってからだ。その意味では“にわかファン”なのだろうし、メジャーで活躍するようになってからという“後知恵”の影響は否定できない。

 輝かしい成績を収めたスポーツ選手などは特にこれまでの軌跡をまとめた映像などがすぐに作られて出回ることになるが、そうしたものを見ているうちに昔から応援していた気分になってしまっても不思議ではない。まさに時系列を“再構成”したことになり、昔からのファンである自分を自分の中で出現させたことにもなる。

 今こうして美味しくいただいているのはどこか懐かしさを感じされてくれる味のしょうが焼きなのだが、もちろんこのお店に入ったのは初めてのことだ。懐かしいからといって記憶を“再構成”しないようにしたいものだが、一瞬でもそう思わせてくれる料理にこうしてめぐり会えたことに感謝したい。

文/仲田しんじ

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