
量産に先駆け、自動車メーカーに向けたデモを開始
ヤマハは車室内で立体音響に対応した映像・楽曲コンテンツに没入できる技術を開発。自動車メーカーに向けたデモを開始した。今後は2020年より販売を開始した車載オーディオ商品の新たなソリューションとして、2022年の量産化を目指す。
そんなエンターテインメント提案の一つが、マルチチャンネルを生かしたオーディオ体験だ。近年、Dolby Atmos等に対応した、立体音響を体験できる映像・楽曲コンテンツが普及。従来のステレオ2チャンネルのコンテンツとは異なり、これらのコンテンツには空間を積極的に活用した立体表現が盛り込まれており、様々な方向から音が聴こえてくる。
このコンテンツはオーディオコンポーネントやヘッドホンで楽しむことができるが、音の反射や共鳴が顕著で複雑な形状をした車室内では、制作者の狙いを精度高く再現することが困難だった。
しかし、今回同社が開発した技術を使うことで、全てのシートで立体音響の圧倒的な没入感を体感することができるという。
また、安心・安全機能の提案には、アクセル操作や速度に連動する加速音や、様々なセンサーが発する情報提示音を立体的な表現で再生するHMI(Human Machine Interface)のシステムが挙げられる。
音に方位情報を付加することで、速度や注意喚起に対するドライバーの認知が向上し、運転支援につながることが期待される。
立体音響を正確に再現する高音質スピーカーの最適配置
前後方向および上下方向から聞こえる音の表現が立体音響には求められる。これを全てのシートで実現するため、ヘッドレストおよび天井部への設置など、合計30個のスピーカーが車室内に配置された。各スピーカーにはオリジナル振動板をはじめとするHi-Fiオーディオのノウハウが適用されている。
スピーカー構成
フロント 3ウェイ/2セット
リア 3ウェイ/2セット
センタースピーカー/1個
サブウーハー/1個
Dピラースピーカー/2個
天井スピーカー/6個
ヘッドレストスピーカー/8個(各席2個)
合計/30個
信号処理による空間的拡がりの演出
立体音響コンテンツは、各スピーカーが理想的な配置にあることを想定して制作されるが、車室内では足元のドアウーハーや耳元のヘッドレストスピーカーなど、リスナーと各スピーカーとの距離は多岐にわたる。
スピーカーがリスナーに近いほど、聞こえてくる音には「狭さ」を感じやすいため、このシステムでは、近距離にあるスピーカーから出る音に独自の信号処理を適用。自社製信号処理LSIの開発により蓄積してきた多様な技術を応用することで、距離感の歪みを解消した。
パラメータ探索エンジンの導入
車の形状や内装材などの影響により、車室内の音響特性は車種ごとに千差万別。それゆえ、合計30個のスピーカーから再生される音を制御し、全てのシートで圧倒的な音の体験を実現するには、複雑な信号処理と高度なチューニングが必要となる。
この信号処理アルゴリズムで使用されるパラメータの組み合わせは膨大な数になるため、最適なパラメータを自動算出する「パラメータ探索エンジン」が新たに開発された。
この技術は、従来の周波数特性分析に加え、人の聴こえ方に着目した分析を行うことで、適切なパラメータの組み合わせを提示するものだ。
これを基に、熟練のスキルを持つサウンドエンジニアがパラメータを最終調整することで、車種ごとに特別に仕立てた音響空間を提供することが可能になったという。
Dolby Atmos for carsを用いたデモ構築
立体音響の技術として、車載市場での活用に注目が集まるDolby Atmos for carsを用いたデモを構築。今回開発した技術を適用した車両では、Dolby AtmosでMixされた楽曲とヤマハ制作のウェルカム音の試聴が可能になる。開発にあたっては、ドルビージャパンと協力し、今後に向けた議論を深めているという。
関連情報
https://device.yamaha.com/ja/automotive_sound/
構成/清水眞希
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