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ロールス・ロイスの電気自動車「スペクター」が北極圏でウィンターテストを完了

2022.04.07

ロールス・ロイスは、同社初となるピュアEV(電気自動車)モデル「スペクター」が北極圏から55キロメートルの地点で実施していたウィンター・テストを終了したことを発表した。

「スペクター」誕生の背景

2021年9月、ロールス・ロイス・モーター・カーズは、同ブランドの創始者であるチャールズ・ロールズとサー・ヘンリー・ロイスが1904年5月4日に「世界最高のクルマ」を作ることに合意して以来で最も重要な製品、ロールス・ロイス「スペクター」を発売するという歴史的な発表を行なった。

ロールス・ロイスは、内燃機関を使って「世界最高のクルマ」と呼ばれるものを製造し続けることで高い評価を築いてきたが、電動化というアイデアは同ブランドにとってなじみ深いものだった。電気技師として人生をスタートしたヘンリー・ロイスは、静かに走り、瞬時にトルクを発生させ、駆動力が途切れることなく続く感覚など、電気自動車の特性を模した内燃機関の開発にその人生の大半を捧げた。

同ブランドの創始者とのつながりは、さらに深くさかのぼることができる。チャールズ・ロールズは、1900年に「コロンビア」という名の電気自動車を運転したとき、次のように公言した。

「電気自動車は、音もなくクリーンな乗り物です。匂いもせず、振動もありません。定置式の充電ステーションが整備されれば、とても便利になるはずです」

「スペクター」は、この予言を実現したものであった。

「スペクター」の登場で約束は守られた、ということもできる。2011年、ロールス・ロイスはオール・エレクトリックの試作ファントム・コンセプト「102EX」を発表した。続いて発表した「103EX」は、ロールス・ロイスの大胆な電動化の未来を予感させるドラマチックなデザイン・スタディであった。

これらの試作車は、ロールス・ロイスの顧客に大きな関心を呼び起こした。彼らは、電動パワートレインの特性がロールス・ロイスというブランドに完璧にフィットすると感じ取ったのだ。ロールス・ロイスの最高経営責任者であるトルステン・ミュラー・エトヴェシュは、これについて、次のように明確に約束をした。

「ロールス・ロイスは、この10年間のうちに電気自動車を導入します」

2021年9月、チャールズ・ロールズの予言とトルステン・ミュラー・エトヴェシュの約束に対する歴史的瞬間が訪れた。ロールス・ロイスは、史上初のオール・エレクトリック・ロールス・ロイス「スペクター」の走行試験を開始したことを公表。この驚異的なプロジェクトは、ロールス・ロイスがこれまで構想したなかで最も過酷なテスト・プログラムであり、距離にして250万キロメートルに及ぶというもので、これはロールス・ロイスの平均年間走行距離では400年以上の使用年数を想定したものである。

「スペクター」のウィンター・テスト

ロールス・ロイスの新型車は、いつも冬に誕生する。北極圏からわずか55キロメートルの距離に位置するスウェーデン・アリエプローグの特設の施設では、外気温度がマイナス26度になり、さらにマイナス40度まで低下する。

製品をこのような極限状態にさらすことについては、いくつかの理由がある。最初のプロトタイプが作成されるとエンジニアは極限状態で極めて基本的なテストを行い、寒冷な環境でも各システムが基本レベルで動作し、機能することを確認。このテストは洗練性を高めるためのプロセスの始まりでもあり、ロールス・ロイス・ブランドにふさわしい自動車としての基礎を形成するためのマナー教室での最初の「レッスン」となる。

レッスンは、騒音・振動・ハーシュネス(NVH)試験など、自動車産業に共通するプロセスから始まる。これには、主要なハードウェア・コンポーネント用の素材からドア周りのラバー材の密度、ブッシュ材の組成、締結部の素材、さらには接着剤の特性に至るまで、さまざまな変数が影響を及ぼす。またこれら変数による影響は、自動車の暖房・換気・空調・冷却システムの効率と同じく極端な温度下にさらされたときに大きく変化する可能性がある。

真のラグジュアリー・ブランドであるロールス・ロイスにとって、ウィンター・テストにはさらに重要な要素が追加される。ロールス・ロイスのエンジニアはこれを「デ・エスカレーテッド・タイム(徐々に馴染ませる時間)」と定義しており、「スペクター」のシャシー・コントロール・システム、パワートレイン・マネジメント、電子制御システムを用いてロールス・ロイスならではの体験を生み出すための驚異的な精度と制御を可能にするものである。

「スペクター」を雪や氷などのようなトラクションをかけにくい路面を走行させ、意図的に不安定な状態にすることで、エンジニアは通常なら高速走行で発生するようなダイナミックな状況を低速域で作り出すことができる。こうしてハンドリング、操縦性、安定性、予測可能性、さらにロールス・ロイスの走りを特徴付ける「ワフタビリティ(浮遊感)」などの分野での寒冷地の車両性能をパラメーター化し、微調整を行うことによって、さまざまな状況下かつ、ゆっくりとした動きのなかで確認し、システムに反映させることができる。

デ・エスカレーテッド・タイムによって、エンジニアは自動車の応答特性に他ではまねのできない細部を創り出すことができ、そうすることで、「スペクター」がロールス・ロイスの名に恥じないように考え、ふるまい、対話することができるようにしている。50万キロメートルを超えるテストを経て、現在このプロセスの25パーセントが完了している。

電子制御電動パワートレイン・アーキテクチャー「ロールス・ロイス3.0」

ロールス・ロイス3.0は、同社の大胆な電動化の未来の始まりの象徴。この「ロールス・ロイス3.0」という名は、2003年1月1日に、英国のウエスト・サセックス州グッドウッドで始まったブランド・ルネッサンスからの進歩を示唆している。グッドウッド生まれの最初のロールス・ロイスは「ファントム」で、独自のビスポーク・アーキテクチャーに支えられていた。このクルマがロールス・ロイス1.0であった。

その後、現行のファントム、カリナン、ゴースト、コーチビルド・プロジェクトなど、さまざまな用途に適応できる柔軟性の高いオール・アルミニウム製スペースフレーム・アーキテクチャーが新たに考案された。これがロールス・ロイス2.0である。ロールス・ロイス3.0は、オール・エレクトリック・パワートレインと分散型インテリジェンスをロールス・ロイスのアーキテクチャーに統合したものである。

コンポーネントの面では、シンプルさが格段にアップしている。しかし、「スペクター」のエンジニアリングという要件、つまりまだ無学のクルマをロールス・ロイスのマナー教室に通わせることは、他に類を見ないものとなっている。工学処理を施すという「エンジニアリング」そのものの定義が変わってきた。今までロールス・ロイスのエンジニアリングはワークショップで行われてきたが、「スペクター」ではこれをデジタル空間へと移行している。

「スペクター」は、ロールス・ロイス史上最も接続性の高いモデルであり、搭載する各コンポーネントはこれまでのどのロールス・ロイスよりも高度に情報化がなされている。141,200もの送信/受信用機器、1,000を超える機能、25,000を超える副次的機能を備えている。これに対してファントムは、送信/受信用機器が5,100で、456の機能と647の副次的機能を備えている。

「スペクター」の電子制御電動パワートレイン・アーキテクチャーの知能が劇的に向上したことで、これら1,000以上の機能を中央集権的に処理することなく、詳細な情報を、自由に、直接交換することができるようになった。このためエンジニアは、既存のロールス・ロイス製品に見られる約2キロメートルのケーブルの長さを、「スペクター」では7キロメートルまで増やし、25倍以上のアルゴリズムを書き込むことになったが、ブランドとしては大きな前進を遂げることができた。

各機能の組み合わせごとに専用のコントロールを作成することで、これまでにないレベルの詳細と洗練性を実現させ、ロールス・ロイスのシャシー専門家が「高解像度のロールス・ロイス」と呼ぶものをすでに可能とした。

「スペクター」のアーキテクチャー

「スペクター」のデザインを作成する際、ゆったりとしたプロポーションと感情を揺さぶるボディ・スタイルが選択された。これは、オール・アルミニウム製スペースフレーム・アーキテクチャーでなければ実現できないことである。事実、そのスケールは現代のクーペをはるかに凌駕しており、エレクトリック・スーパー・クーペと呼ばれるほど。これほどの空間を占める現代的な製品はファントム・クーペ以外にはない、というのがロールス・ロイス・ブランドの信念である。このクルマのデザイナーは、スペクターをファントム・クーペの精神を継承するものと考えている。

実際、「スペクター」のスタイリングに関しては、ロールス・ロイスのエンジニアはファントム・クーペをはじめとするロールス・ロイスの歴代大型クーペのサイズや情緒性を意識している。「ファストバック」のシルエットとサイズによってこの情緒性を生み出すだけでなく、ロールス・ロイスが何十年にもわたり守り続けてきたデザイン理念であり、ファントム・クーペの特徴でもある「スプリット・ヘッドライト」をも継承している。

このデザイン・タイポロジーは、「ファントム・クラスの電動スーパー・クーペ」というアイデアに大きな魅力を感じた顧客との協議のうえで選ばれたもの。しかし、こうした美学を追求するという決断は、戦略的なものでもあった。ロールス・ロイス・ブランド内のリーダーたちは、初のフル・エレクトリック・ロールス・ロイスは感情を大きく揺さぶるものであり、壮大で魅惑的、かつ説得力のあるスタイリングでなければならず、これを電動パワートレイン技術の採用によって実現できると示すことを望んでいた。

「スペクター」は、ロールス・ロイスにとって歴史的な瞬間であることを示すと同時に電動化にとっても歴史的な瞬間を示しており、このテクノロジーによって、今やロールス・ロイスという経験さえも備えることができるようになった。

ロールス・ロイス独自のアーキテクチャーによる柔軟性は、量産車を支えるそれとは異なる同ブランドだけのものであり、本物のロールス・ロイスの存在感を生み出すために必要なスケールを備えたエクステリア・デザインを可能にしている。このことはホイール・サイズにも表れており、「スペクター」は1926年以来で初めて、23インチのホイールを装着したクーペとなる予定である。

そして、独自のアーキテクチャーが持つ柔軟性は、デザイナーがクーペという体験をよりドラマチックに演出することを可能にした。室内のフロアをシルの上部や下部ではなく中間に配置することで、バッテリーのための空力的な経路を確保し、完璧に滑らかなアンダー・フロアを実現し、さらにこれが低い着座位置と包み込むようなキャビンの居心地をも実現している。

デザイナーとエンジニアはバルクヘッドを移動させてダッシュボードの位置を深くし、乗員を包み込むようなデザインにしている。これによりウィンドスクリーンの角度を大きく寝かせ、驚くほど効率の良いエアフローを実現。これに加えて、空力性能が向上したスピリット・オブ・エクスタシーのマスコットなど、その他の念入りに練られたデザイン手法によって、初期段階のプロトタイプでの空気抵抗係数(CD値)はわずか0.26となっている。

また、独自のアーキテクチャーによって実現されたバッテリー搭載位置は、ロールス・ロイスの経験に見合ったもうひとつのベネフィットを引き出している。ボディ・フロアとバッテリー上部の隔壁との間に配線や配管用の経路を設けることで、エンジニアはバッテリーの副次的機能としての700キログラムの「消音材」を実現できた。

ウィンター・テスト・フェーズを終えたスペクターは、引き続きグローバル・テスト・プログラムを継続する。このエレクトリック・スーパー・クーペは、2023年第4 四半期に予定されている最初の顧客への納車に先立って、エンジニアがこのプロジェクトの完了を確認するまでにまだ約200万キロメートルを走行しなければならない。


関連情報:https://www.rolls-roycemotorcars.com/


構成/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)

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