DIME MAGAZINE
Amazon プライム会員向けの特典である動画配信サービス「Prime Video」。今後の戦略や制作ラインアップを説明する「Prime Video Presents Japan」が日本で初めて開催された。
このイベントではメインMCをくりぃむしちゅーの上田晋也さんが務め、最初に登壇したアマゾンジャパン合同会社のプライム・ビデオ ジャパンカントリーマネージャーである児玉隆志さんは「Amazonでは自分たちのことを“カスタマーオブセスト”と呼んでいる。お客さんを満足していただくため、日本のニーズに合った作品を制作することを目指している」と自分たちのスタンスについて説明。
さらに、自分たちがつくる番組だけでなく、優れたクリエイターがつくる作品を、世界中にいる2億人以上のプライム会員へ届けることにも注力したいと話した。
その例として挙げられたのが世界独占配信を果たした『シン・エヴァンゲリオン劇場版』だ。Amazonは世界240の国と地域で配信するために、28の言語の字幕版と10の言語の吹き替え版を制作した。
『風雲たけし城』も！Amazon Original作品が続々情報解禁
アマゾンジャパン合同会社 日本オリジナルコンテンツ製作責任者の早川敬之さんからは、今後配信を予定しているオリジナル作品が紹介され、一部作品では手掛けた監督や出演俳優も登壇し、作品への想いを語った。
1.Amazon Original『モダンラブ・東京』 配信開始日：2022年秋予定
アメリカのニューヨークタイムスに寄せられた、読者の体験をもとにした愛の物語が、舞台を東京に移して展開。一話30分、全7話のオムニバス形式で構成される。
会場に用意された「Prime Video」のロゴと同じ、ブルーカーペットを歩いて登場したのは、同作品の1エピソード「彼を信じていた13日間」の監督務めた黒沢清さん。
「モダンともラブとも縁がない作品ばかり撮っていた。初心に戻ったような気持ち」と場をなごませつつ、撮影では「アメリカ版もニューヨークの街を再発見できるようになっていた。（東京版では）東京の街をどう印象的に撮るかに注力した。日本を再発見できるようになるといいな」と話した。
同作品の「息子の授乳、そしていくつかの不満」に出演する俳優の水川あさみさんは「ニューヨーク版を観ていたので、自分が出演した以外の作品を観るのが楽しみ」とコメント。一緒に登壇した俳優の池松壮亮さんが出演したエピソード「彼は最後のレッスンを私にとっておいた」は、全編L.Aでの撮影となり、「今だからこそ、物理的な距離を越えて会いに行くことが、現代的な記号に映るといいなと思った」と話した。
2.Amazon Original 『僕の愛しい妖怪ガールフレンド』 配信開始日：2023年予定
「日本独自の文化である妖怪とオタクを組み合わせたファンタジーラブストーリー」と早川さんが話すこの作品は、完全オリジナル脚本の連続ドラマ。
登壇した三木孝浩監督は、撮影はこれからだが、と前置きしつつ「脚本が本当に面白くて、とくに音楽的な要素のイメージがわいた。もともとミュージックビデオの出身なので。あと、妖怪やオタクといった、日本独自のカルチャーをアメリカの脚本家が企画している面白さ。海外から観た日本のカルチャーのエキセントリックさもありつつ、日本人の自分から見ても面白い」と意気込みを語った。
3.Amazon Original 『エンジェルフライト』配信開始日：2023年予定
第10回開高健ノンフィクション賞受賞作である佐々涼子さんの『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』をもとにしたドラマ『エンジェルフライト』は、海外で亡くなった人を遺族のもとに届ける国際霊柩送還士を描く作品だ。
脚本を担当した古沢良太さんは「死を扱うドラマではあるが、原作を尊重しつつ、楽しく観られるものとして描きたい。一方で、死がテーマなので、そこは誠実に描きたい。そのバランスが大切」とビデオメッセージを寄せた。また「探偵の推理や犯人との攻防はないが、異国で亡くなった人が、どうやって生きて、どうやって死んだのか。ひとりひとりのそれはドラマになるはず」とビ言葉を継いだ。
4.Amazon Original 『復活！風雲！たけし城（仮題）』配信開始日：2023年予定
1986年に放送開始し、100名の参加者が100万円をかけて難攻不落のたけし城に挑む、伝説の番組となった『風雲！たけし城』。当時は150以上の国や地域で放送されたり、同番組のフォーマットが現地番組として再現されたのだとか。これが2023年に「Prime Video」オリジナル番組として復活。
北野武さんも会場にサプライズ登場し、バラエティ番組にも力を入れていくという「Prime Video」の意気込みを感じさせた。
5.Amazon Original 『ザ・マスクド・シンガー』 シーズン2 配信開始日：2022年夏予定
覆面のシンガーがステージパフォーマンスを競うエンタテイメント番組『ザ・マスクド・シンガー』。覆面の下から現れた各分野で活躍する著名人の数々で2021年の話題をさらった番組の、シーズン2の配信が発表に。司会は今回も大泉洋が務める。
6.『バチェロレッテ・ジャパン』 シーズン2 配信開始日：2022年夏予定
多数の候補者の中から、たったひとりの未来のパートナーを選び抜く婚活サバイバル番組、男性版『バチェラー・ジャパン』、女性版『バチェロレッテ・ジャパン』。今回は『バチェロレッテ・ジャパン』のシーズン2の配信が明かされた。数多くの女性ファンをうみ、回を重ねるごとに話題をさらった初代バチェロレッテ・福田萌子さん。2代目にはどんな女性が登場するのか、注目が集まる。
すでに情報が公開されている、10人のアマチュアベイカーが腕を競い合うAmazon Original『ベイクオフ・ジャパン』は、4月22日より配信開始だ。
「Prime Video」はスポーツ配信に本腰、新たな顧客層の開拓へ
再度登壇した、児玉ジャパンカントリーマネージャーは「Prime Video」の顧客獲得の戦略についてこう語った。
外部調査によると、「Prime Video」は現在、日本で最も多くの顧客が利用している有料配信サブスクリプションサービスだ。動画配信を目的に会員になった人、そのほかのサービス目的に会員になった人、すべてを満足さのせるには、「価格」「利便性」「品揃えの3つを、常に向上していくことが大切だという。
これ以上ないほどお得であるように常に多くの特典を設定し、改善に努めている「価格」、常時サイトのUIを改善し、ひとりひとりのお客さんが観たい作品を簡単に見つけられ、新たな作品が出会うようにしている「利便性」、そして「品揃え」の面では、見放題作品を2020年から2021年では70％増量し、一万タイトル以上に。さらにパートナー企業のチャンネルも拡充し、レンタルや「Prime Video」チャンネルも充実させていく。
さらに成長戦略の中でも特に触れたいと児玉さんが挙げたのは、スポーツのライブ配信だ。アニメや映画を観る層とは違うファンの獲得が見込めるということで、海外ではすでに配信されているライブスポーツを、日本でも開始。
第一回となる2022年4月9日に午後6時から配信する『Prime Video Presents Live Boxing』では、WBA・IBF世界ミドル級タイトル統一戦として、村田諒太選手（日本）とゲンナジー・ゴロフキン選手（カザフスタン）が対戦する。
さらに第二回は2022年6月7日に配信されるWBA･IBF・WBC世界バンタム級王座統一戦で、井上尚弥選手（日本）とノニト・ドネア選手（フィリピン）が対戦。いずれもAmazon プライム会員なら視聴は無料だ。
コロナ禍でより注目の高まった有料配信サブスクリプションサービスだが、次々と新たなサービスが誕生し、レッドオーシャンになりつつある。
ナンバーワンでありながらも、他のサービス目当ての会員もいると冷静に分析している「Prime Video」は、配信サービス単独でもあらゆるジャンルへ広げ、より顧客満足度をあげることで、追随を許さない構えだ。視聴者からすると、サービスの充実は大歓迎。まだ未発表のプログラムもあるという、「Prime Video」の今後の動向も興味深く見守っていきたい。
取材・文／安念美和子
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