ガチのゲーマーではない人も、ゲーミングノートPCを導入してみよう!
公のメディアでそう主張できるようになったのは、ひとえにゲーミングノートPCが安くなったからだ。
筆者が20代の頃、ゲーミングノートPCといえば高級品というよりも贅沢品だった。
安くても30万円は下らない代物で、これなら中古のバイクを買ったほうがいいんじゃないかと思ってしまうくらいだ。
ところが、今では10万円台からラインナップが揃っている。
今回筆者が購入した『HP Victus16』は、何と10万を切る販売価格を実現したモデル。
しかもこの価格は、価格ドットコム経由とはいえHP公式サイトでの売値である。こ、これはいささか安過ぎないか?
カジュアル層を意識した新ブランド
去年9月9日、株式会社日本HPは新ゲーミングPCブランド『Victus』を発表した。
この日の発表会で、日本HPは「日本のゲーム市場の特徴」について言及している。
それによると、日本ではパンデミックの影響でゲーム需要が拡大しているが、その中心はコンソール機即ちゲーム専用機であるという。
言い換えれば、日本では「PCでゲームをする」ということが一般的ではない。
が、ゲーミングPCはコンソール機と比較して性能が高い。つまり、そのあたりに潜在需要を見出すことができる。
そしてこの発表会で公開された新機種『Victus16』は、とてもゲーミングノートPCとは思えない外見だった。
純白の筐体に銀の「V」があしらわれた天板。キーボード部分もホワイトで統一されている。
ブラックかメタリックグレーの筐体が多いゲーミングノートPCだが、『Victus16』はビジネスノートPCのようなデザインだ。
オンラインゲームでの勝利を目指して突き進む戦闘力最重視のノートPC、というわけではない。
つまり『Victus16』は、カジュアル志向の製品なのだ。故に搭載されているプロセッサーやグラフィックボードは、エントリー〜ミドルレンジクラスである。
販売延期の憂き目に遭う
ところが、『Victus16』の販売は遅れに遅れた。
これは世界的な半導体不足が影響しているという指摘もあるが、ともかく『Victus16』は新年を跨いだ2022年1月にようやく市場に登場した。
そして蓋を開けてみると、『Victus16』はその低価格で異質な存在感を発揮する製品になった。
筆者が入手したのは『Victus16』AMD/RTX3050搭載モデル。
プロセッサーはAMD Ryzen 5 5600H、グラフィックボードはNVIDIA GeForce RTX 3050 Laptop。メモリ16GB、ストレージ512GB SSD、画面サイズ16.1インチワイドのエントリースペックだが堂々としたゲーミングノートPCである。
価格ドットコムを経由した場合、HP公式サイトでの販売価格は10万4,800円。これよりも下位のモデルでは、何と10万円を切ってしまう。
こ、これは下手なビジネスノートよりもお買い得じゃないか!?
『Steam』はマニア向けプラットフォーム?
PC向けのゲームプラットフォームといえば『Steam』である。
が、コアなゲーマーはともかくとして、より一般的な層では「Steamは洋ゲー(海外製ゲーム)プラットフォーム」というイメージがまだ強い。
そして「洋ゲー=マニア向け」という意識が今も払拭されていない。
上述の日本HPの記者発表会で提起された問題も、そのような背景がもたらす現象ではないか。
しかし、Steamとは「インディーズ作品の見本市」という側面もある。
「スタートアップ」とも言い切れない個人制作者が、まさに家内制手工業で作ったゲームを全世界に向けて配信する。もちろんその中には、まるで遊べないような駄作もある。が、時として「隠れた名作」が登場することも。
そうしたゲーム群を、『Victus16』ならストレスなくプレイすることができる。逆にグラフィックボードがなくメモリも十分ではないPCでは、ゲームをプレイするまでにあらゆる困難に見舞われてしまう。
起動が遅い、キャラの動きがカクカクしている、フリーズしやすい等々。10万円程度でこの苦悩を打破できるなら、それは決して無駄な出費ではないはずだ。
そしてゲーミングノートPCを所有することで、「世界で何が起こっているのか」を確認することもできる。
ゲームと国際情勢
ウクライナ、ベラルーシ、ロシア。この3ヶ国は、実は優れたインディーズゲームを輩出していることでも知られている。
それが此度のロシアによるウクライナ侵攻で、ゲーム業界に多大な影響が及んだ。
Steamではウクライナのデベロッパーを支援する活動が開始され、それと同時にロシアとベラルーシに対する抗議・制裁も行われるようになった。
一部タイトルではロシア向けの販売価格を大幅値上げし、戦争に反対する意思を公に示したのだ。
そして今では、ロシアでのSteam配信タイトルの購入はできなくなっている。主要キャッシュレス決済サービスがロシアでの取引を停止したためだ。
同時に、世界ではウクライナのデベロッパーが関わったゲームに大きな関心が向けられるようになった。
どのような形で彼らを支援するべきか? それを考えるためには、まずウクライナ製ゲームをプレイする必要がある。
ゲームはもはや、ひとつのコミュニティツールだ。「世界の今」を調べる手段として「ゲーミングノートPCを導入する」という選択肢は、大きな意義を含んだものでもある。
中高年こそゲーミングノートPCを!
そしてゲーミングノートPCは、ゲームとは縁遠い中高年のライトユーザーに対しても恩恵を与えるものではないかと筆者は考えている。
というより、ガチゲーマーではないカジュアル層を意識した『Victus16』は、「Office以上の使い方」を望む人に適合した製品ではないか。
『Victus16』の重量は約2.48kg。これは今時のゲーミングノートPCにしては、若干重いほうだ。
しかし頻繁に外へ持ち出さないというなら、重量はあまり問題にはならないはず。
そして、孫がやっているようなゲームを自分自身がやってみようというのであればこれ以上コスパの高い製品は他にないのでは、とも思う。
「ゲーム好きの孫のためにノートPCをプレゼント」ということで中古ノートPC譲渡会(といっても有償だが)に行く高齢者も見かけるが、聡明な人であれば「孫はどのようなゲームをやっているのだろう?」という疑問にたどり着く。
その後、「自分も孫のようにゲームをやってみよう」という決心につながった時、メーカー公式サイトで買った新品の『Victus16』は必ずそのスペックを発揮するはずだ。
そして、初めてゲーミングノートPCとやらを操作する人は驚愕するに違いない。「今まで自分が触れてきたPCとは全然違う!」と。
多くのPC講座は、「Officeの操作」を最終目標に設定している。言い換えれば、数多くの人が「Office止まり」に甘んじている。
そこからさらに成長するための1台として、『Victus16』はメーカーの期待以上の役割を示すのではないか。
そのような意味でも、HPの『Victus』ブランドは今後も要注目である。
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取材・文/澤田真一