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「解雇ができない国で、解雇が行われている」というニュースをどう捉えるか

2022.04.05

■連載/あるあるビジネス処方箋

50代後半の男性が最近、解雇となった。仕事の能力が他の社員に比べて著しく低く、周囲との摩擦や対立が多く、協調性が大きく欠けることを理由にした普通解雇だった。

このアミューズメント会社は、正社員数1200人。男性は、1年半前から正社員として勤務していた。それ以前は20歳で専門学校を卒業後、30代後半まではホテルのアミューズメント施設で、50歳前後までは電気メーカーやパチンコメーカーの営業部に勤務した。解雇となったアミューズメント会社は、5社目だった。

男性は、配属部署(部員60人)の清掃部ではトラブルメーカーとして知られていた。60人の部員が5~6人でチームをつくり、自社が主に都内で運営する50程のアミューズメント施設の清掃をする。機器本体やその周辺機器、室内、廊下やエレベーター、階段などの共用部が多い。1チームで多い場合は1日で3の、少ない時は1の施設を担当する。通常は午前6時から~午後4時まで。休憩は、1時間~2時間。

男性は、上司であるマネージャー(40代後半)と口論が絶えなかった。特にチームメンバーである社員の仕事について激しく言い争う。男性は、頻繁にマネージャーに報告する。「A(社員)は、廊下のバキューム(掃除機)が杜撰」「B(社員)が、階段の手すりを隅々まで拭いていない」「エレベーターに小さなごみが落ちていた。C(社員)が掃除をしていない証拠」。

電話やメールを通じて週に数回、多い場合は10回程、マネージャーに伝える。しかも、「Aを至急、辞めさせるように」「Bを他部署へ異動させるように」と命令口調だ。マネージャーが「それは言い過ぎだ」「あなたに、人を辞めさせる権限はない」と指摘すると、男性は怒鳴る。時に殴らんばかりになる。

自らはこの1年を振り返っても、次のような問題を繰り返していた。

・無断欠勤(年間で15日程)
・1時間を超える欠勤(年間で10数回)。しかも、事前に上司に報告をしない。
・アミューズメント施設の来客者と口論(年間で数回)
・チームメンバーの社員数人と口論
・自分が担当する仕事の1部を数か月間、放棄
(発覚後、本人は「忘れていた」と上司に伝えた)
・自分の厚生年金の扱いをめぐり、総務部の担当者と口論

1年でマネージャーやその上司(担当部長)が数十回、注意指導をしたが、男性はあらためなかった。始末書を書くことを10数回命じたが、毎回、明確に拒否した。特にここ半年は、上司やチームメンバーを怒鳴りちらす回数が増えていた。ほかの部署への異動を検討したが、引き取る部署はなかった。部署の60人の社員の3分の1くらいから「一緒に仕事をしたくない」「怒鳴るから、関わりたくない」と苦情が担当部長に届いていた。

2月中旬に無断欠勤を4日したために、自宅にまでマネージャーが行き、出社するように促したが、男性は興奮し、怒鳴りちらした。出社後、始末書を書かせようとしたが、また拒絶した。やむを得ず、役員会で話し合いのうえ、3月末に解雇とした。

去年の秋から、総務部やマネージャー、担当部長らが産業医に相談をしていた。男性が特定の病気であることを疑っていたからだ。突然、興奮し、キレて相手を罵倒したり、ののしることに着眼していた。その声は30メートル離れたところにまで聞こえる。解雇にしたためにどのような病気であったのか、その真相はわからずじまいだった。

役員会では、こう判断した。「周囲への暴言や自らの仕事の放棄を1年以上にわたり繰り返し、注意指導しても一向に直そうとしない、しかも、始末書すら書かない以上、普通解雇はやむを得ない」。いわゆる、男性から不当解雇と訴えられた場合の証拠固めとして、業務命令違反文書を1年間で計30枚前後渡したが、男性はいずれも受け取りを拒否。

これは、私が人事コンサルティングに関わる会社で実際に起きた問題だ。マネージャー、担当部長、担当役員、総務部の管理職、担当役員、顧問の弁護士、企業内労組の役員など20人ほどに私は3か月間で聞き取りをしたが、いずれも男性の扱いに困り果てていた。

経済雑誌やビジネス雑誌、ニュースサイトは今なお「解雇規制の緩和」をテーマにした記事を掲載する。「日本では解雇ができない」「解雇ができないから、中高年の働かないおじさん、おばさんがたくさんいる」といった視点の記事が大半だが、この指摘は事実関係に致命的な誤りがある。

日本は、解雇ができない国ではないのだ。できるからこそ、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇がある。解雇が行われているから、撤回闘争や解雇をめぐる裁判が多数ある。その意味では「規制」などない。雇用を奪うのは深刻な問題ではある。一方、その社員を残しておくと部署や会社が破壊され、他の社員の心身が壊されかねない場合もある。事実にもとづいて慎重に検討、検証したうえで解雇が行われる時はある。また、状況いかんではするべきなのだ。雇用の最前線では、経済雑誌やビジネス雑誌、ニュースサイトで報じられるよりはシビアで、深刻で複雑なせめぎ合いが行われている。

読者諸氏は「解雇ができない国で、解雇が行われている」事実をどう捉えるだろう。

文/吉田典史


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