
データアーティストは、三重県の製菓会社マスヤの新商品「AIせんべい」に対して、AIによる「味覚設計プロセス」を提供した。「おにぎりせんべいAIせんべい」は、2022年3月22日に全国のローソン店舗(一部店舗を除く)で先行発売される。
8万以上のレシピから導き出した7つの「やみつき」食材とは?
テレビ東京のビジネス開発バラエティ番組で、「やみつきになる究極の味」をAIで生成するプロジェクトが発足。「味覚設計プロセス」はそのなかで採用されたAIエンジンだ。元になるデータ群と任意のコンセプトを掛け合わせ、最適な答えを導きだす。
今回のデータ群は、レシピ投稿サイトなど、WEB上に存在するレシピ情報。レシピ名に「やみつき」と記載される8万2000個ものレシピの食材をAIが学習する。
その中から、「やみつき」に該当する食材の組合せを1兆回以上もシミュレーションし、次の食品リストを導き出した。
AIが弾き出したやみつき度は99.8%。マスヤの研究スタッフが最終的にフレーバーに落とし込み「おにぎりせんべい AIせんべい」が誕生した。
リストに「ミョウガ」が入っているのは少々意外だが、これは偶然でもAIのバイアスでもない(異なるAIエンジンを試したところ、すべてミョウガは入った)。現代日本において、ミョウガは普遍的な「やみつき」の要素なのだ!
実際に食べてみたが、ミョウガの爽やかだが主張の強い香りが後味となって、最後に独特の印象を残す。人間には考えられそうもない食材の組み合わせを、AIが鮮やかに導きだしている。
ほかにも、「最もロマンチックな味」「最も都会的な味」「最もドキドキする味」など、元のデータ群さえあれば、さまざまな味覚を解析し、最適な食品の組み合わせを導けるという。
AIが商品開発へ活用される新たなステージへ
データアーティストは食品テクノロジーの企業ではなく、あくまで汎用的にマーケティングに活用できるAIを開発する会社。Webやソーシャルメディアのデータ群にコンセプトをかけあわせ、「最適な組み合わせ」を導き出す手法は、あらゆるビジネスに応用できる。
マーケティングのプロセスは、何を誰に届けるか、に集約される。「従来は、主に商品を『誰に』というターゲティングに、AIが活用されてきた。今回の取り組みは『何を』にあたる、新しい商品開発の手法をうみだした(代表山本覚氏)」。味覚設計プロセスは、バラエティ番組の企画以上に、次世代のAI活用の大きな端緒となったという見立てだ。
同社は今後、プロセスの「パッケージ化」を目指す。幅広い企業にAIエンジンを公開し、元のデータ群とコンセプトを入力するだけで、組み合わせを導きだせる仕組みだ。
未来の技術と思われたAI活用は、今後さまざまなビジネスに浸透していく。AIせんべいは、そのスピードが加速することを、予見させるプロジェクト。乗り遅れることのないよう、ビジネスパーソンはテクノロジーの進化と社会への実装をウォッチするべきだ。
●プレスリリース
”やみつき” になる究極味のせんべいをAIが開発
取材・文/ソルバ!
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