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【最新ビジネス解説】貯金感覚で太陽光発電投資ができる利他ビジネス「グリーンワット」後編

2022.04.04

前回紹介したチェンジ・ザ・ワールド社のグリーンワットは、太陽光発電所に小口で投資し、CO2排出量を削減できるというサービス。いつでも購入時と同じ金額で売れるので、貯金のような感覚で環境に貢献する利他ビジネスだ。

今回は、グリーンワットが誕生するまでのストーリーと、今後のビジョンを紹介する。

太陽光発電事業の失敗から得た教訓

チェンジ・ザ・ワールド代表取締役の池田友喜氏。

「グリーンワット」とそのベースである「CHANGE」のはじまりは、2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故にさかのぼる。

2011年3月当時、後にチェンジ・ザ・ワールドの代表として「グリーンワット」をうみだす池田友喜氏は、別のソフトウェア開発会社を経営していた。事業は主に企業向けの業務システムの開発など。

「自分たちのITの力を、もっと直接的に社会貢献へ活かせないだろうか?」

漠然とした想いを抱いていたところに、衝撃的な事故の映像や、放射能漏れのニュースが飛び込んできた。

子どもがまだ小さかったこともあり、次世代への大きな危機感を持った池田氏は、さっそく行動に移す。前述のFITなど、国の後押しで拡大が期待された太陽光発電に着目し、2012年はじめには外部から人材を招いて、社内に新規事業を立ち上げた。

しかし、この決断が失敗だった。

多額の投資を行ったが、新規事業メンバーは1円の売上を立てることもなく、会社を去った。そして、池田氏の会社は2012年半ばには倒産してしまったのだ。

後でわかったことだが、「当時の太陽光発電業界は、クリーンな人だけが集まる場ではなかった」と池田氏。国が推進していたがゆえに、参入のメリットが大きく、利益を求めて群がる人たちも少なからずいたのだ。

失敗の経験は貴重な教訓となり、「CHANGE」の設計にも生かされている。

2014年、池田氏は再起業し、チェンジ・ザ・ワールドを設立。「環境やエネルギーは、社会に生きるすべての人に関係する問題。みんなが参加できる仕組みをつくるべきだ」と考えた。創業当時から構想していた「個人による太陽光発電の小口購入」は、利益追求に血道を上げる人や企業を、介在させない仕組みでもある。

「グリーンワット」のベースになっている「CHANGE」の仕組み(出典:チェンジ・ザ・ワールド)。

もうひとつ、池田氏がこだわったのは、当時ほとんど行われていなかった「ソーラーシェアリング」への取り組みだ。農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置し、上部で発電しながら地面で農作物を栽培する。

ソーラーシェアリングによる太陽光発電所(出典:チェンジ・ザ・ワールド)。

ソーラーシェアリングならば、全国に30万ha近い荒廃農地を活用でき、農作物を生産できるメリットもある。何より、太陽光発電所を設置するために山林を切り開くなど、本末転倒な環境破壊が必要ない。

同社は当初、企業向けに太陽光発電所を提供していたが、2017年7月に個人がスマホからでも太陽光発電所を小口購入できる「CHANGE」をリリース。2022年3月現在ではユーザー数1万9000人、平均購入額約22万円のサービスに成長している。

出典:チェンジ・ザ・ワールド

はじめは誰もが理解不能!?「グリーンワット」のアイデア

そして、2021年7月に「グリーンワット」を開始する。はじめに構想を持ち込んだのは、CTOの玉置龍範さんだ。

太陽光発電所を作って、個人に分割販売するモデルは従来と同じ。しかし、購入者に経済的リターンはまったくない。時間が経っても発電所の価値は毀損せず、環境価値をユーザーに可視化して提供する。ほぼそのまま「グリーンワット」の根幹になる提案だ。

とはいえ、果たして善意だけでモノが売れるのか?

池田氏は「はじめは私も理解できなかった」と振り返る。環境価値は直感的な理解が難しく、ビジネスモデルとしてもハラオチするまでに時間がかかる。

しかし企業単位では、排出権取引や炭素税など、環境価値を経済的価値に結びつける取り組みは始まっている(カーボン・プライシング)。個人に適応される時代も、それほど遠くないのではないだろうか?

しかも、「グリーンワット」が実現すれば国の制度に関わらず、至るところに太陽光発電所をスピーディに作ることができる。

問題は、池田氏自身がそうであったように、理解を得ることが難しいこと。「個人が環境にお金を出すはずがないと、金融機関などは取り合ってくれなかった(池田氏)」と振り返る。しかし、そんななかだからこそ、新しい価値とマーケットを創っていくのがベンチャー企業だ、と意気込む。

2021年7月と2022年2月に数量限定で「グリーンワット」を販売したところ、どちらも24時間以内に完売した。社会の中で環境価値への理解が急速に進んでいく、と池田氏たちは確信を深めている。

震災から現在までの10年余りは、利益を追求し、投資できる企業を中心に太陽光発電所を増やしていく時代だったのかもしれない。しかし、発電量は十分とは言えない。

経済的なメリットも今後ますます失われていくなか、「次の成長カーブを描く必要がある」と池田氏は指摘する。利益だけではない推進力を持ち、真に再エネを増やすフェーズに入っているという。

上位サービス「環境アクションプラットフォーム」の狙い

では、今後どのように利他ビジネスを拡大していくのか?

2021年2月22日、同社は環境アクションプラットフォーム「change」をリリースした。既存サービス「CHANGE(大文字)」の上位概念のサービスだ。

Web上で9つの質問に答えると、個⼈のカーボンフットプリント(CO2 の推定排出)が算出、アカウントがパーソナライズされる。個⼈が与える環境負荷を可視化することで、具体的な環境アクションのきっかけをつくる狙いだ。

同社が定める環境アクションを実行すると、環境価値ポイント「リーフ」がたまる。環境アクションは、環境に関するコンテンツを視聴したり、クイズに答えるといった簡易なものから、太陽光発電所の購入までさまざまだ。

1リーフは1gのCO2削減に相当し、「J-クレジット(省エネ設備の導入や再エネの利用によるCO2の排出削減などを国が認証するクレジットで売買が可能)」とひも付けられている。

いずれは、リーフで商品を購入したり、特典を利用できるなど、環境価値と経済的価値を結びつける媒介とする予定だ。

教育から実践につなげる

疑問が残るのは、現状でJ-クレジットを同社が購入し、リーフに割り当てている点。ユーザーはリーフを獲得することで、公にも環境に貢献したとみなされる。サービスの大きなポイントだ。

しかし、「change」の中に原資を稼ぐ仕組みはく、経済的な持続性を欠いているようにみえる。

同社が環境価値を購入しリーフとひも付けると、ユーザーはクイズなどに答えるだけの簡単なアクションでも、環境に貢献したとことになる。

同社が描くのは、数年先のビジョンだ。

学習するだけでポイントがもらえる現在の仕組みは、理解の難しい環境価値を浸透させる教育の一環。「change」内で共感するユーザーが増えれば、例えば既存事業である太陽光発電所の分割購入につなげることができる。ポイント還元はマーケティングコストとして吸収できるわけだ。

また、環境に配慮された自社、他社の商品を販売するなど、他にも収益獲得の仕組みづくりは可能。「全国には苦しい中がんばっている太陽光発電事業者や工事事業者もいるので、彼らを応援する仕組みもつくりたい」と池田氏は将来を見据える。さまざまな業界を巻き込んだ利他ビジネスの広がりに期待したい。

取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小に関わらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。 
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