
新型コロナウイルスの感染拡大に伴いリモートワークが急速に普及して早2年。ニューノーマルなワークスタイルが定着しつつある今、企業はどのようなオフィス戦略をとっているのだろうか。
法人向け不動産事業を展開するCBREでは、このほどコロナ禍を経たオフィス戦略について探る「オフィス利用に関する意識調査2022」を実施。先日、その結果を発表したので概要を紹介していこう。
約2年のコロナ禍を経た、オフィスワークの現在地とは
コロナ禍収束後、7割の企業がハイブリッドワークを予定
コロナ禍収束後の働き方の見通しについて、完全出社予定の企業が全体の3割、リモートワークとコアオフィス(出社)を組み合わせたハイブリッドワークを予定している企業は7割となった。ハイブリッドワークの際のオフィス出社率は、70~90%を予定している企業が最も多い。
デスクシェア率はコロナ禍収束後 平均1.32人/席を予定
ハイブリッドワークを実行する場合、従来の固定席のままでは空席の余剰スペースが増えるため、デスクシェアを行うことになる。コロナ禍前は1席あたり平均1.06人だった比率(「デスクシェア率」)は、コロナ禍収束後は1席あたり平均1.32人を予定しているという結果になった。
デスクシェア率を高めることで余剰となったスペースを解約しようとする動きもある。しかし、オフィススペースの縮小を予定している企業が24.0%にとどまっていることは、ハイブリッドワークを予定している企業が7割にのぼることと整合しない。したがって、余剰スペースは他の用途に転換する動きが主流となりそうだ.
余剰スペースは出社目的達成のためのスペースに転換
転換後の用途として多くの回答者が選んだのは、全員出社が一般的でなくなった場合に当然に必要になる電話・Web会議スペース、業務効率化のための集中スペース、そしてコミュニケーションを誘発するスペースなどである。コミュニケーションについては、リモートワークでは限界を感じている企業が多く、オフィスの重要機能として改めて認識されている。
また、パンデミック下で一時的に増加が停滞していたフレキシブルオフィスの利用については、今後利用を増やす・始めるとする回答が28.6%とになった。コロナ後のハイブリッドワークの普及により、フレキシブルオフィスは新たな拡大フェーズに入ると言えそうだ。
出社目的が明確になると、オフィスへのこだわりも強くなる
オフィス移転先選定の際に重視する項目については、完全出社を予定する企業よりも、ハイブリッドワークを予定する企業の方が重視項目に対する回答率が全体的に高い。
ハイブリッドワークを予定する企業は、オフィスの使い方・目的を先鋭化・明確化した結果、オフィスと従業員の接点が少なくなる一方で、オフィスへのこだわりは強まったと言える。競争力が高いビルは、これまで以上に高い評価を集めることになるだろう。
ESGの最優先事項は、「Social」-従業員の健康と幸福の向上
企業を取り巻く事業環境は、コロナ禍の最悪期は脱したが、依然不透明な状況だ。ただその中にあっても、コロナ後を見据えた安定的かつ長期的な成長のために、あらゆる事業活動においてESGに配慮した取り組みが拡がっている。
現在、ESGの分野で優先事項として企業が最も高い関心を寄せているのは、「従業員の健康と幸福の向上」だ。この優先事項を実現できるハード面・運用面でのオフィスづくりが、「従業員が集まりたくなる場」づくり(「スペース・メイキング」)の勘所となるだろう。
一方、環境対策については、現時点ではオフィス戦略を考える上での重要項目になっているとは言えない。しかし今後は、環境意識の高まりとともに、オフィス戦略と密接に関連付けて検討されることが増えていくだろう。
出典元:CBRE
構成/こじへい