
実用車作りに長けたフレンチ・ブランドのなかで、他とは異なる存在感を示すのがシトロエンだ。その主軸たるコンパクトハッチバック、C4がフルモデルチェンジを果たした。新型は一般的なガソリンモデルに加えて、パワートレインに電動モーターを用いた純EV仕様がラインナップに加わったのがトピックである。
シトロエン初のEVとして登場
シトロエンC4といえば20年近く前に登場した初代モデルを真っ先に思い出す。全長4.3×全幅1.7mほどの扱いやすいサイズのボディに、同社の象徴たるダブルシェブロン・エンブレムをクローム・モールで表現した面構えやセンターパッドが固定式となるステアリングホイール、オレンジ色の透過式デジタルセンターメーターを採用するなど、独創性に溢れながら、優しい乗り心地と使い勝手の良さが光る一台だった。2代目はそんな個性を受け継いだ正常進化版となり、3代目には新たな独自性が植え付けられたモデルとなった。
新型C4はクーペSUV風のクロスオーバー・デザインを纏い、2016年のパリ・サロンで披露されたコンセプトカー風のV字型のシグネチャーライトが目を引く。また、そのプロファイルは往年のGSを想起させるもので、新しさと懐かしさが融合したシトロエン独自の世界観を表現したものと言えるだろう。
そして何より見逃せないのはパワートレインに電動モーターを採用したことだ。シトロエン初のEVとして登場したË-C4は、通常のエンジンが収まる位置に電動モーターを搭載して前輪を駆動する。刷新されたプラットフォームは電動化にも対応できる設計となっており、バッテリーは床下にきっちりと収められ、室内空間や荷室に影響を及ぼしていないのがいい。加えてエンジン車からの乗り換えでも違和感のないようなマナーにしつけられている点にも好印象を抱いた。EVというとモーターのピックアップの良さを強調した味付けがなされているものが多いが、Ë-C4に関してはこれ見よがしなダッシュ力やリニアさを主張しすぎない、慎ましさがある。もちろんアクセルを強く踏み込めばEVらしい出足の良さが味わえるが、踏み込み量に対するパワーの出方はごく自然で、違和感や緊張感を抱かずにドライブできる。
そんなリラックスしてのドライブに拍車を掛けるのが、シートの掛け心地のよさだ。通常2ミリ程度と言われる生地裏のフォーム部分は、C4シリーズでは15ミリまで厚みを増しているそうで、とにかくふわっと包み込まれるような気持ちよさがある。モーター駆動ゆえの静粛性の高さや、バッテリー搭載による低重心化、ロングホイーリベースがもたらす高い直進性、当たりの柔らかな足回りなど、静々とたおやかな快適ドライブに誘ってくれるのがË-C4というモデルであり、新世代シトロエンを象徴する一台になり得る逸材と言えるだろう。
歯車がモチーフとなるダブルシェヴロン・エンブレムは初代と同様にクロームのモールで表現されている。コンセプトカー“CXPERIENCE”に倣ったシグネチャーライトもC4シリーズを特徴づける要素のひとつだ。
ステアリングのセンターパッドを始め四角のデザインモチーフが散りばめられたインテリア。物理スイッチも残されていて直感的な操作がしやすい。
明るく開放感の高い室内。シートの掛け心地の良さは新型C4シリーズの白眉と言えるだろう。ロングホイールベースとなることもあって、後席のニースペースはクラス最大級を確保できたという。
Ë-C4は電動モーターと50kWのリチウムイオンバッテリーを搭載。一充電あたりの走行可能距離はWLTCモードで最大405km、JC08モードで459kmを標榜。ロングツーリングにも連れ出せそうである。
EV専用プラットフォームを採用し、大容量バッテリーが床下に無理なく収まったおかげで室内スペースや荷室容量もエンジンモデルと同等レベルを確保している。
(諸元)
シトロエンË-C4シャイン
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,375×1,800×1,530mm
車両重量:1,630kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:100kW(136PS)/5,500rpm
最大トルク:260Nm(26.5kgm)/300〜3,674rpm
価格:¥4,650,000
問い合わせ:シトロエン
TEL:0120-55-4106
TEXT:桐畑恒治(AQ編集部)
PHOTO:尾形和美
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