
オペルらしい質実剛健さがにじみ出ている初代『ZAFIRA』。モノフォルムのおかげでこの手のモデルとしては空力特性も良好だった。
ZAFIRA ザフィーラ
1999-2022
日本車の独壇場だった小型ミニバン市場に、ドイツメーカーとして初めて打って出たのが7シーターミニバン『ZAFIRA』だ。
独自のシートアレンジシステムでスペースを有効活用
1997年のフランクフルトショーでプロトタイプを発表し、99年に発売となった初代『ZAFIRA』は、『ASTRA』をベースに仕立てられた7シーターミニバンである。この手のモデル開発は日本のメーカーが最も得意とするところでもあり、欧州メーカーから似たようなコンセプトのモデルはリリースされてこなかった。
それでもオペルが『ZAFIRA』の開発に着手したのは、都市部での使用環境は欧州でも日本でも大差なく、限られたスペースを有効活用してユーティリティーに優れた小型ピープルムーバーを求めるユーザー層の取り込みが必要と捉えたからだろう。実際に『ZAFIRA』はそれまでオペルが培った実用車造りの技術がふんだんに盛り込まれ、使い勝手に最大限配慮した仕立てとなっている。
モノフォルムのボディーは2+3+2の3列シートを設け、大人7人が無理なく座れる室内空間を確保した。そこに「フレックス7シーティングシステム」と呼ばれるシートアレンジのコンセプトを取り入れたのが『ZAFIRA』の特徴だ。初代ではそれぞれのシート調整はもちろん、シートを取り外すことなく3列目を格納してフラットフロアを生み出せる設計としているのが新しかった。また定評のある『ASTRA』のシャーシを用いたことにより、ミニバンながらも安定した走りを確保していた点も好評価につながっていた。
日本への正規輸入も行なわれたが、ゼネラルモーターズのアジアにおけるモデル戦略によって生まれた、より安価なOEM車のスバル『TRAVIQ』の登場により、日本市場においては思ったほど人気を得ることはできなかった。
歴代モデルに貫かれた人に寄り添ったクルマ造り
もっとも日本以外での支持率は高く『ZAFIRA』は累計で140万台を売り上げるほどのヒット作となり、2005年には2代目へと進化。全長は従来から150mm延長し、全幅も拡大するなどして居住性が高められた。それは11年に発表された3代目にも同じことがいえる。ボディーの大型化に伴う快適性の向上とともに、フレックス7シーティングシステムの洗練度は増していった。3代目は〝ラウンジ・オン・ホイール〟のコンセプトの下に生まれ、文字どおりラウンジのようにくつろげるシートアレンジを実現するとともに、ボタン操作によるシートの格納が可能となった。このことからもわかるとおり、それまでのセダンやワゴンと同様、あくまでも人に寄り添ったオペルのクルマ造りの思想がこの7シーターミニバンにも貫かれているのである。
なお、22年現在、本国で展開されるLCV(商用バン)『VIVARO』の乗用車仕様に『ZAFIRA』の名が受け継がれている。
キャビンには2+3+2の7人乗り3列シートを配置。2列目/3列目を折りたたんだ際の最大ラゲージ容量は1705Lを誇る。
フレックス7と呼ばれるシートアレンジコンセプトを取り入れたことにより、様々な用途に対応できるようになった。
『ZAFIRA』のキャビンスペースを有効活用した燃料電池車の『HYDROGEN』は、パートナー企業との実用テストに供された。
安定したコーナリングフォームからもわかるとおり、フットワークには定評のあった『ZAFIRA』。2代目には電子制御ダンパーも用意された。
2011年のジュネーブショーで3代目のコンセプトモデルを公開。『AMPERA』との共通性を感じさせるヘッドライト形状が目を引く。
3代目は2016年にマイナーチェンジを実施。ブーメラン形の特徴的なヘッドライトは、オーソドックスなアーモンド形状に改められた。
最新モデルはプジョー『TRAVELLER』の兄弟車に当たる『ZAFIRA LIFE』。多彩な用途に用いられる点は歴代モデルに共通する。
取材・文/桐畑恒治
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