プレミアムは追わなくていい。
いいモノという印象のある、スマートバイなブランドになってほしい
ふたりの心に残る歴代のオペル車
竹下 そんなデザイン面も含めてオペル車の中で一番好きなのは『TIGRA』ですかね。スペインのバルセロナを中心に試乗したのですが、すごく注目されました。ガラスルーフからは太陽の光が燦々と降り注いで運転しやすくて気持ちよかった。すごくいい思い出です。そんな『TIGRA』の後に同じようなクーペのフォード『PUMA』とかが続いて、それ以降は4ドアやSUVなどいろんなカテゴリーのクーペが出ています。歴史的には、メジャーになれなかったかもしれないけど、小型車にクーペを取り入れたのは斬新でした。オペルにとってクーペは常に追いかけているテーマなのかもしれません。
加藤 『CALIBRA』もそうだよね。先進的なイメージで空力を突き詰めて、なおかつスタイリングも美しいクーペを出したことが評価されていたし、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)でもチャンピオンになっていた。でも、僕自身はやっぱり『OMEGA』かな。リアドライブの模範的なハンドリングと乗り心地、快適性を両立していたし、スペースも結構大きく取れていた。内装はちょっとプアだったけど、非常に優れたサルーンでしたね。ドイツ御三家とは違う匂いを醸し出していたと思います。
竹下 『カーグラフィック』では長期テストもやっていました。同じく『ASTRA』もワゴンと5ドアハッチバックもレポートしました。ジャーマンベーシックという意味では、フォルクスワーゲン『GOLF』がモデルチェンジした時に何と比較するかというと常に相手は『ASTRA』でした。その頃の御三家はCセグメントモデルを出していなかったし、当時プジョーやルノーもあったのですが真っ向勝負の相手は『ASTRA』でしたね。それだけ基礎体力の高いクルマだったということです。
『CORSA(VITA)』をベースとした『TIGRA』は1994年に登場。コンパクトハッチにクーペを融合させた意欲作だった。
『VECTRA』は『カーグラフィック』の人気コーナー「GROUP TEST」でもその高い実力が証明された。
OPEL初のピープルムーバー『ZAFIRA』は、ドイツの車庫事情もふまえた多彩なシートアレンジが特徴。
ワゴン車造りに定評のあるOPELの『OMEGA WAGON』は取材時もその使い勝手の良さで重宝された。
『CALIBRA』はスタイリングの良さのみならず、DTMでの活躍もあって読者の興味を惹く存在だった。
近い将来の導入が予定されている『CORSA』。ブランディングも含めOPELの動向に大きな期待が寄せられる。
新しい価値を見いだす力と今後の飛躍
加藤 ただ、輸入元が落ち着いて、ラインアップも充実してきたその頃、様々なブランドがプレミアムと言い出して輸入車でありながら、身近さゆえにそれを自分たちのキャッチフレーズとして使えなかったのが、オペルの不幸だったかもしれない。
竹下 今は高級感とかプレミアムの演出がすごく難しくなっていると思います。その価値観も多様化していますし。あのメルセデスでも迷いが見えます。最近EVのフラッグシップ『EQS』が出ましたが、それまでのグリルも否定しているし、押し出し感も薄まった。従来の価値観を引きずるのではなく、新しいことを模索している。そういう意味では、今のタイミングはオペルにとってはむしろチャンスと言えるかもしれませんね。
加藤 昔ほど声高にプレミアムを謳う時代じゃないしね。だからオペルも無理にそこを追わなくていい。身の丈に合った幸せを見つける、みたいな雰囲気が漂っている世の中に、単純に安いだけではなくて、価値への対価としてスマートな選択を提供できるようになるのがいいんじゃないかな。
竹下 時代の空気をよく読んで先取りしていければいいですよね。今、EVの世界では古いものを取り入れるという流れもありますし、例えばガソリン時代をオマージュして、あえてロングノーズデザインをやるというのも新たな価値を生むかもしれません。
加藤 今、ドイツではフォルクスワーゲンとシュコダを比べた時に、シュコダを選ぶほうが賢いよねっていうマトリックスがあるようで、実際にシュコダはマーケティングも上手。そういうところを見習うのもありなのかな。でも、日本で販売していなかった、この空白の期間にオペルも随分と様変わりしているんじゃないかな。最近のモデルの写真を見てもかなりカッコいいし、何か感じ取ったんじゃないでしょうか。何の根拠もないけど、職業的な第六感で、そう感じられるようなブランドに生まれ変わっているのかなと思います。
竹下 ステランティスにオペルが加わったのはポジティブなことなんじゃないでしょうか。フランス、イタリア、アメリカのブランドがあって、その中にドイツ的なクオリティーや質実剛健さが加わるのは、グループ全体として見ても悪いことではないですよね。
加藤 日本は保守的なマーケットだからブランドを浸透させるには少し時間がかかってしまうとは思うけれど、逆に言うと自動車業界って、たったひとつのヒットで成功することもある。だからオペルには自身の価値に早く気づいてほしい。そう簡単にはいかないかもしれないけれど、成功する可能性は十分あるし、何より自動車好きにとって選択肢が増えることはとてもいいこと。そういう部分でも今後の展開に期待しています。
OPELは空力を大事にしていて、デザインもシンプル。
常に現実的で人に寄り添ってくれる
取材・文/桐畑恒治 撮影/望月浩彦
160年の歴史を持つオペルのすべてがわかるブランドMOOK「&OPEL 未来を創るクルマ。」発売中
1862年の誕生以来、不断の進化によっていつの時代も時代も最先端のポップカルチャーであり続けたOPEL。そのブランドDNAとその魅力を、チーフデザイナーへのインタビューや歴史的名車の検証などをもとに解き明かすムック本「&OPEL」が発売されました。
ドイツの自動車メーカーOPELは、160年の歴史を持つ老舗ブランドです。日本との縁も深く、戦前から輸入され、2006年までは日本国内でも販売されていたので、ご存じ方はもちろん、実際に乗った/所有したことがある方も多いのではないでしょうか。
そして今、OPELが再び、日本に上陸するといわれています。今度、日本にやって来るOPELは、私たちがしばらく見ないうちに、すばらしくモダンで、ポップな佇まいに変身していました。ドイツ車としての信頼感と堅実さはそのままに、ガジェット感あふれるデザインやカラーリングからは、「どんな人生を愉しみたい?」と、クルマが語りかけてくるようです。そんな、ニュー・ジャーマン・カーで実現するライフスタイルのテーマは「リラックス」。
本書では、暮らしをアップデートするモダンジャーマンなクルマづくりの魅力を、160年の歴史とともに余すところなく、紹介します。
160年の歴史を持つオペルのすべてがわかるブランド大図鑑
『&OPEL(アンドオペル) 未来を創るクルマ。』
定価1650円(税込)A4変形判/132ページ
小学館刊
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104254
■本書のコンテンツ紹介
PART 1 OPELが提案するRELAX LIFE
●人気モデル「CORSA」「MOKKA」「GRANDLAND」徹底解剖!
PART 2 Pop&Future! OPELの秘密
- チーフデザイナー・Mark Adams インタビュー
- ファッションデザイナー・Marcel Ostertag インタビュー
- 「ASTRA」「MANTA」「COMBO LIFE」最新モデルの魅力
- OPELと相性抜群のライフスタイル名品セレクション
PART3 Just like an OPEL
- 注目のクリエイターが語るNEW OPELの魅力
- アンバサダーを務めるリバプールFC監督・ユルゲン・クロップ氏とOPEL
PART 4 ドイツから特報!元気なOPEL
- 「MOKKA」「CORSA-e」「GRANDLAND」現地試乗レポート詳報
- オペルCEO Uwe Hochgeschurtz氏インタビュー
PART 5 Republish of Historic car impression
革新的な挑戦を続けてきた自動車ブランドOPELの歴史
- 老舗自動車専門誌の編集者が語るOPELの魅力
- OPEL in Motorsports
- 「CORSA」「ASTRA/KADETT」「VECTRA」「OMEGA」「SPEEDSTER」「GT」「MANTA」「CALIBRA」「ZAFIRA」
PART6 「&OPEL」 Square
- FUN collection
- OPEL FUN in Japan
- OPEL Engineering History
- Logo transition of OPEL
- OPELディーラーの斬新なCI
【オンライン書店で購入する】
Amazonで購入する
www.amazon.co.jp/dp/4091042546
楽天ブックスで購入する
https://books.rakuten.co.jp/rb/16892406/?l-id=search-c-item-text-02