
部屋を借りる際は、家賃以外にもさまざまな費用がかかります。賃貸物件の情報を収集していると、『礼金』があるものとそうでないものがあることに気付くはずです。礼金の意味や、礼金ゼロの物件によくあるデメリットなどを見ていきましょう。
礼金の意味とは?
賃貸物件を借りた経験がある人でも、地域によっては『礼金』を払ったことがない場合もあるでしょう。敷金と同じようなものだと思っていると、トラブルに発展しかねません。
まずは、礼金の意味について理解を深めましょう。
部屋を借りるときに貸主に支払うお金
礼金の『礼』は『お礼』という意味で、賃貸物件を借りる際に借主が貸主に対して『謝礼』の気持ちを込めて支払うお金です。契約時に1回のみ、支払いが発生します。
まだ住宅が少なかった戦後の高度経済成長期に、借主が貸主に心付けを渡した風習が変化したものだとされています。どの物件でも礼金があるわけではなく、敷金・礼金なしとなっている場合もあるでしょう。
礼金は、貸主の考え方や戦略によって異なり、どの物件にも設定されているわけではありません。礼金がある物件だと余計にお金を使うことになってしまうので、初期費用を抑えたい場合は礼金ゼロの物件を探すのも一つの方法です。
西日本では「敷引き」と呼ばれる
礼金は、主に東日本を中心として発生し、同じ地域であっても礼金の有無や設定額はさまざまです。西日本には礼金の風習はありませんが、同じ性質を持つ『敷引き』があります。
敷引きは『敷金や保証金の一部を謝礼として渡すもの』で、本来であれば返ってくるはずの敷金の一部を貸主に引き渡す形式です。
敷引きの存在を知らないと、礼金と同じものを支払っていることに気付かずに、お得だと誤解してしまうので注意しましょう。
「敷金」とは異なり返金されない
礼金とセットで覚えておきたいのが、敷金です。敷金は、借主が貸主に対して支払い、貸主は『家賃の滞納分』や『原状回復費』にあてるために使用します。
退去時に、滞納分や修繕する部分がなければ全額が返金され、修繕する部分があったとしても差引額が残れば戻ってくる仕組みです。
一方、礼金は敷金とは違い、謝礼としての役割を持つので、退去時には戻ってきません。敷金と同じように返ってくると誤解していると、次の物件探しで費用が足りず困ったことになってしまうでしょう。
礼金の相場は?

(出典) photo-ac.com
物件探しをする際に礼金の相場が分からないと、適正な価格なのかが判断できません。事前に相場を知って、物件探しに役立てましょう。
家賃の1〜2カ月分が目安
礼金の額は、物件によって異なりますが、大体は『家賃の1~2カ月分』に設定されています。地域によって違いがあり、関東の都市部では1カ月分、関西の都市部では2カ月分となっている場合が少なくありません。
ただし、物件がある地域や、貸主にとって競合となる物件の数によっても変わってくるので、一概に何カ月分とは言い切れない部分もあります。
周辺にある物件が礼金を1カ月分に設定しているのに多く取ろうとすれば、集客に影響が及びます。そのため、周囲の物件と足並みがそろうように調整されているケースが一般的です。
参考:令和2年度 住宅市場動向調査 報告書 国土交通省 住宅局
減額交渉ができるケースも
礼金は敷金とは違い、家賃の滞納や原状回復などにあてるものではありません。貸主が「礼金を高くして空室ができるよりも、多少礼金を低くしてもすぐに部屋を埋めたい」と考えている場合は、交渉の余地があります。
交通の利便性がよく、常に満室の賃貸物件では交渉は難しくなりますが、『空室が多かったり利便性の面で劣ったりするケース』では、礼金を割引してもらえるかもしれません。
「礼金さえなければ今すぐ引っ越したいのですが、交渉できませんか?」というように、不動産業者に相談してみるとよいでしょう。
礼金ゼロの物件はお得?

(出典) photo-ac.com
引っ越しの際は、引っ越し業者への支払いや粗大ごみの処分費用など、何かと費用がかかるものです。そのため、節約のためにも礼金を負担したくないと考える人は多いでしょう。
しかし、礼金の存在だけにとらわれていると、逆に損をしてしまうことがあります。礼金ゼロの物件がある理由や、礼金ゼロの物件を借りる際の注意点などをチェックしましょう。
礼金がゼロ、または安い物件がある理由
周辺の物件は礼金ありなのに、一部の物件だけ礼金なしだと怪しく感じられるかもしれません。しかし、『経営上の理由』でゼロにしているケースもあるのです。
貸主にとって、空室は頭が痛い問題です。収入がなくなってしまうだけでなく、いざ物件を売却しようとしても買い手が付きにくくなってしまいます。
礼金をゼロにしたり安くしたりした方が部屋を借りてもらいやすく、いざ売却する際にも有利になるため、戦略的にそうしているのだと考えられます。
もちろん、訳あり物件の可能性もあるので、気になったときは不動産業者に理由を聞いてみるとよいでしょう。
家賃などに上乗せされている場合も
礼金がゼロだからといって、深く考えずに物件を決定するのはリスクがあります。その分、家賃や共益費などが高く設定されている可能性もゼロではないためです。
礼金は契約時に一度だけ支払えばよいですが、家賃や共益費は毎月支払う必要があるため、相場より高くなっていないか注意したいところです。一歩間違うと1カ月分の礼金を支払うより、ずっと高くなってしまったということにもなりかねません。
また、礼金がなかったとしても、退去時の『クリーニング費用』や『鍵交換費用』などが借主の負担となっていることもあります。契約してから後悔しないよう、必ず契約書の内容を確認しましょう。
構成/編集部
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