
テレワークによる5つの心身の不調(DEMON)、特に見過ごしがちな首の痛みには要注意!
2020年春に始まったパンデミックにより日本でもテレワークが進み、在宅での仕事が定着した。突然の緊急事態宣言を受け、充分な準備期間もないままに自宅での仕事をスタートせざるを得なかったという人も多いだろう。
仕事をするために最適化されたオフィスとは異なり、生活空間でもある自宅で長時間パソコンに向かっていて、心身に不調を感じることはないだろうか。
テレワークによる不調に関する調査
ニチバンが2021年7月に発表した調査結果によると、コロナ禍によりテレワークをしている人の43.2%が身体の不調を感じると回答。
不調の内容は男性の60.5%が「精神的なストレス」、次いで「肩こり」が58.1%、「腰痛」50.4%と続く。女性では75%が「肩こり」、62%「精神的なストレス」、59.2%「姿勢が悪くなる」。
オムロンが20〜50代の男女1000人を対象に行った調査では、テレワークの開始後、身体に不調を感じる人は全体の31%に止まったものの、肩こり、精神的なストレス、腰痛の順で不調と回答した。
不調の割合は軽度が多い一方、約27%が重度の不調を感じていることもわかった。
テレワークで起こる5つの心身の不調、DEMON
インドを拠点とし、ヘルスケアサービスを提供するアスターDMヘルスケアで副マネージング・ダイレクターを務めるアリーシャ・ムーペン氏は、パンデミック下の在宅ワークで起こる5つの心身の不調の頭文字を取って、DEMONとした。
DEMONはそれぞれ、D:Device addiction(デバイス依存)、E:Eye strain(目の使いすぎ)、M:Mental health(メンタルヘルス)、O:Obesity(肥満)、N: Neck pain(首の痛み)である。
1つずつ、順番に見てみよう。
D:Device addiction デバイス依存
デバイスとネットワーク技術の発達がテレワークを可能にしたが、仕事や勉強だけでなく、人付き合いまでもがオンラインに移行した現在、デバイス依存と無縁でいられる人はそれほど多くないだろう。
依存の自覚があれば、一定期間スマホやパソコンに触らない、いわゆるデジタルデトックスの習慣を取り入れてはいかがだろうか。
E:Eye strain 目の使いすぎ
デバイス依存で目を使いすぎた結果、近視や視力低下が報告されている。欧米では6歳から19歳の約40%が、アジアではさらに高い割合で子どもたちの視力に影響が出ている。
具体的には、ドライアイや頭痛、かすみ目などの症状が出るコンピューターディスプレー症候群が流行。
目の使いすぎへの対応策としては、定期的に眼科検診を受けるほか、意識的にディスプレイよりも遠い場所を見る動きを習慣にする、できるだけパソコンやスマホを見る時間を減らすことが有効だ。
M:Mental health メンタルヘルス
メンタルヘルスについては、パンデミックが始まって以来、すでにさまざまな場所で議論されてきた。人類が初めて経験する全世界的なパンデミックは、老若男女を問わず、すべての人にあらゆる面で試練を与えていることに疑いの余地はない。
規則正しい生活とネガティブなニュースに触れる時間を減らすこと、ポジティブ思考、適度に忙しくすること、家族や友人との交流といったセルフケアの基本を心がけることで、メンタルヘルスを守りたい。
O:Obesity 肥満
肥満は、コロナが浮上する前から存在した問題である。カロリー過多な食べ物やパソコン・スマホ依存、身体を動かす機会の減少が肥満に関係していることが知られている。
対応策もまた周知の事実ではあるが、規則正しい生活リズムと充分な睡眠時間の確保、定期的な運動、栄養バランスの取れた健康的な食事に加えて、タバコとアルコールを控え、リラックスしてエネルギー補給をする時間を定期的に取ることである。
N: Neck and back pain 首と背中の痛み
自宅でパソコンに向かって仕事をしていると、同じ姿勢を長時間続けてしまうことがないだろうか。長い時間姿勢を変えないでいると首と背中の筋肉が固まり、放っておくと首や背中の不具合から、激痛につながる可能性もある。さらに時間がたつと慢性的な痛みにつながり、治療のために病院や専門家に長期間通う結果ともなり得る。
首と背中の痛みや損傷を防ぐためには、スタンディングデスクやパソコンスタンドを使って立つ姿勢を取り入れるのが有効。また理想的な着座姿勢を促してくれる椅子への投資、腕や首、腰のこまめなストレッチ、1時間に1度程度の短い休憩といった対策も取り入れたい。
見過ごしがちな首と背中の痛みには要注意
香港のカイロプラクティック医師会会長、エリック・チュン・プーチュ氏が行った調査によると、「大多数の人が自分の着座姿勢に無頓着で、痛みを感じるようになるまで、首や背中を守るための行動を取ろうとしていない」ことがわかったという。痛みを感じるまでには相当の年月がかかり、悪い姿勢を続けていると髄脊が変形して理想的な曲線を損なうのだとか。
多くの研究の結果、姿勢の悪さにより背中の骨のずれや左右のアンバランスだけでなく、目眩や痺れ、胃腸障害が起こることが判明している。
首や背中の痛みを放置するとさまざまな慢性疾患につながり、一度慢性疾患になってしまうと治療が困難なのである。慢性疾患を防ぐためには、軽い痛みや違和感を軽く見て放置せず対処する必要があることがわかるだろう。
参考:Think you're safe at home? Think again. 5 household demons to be mindful about|WORLD ECONOMIC FORUM
Neck Pain in Office Workers During Covid Pandemic | 24-7 Press Release Newswire
文/森野みどり
編集/inox.