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集落をまるごとリノベーション!地方から情報を発信する「TAKIGAHARA FARM」に学ぶ働き方のヒント

2022.03.23

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

集落をまるごとリノベーションした「TAKIGAHARA FARM」

自然豊かな里山の風景が広がる石川県小松市滝ヶ原町。「TAKIGAHARA FARM」は、古民家6棟を改装した宿泊施設、レストラン、カフェ、バー&ラウンジ、クラフト工房から成る施設で、東京でファーマーズマーケットを運営するNPO法人「ファーマーズマーケット・アソシエーション」のメンバーが発起人となり、北陸古民家再生機構の協力を得て2016年にオープンした。

これからの時代に向けて新しい生き方、働き方を、自然や農、アートを通じて感じる場所として誕生した同施設は、IDÉE創始者であり、COMMUNE 246(現ComMunE)、みどり荘、IID 世田谷ものづくり学校など、時代を先取りした施設を生み出してきた黒﨑輝男さんがプロデュースを手掛け、古民家と周辺の自然を生かした地域の再生を目指している。

バンクベッド主体のホステル「TAKIGAHARA CRAFT&STAY」は、築100年の古民家を改装。時代を感じる建物だが一歩足を踏み入れると、ザハ・ハディッド、 アキッレ・カスティリオーニ、エーロ・サーリネン、ジャスパー モリソンといった時代を代表するデザイナーの家具が配置され、アーティスティックな空間が広がる。

「TAKIGAHARA CAFE」は、小松産のそば粉を使ったガレットを中心に、近隣で採れた旬の野菜や果物、敷地内にある「滝ヶ原ファーム」で育てている鶏の玉子などを使ったオムライスなどを提供。カフェ内にはギャラリーが併設され購入も可能。訪れた際には「ヴィンテージ漆器とこれからの九谷焼展」が開催されており、築100年以上の古民家から集められた漆器、九谷焼の陶磁器が展示販売されていた。

土蔵を改装したバー&ラウンジ「MOSS BAR」は、世界のナチュラルワイン、北陸の日本酒、日本のウイスキーを取り揃えている。2階はオーディオルームになっており、レコードコレクションを聴きながらくつろげるスペースに。

北陸の工芸、産業文化を伝える活動はTAKIGAHARA FARMの特徴のひとつ。米を貯蔵していた築80年の石蔵を改装した「TAKIGAHARA HOUSE」は2階建の宿泊棟。建屋の石蔵とバスルームに使われている石は、TAKIGAHARA FARMの近くにある石切り場から産出される滝ヶ原石だ。石文化は小松市の産業の礎となっており、滝ヶ原石は金沢城や小松城の石垣に利用され、戦後の最盛期には町内12箇所での採掘が行われていた。TAKIGAHARA FARMでは施設の随所に滝ヶ原石を用いている。

敷地内にある工房では地元の「山中漆器」の職人が木地を挽いたり、漆器を製作している風景を見ることができる。

「普段何気なく使っている器がどのくらいの手間をかけて作られているのか、知らない人も多いでしょう。生産者と消費者が近くにあるというのは大切なことで、TAKIGAHARA FARMはそれを体現できる場所。石川県は九谷焼、漆器など工芸文化が盛んで職人も多く、職人の手仕事を間近で見られるのは貴重な体験となります」(滝ヶ原クラフト アンド ステイ マネージャー 齋藤礼菜さん)

滝ヶ原の自然の中でニューノーマル時代の生き方や働き方のヒントを得る

TAKIGAHARA FARMを支えているのが、滝ヶ原の自然に魅せられて都会や外国から移住してきたスタッフたち。TAKIGAHARA FARMではさまざまなイベントやワークショップ、農業体験が開催されており、コロナ禍以前は外国人の滞在も多く異文化との交流も盛んだ。

マネージャーでツアー企画を担当している斎藤さんは東京出身。イギリス出身のマイロさんとオリオンさんは東京から滝ヶ原に2年前に移住してきた。

マイロさん「移住当時は新型コロナが始まった頃で、東京の生活に面白さがなくなり、田舎暮らしができる良い場所がないかと1年ほど各地でボランティアをしながら探していました。TAKIGAHARA FARMは若くて面白い人たちが集まっていて、今まで訪れた中で一番楽しかったことから移住を決めたんです。

移住当時はちょうどホステルの事業が始まった時期。ビジネスの手伝いをしながら、小松市の地域おこし協力隊にもなりました。それを機に音楽フェスのプロジェクトも始まり、『ishinoko』という音楽と美術フェスのオーガナイズに携わっています。

イギリスでは大学に入るまでは海に近い郊外に住んでいましたが、こうした山々に囲まれた自然の中に住んだのは人生で初めて。イギリスに住んでいたときよりも四季の移り変わりを肌で感じることができます。10年以上の都会生活で田舎暮らしの魅力を忘れていましたが、滝ヶ原に住んでみて、原点に戻ったという感覚がありました。自分には都会よりも自然の中で暮らす方が、相性が良かったと気づいたんです。

田舎暮らしは不便だと思われていますが、今はネットも発達していて生活に不便さを感じないし、都会と変わらない生活ができる。ただ、田舎暮らしで一番大事なのはコミュニティ。TAKIGAHARA FARMだけではなく、地域全体をさらに盛り上げるためには、さまざまな職種の人たちが集まることが重要なので、どうやってコミュニティを大きくしていくかが今後の課題です」(※下記画像左がマイロさん)

オリオンさん「マイロから紹介されて滝ヶ原を訪れ移住を決めました。ここから20分ほどの古民家のシェアハウスに6人で住んでいます。大都会だと四季の移ろいといえば温度が変わるぐらいしか感じられませんが、滝ヶ原にいると目に見えるものだけでなく、空気の香りなど五感で四季を感じることができます。

東京に来る前は、ロンドンで学生時代を過ごし、その後ファッションデザインの仕事をしていましたが、ロンドンはとにかく物価が高く、レストランでも日本の2~3倍の価格。経済的に難しいという事情に加え、金銭的、スペース的、時間的にも田舎の暮らしの方がクリエイティブな仕事ができることから、グラスゴーやマンチェスターといった、ロンドンよりも小さい街にクリエイターが移住しています。世界的にそうした傾向があって、田舎暮らしはクリエイターにとって当たり前となる時代が来るかもしれません」(※下記画像右奥がオリオンさん)

斎藤さん「雪に埋もれていた草花が芽吹いてくると自然のすごさが実感できます。採れたての山菜もおいしい。五感で自然を感じるのは都会にいると難しいですが、ここでは身近に感じることができます。

里山暮らしとはいえ、みんなが農業をやっているわけではなく、普通に仕事ができる環境でもあるので、ワークバランスの良さも魅力。もちろん農業に興味のある人もいるし、その中で他に天職と思える仕事が見つければ、両立できる環境がここにはあります。都会で身も心もぎちぎちになって仕事をしていることに比べれば、より本質的な生き方、働き方ができると思います」(※下記画像左手前が斎藤さん)

TAKIGAHARA FARMに魅せられてメンバーになったみなさんは、最初から目的を持ってやって来たという人は少なく、ホステルやカフェ、プロジェクト等、各々が自分の好きな活動を行いながら、さらに面白いことを見つけてビジネスに結び付けていくというパターンが多いとのこと。

「みんなそうだと思うけれど、最初来た時にやりたいと思っていた仕事と、実際にやっている仕事は少し違って、最初に考えていた以上に面白い仕事をしていると思います。

ただ、ビジネスとして成立させないとコミュニティも持続できないので、ホステルやカフェはビジネスとして維持する必要がありますが、トライアルとして損得抜きでまずはやってみるという事業もたくさんある。やりたいことがここならできそうと感じさせるのがTAKIGAHARA FARMなんです」(マイロさん)

【AJの読み】新旧を融合させ地域を活性化しながら都会や世界とつながる

取材に訪れた際は雪が絶え間なく降り、一面銀世界だったが、2か月後には雪が溶けて一斉に草花が芽吹き、風景が一変するとのこと。下記の画像は同じカフェを撮ったものだが、季節が変わるとこんなにも変化する。滝ヶ原は四季折々の変化を体で感じることができる場所だ。

スタッフのみなさんがTAKIGAHARA FARMの魅力として共通して挙げていたのが「季節の移り変わりを体感できる」「好きなこと、面白いことができる」「仕事ができる環境が整っている」。夏はワーケーションとして長期滞在する人も多く、仕事をしたり、畑仕事をしたり、ハイキングや温泉に浸かりに行ったりと、滝ヶ原の生活を満喫しているうちに移住を考える人もいるとのこと。

TAKIGAHARA FARMでは、カフェ、TAKIGAHARA CRAFT&STAYのディナーと、宿泊者以外でも利用できる食の施設がある。今後の展開に注目したいのが、イギリス人シェフのティムさんが手がけるディナーだ。

取材時にはあいにく不在だったが、ティムさんはイタリア、フランス、イギリスで30ほどのレストランでの経験があり、スタートアップも数多く経験して、メニュー開発やデザインなども手掛けてきたとのこと。

「彼はイタリアン、フレンチの分野で修業してきましたが、イギリスの家庭料理にも興味があって、アイディアにあふれる人。伝統や文化を深掘りしながら作る料理で、仕込みにすごく時間をかけています。新しいけれどなつかしさも感じる料理を作れる人です」(マイロさん)

ティムさんは滝ヶ原の野菜をはじめとした、おいしい食材が数多くあることに魅せられて移住を決意。日本の発酵食品にも興味があって、滝ヶ原でしか味わえないガストロノミーを追求している。さらに今年はカフェ横の倉庫を改装し、本格的な窯で焼くベーカリーショップを計画中。

将来的には料理、器、音楽までトータルで世界観を作り上げるレストランを目指しているとのことで、ひょっとしたら数年後には、世界一と称される「ノーマ」のようなレストランが滝ヶ原に誕生するかもしれない?

里山や古民家、工芸文化といった伝統を守りながら、農業、アート、食を融合させて地域活性化を促し、都会や世界とつながり情報発信していく。TAKIGAHARA FARMの活動はニューノーマル時代の生き方、働き方にヒントを与えてくれそうだ。

文/阿部純子

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