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【今月の一冊】心の奥底に潜む何かを見つめる米澤穂信の傑作「黒牢城」

2022.03.21

『黒牢城』米澤穂信、『ブラックボックス』砂川文次

 1月19日、第166回芥川賞・直木賞の受賞作が決定しました。直木賞は今村翔吾の『塞王の楯』と米澤穂信の『黒牢城』に、芥川賞は砂川文次の『ブラックボックス』に授賞されたのですが、今月はその中から米澤作品と砂川作品の紹介をしたいと思います。

闇に潜む光と誰にも開けられない黒い箱

 主君の家を乗っ取って、織田信長に重用され出世を遂げるも、突如信長に反旗をひるがえし、有岡城に籠城。戦況が不利に傾くと、妻を城に置き捨てて単身脱出し、結果、自分だけ天寿をまっとうしたと、毀誉褒貶(きよほうへん)の「毀」と「貶」ばかりが伝えられる戦国武将が荒木村重です。『黒牢城』はそんな村重を主人公に据え、翻意をうながしに訪れた黒田官兵衛を牢に幽閉したという史実をフックにした物語になっているんです。

 序章にあたる「因」と終章の「果」で4つの章をはさむという構成の物語の中、村重がじょじょに追いつめられていく籠城の様子と、そこで起きる謎めいた出来事を提示。その解を求めて、村重が智恵者として名高い官兵衛に会うため地下牢を訪れるというスタイルをもって、時代小説とミステリー双方の妙味を備えるに至っています。

 でも、この小説の魅力はそれだけにとどまりません。

 村重はなぜ謀反を起こしたのか。作者はその心中深くまで降りていって、「毀」「貶」の人に新しい光を当てています。同じように「誉」と「褒」の人・官兵衛の闇の部分にも目をこらし、読者を驚かせてくれるんです。このふたりの問答の中から深い人間観を引き出すことに成功しているうえ、悪因が悪果を生み出すばかりに思える世界にも、善因を生むことは可能なのだという感慨をもたらすラストが清々しい。すばらしいうえにもすばらしい受賞作と思います。

『ブラックボックス』の主人公は自転車便で働いている28歳のサクマです。営業所の中でも1、2を競う優秀なメッセンジャーなのですが、ある日、落車事故を起こしてしまう。サクマは事故をきっかけに、これが長く続けられる仕事ではないことを認識し、「ちゃんとしなきゃ」と気持ちをあせらせるんですが、これまでも「ちゃんとした」ところで長続きしなかった自分をどこかで諦めてしまっているような気配もあります。

 サクマには円佳という同棲相手がいるのですが、その他愛もない生活から一転、1行あけて始まる物語後半は刑務所内での話になっていく。この唐突とも思える切り替えが効いていて、サクマの刑務所内での生活を描く中、どうして彼が刑務所にいるのかを少しずつ明かしていく展開が“読ませる”小説になっているんです。

 自転車で街を走っている時に見かけた、ガラス張りでも中がどうなっているのかがわからないビルのように、人間の心の中にもブラックボックスはあって、サクマのふいにこみあげてくる怒りや理屈にならない思いもそこからやってくるということが、リアルな感触で伝わってくる文章表現がすばらしい。主人公の行動と内面を丁寧に描くことで、現代における息苦しさと生きづらさが我がことのように迫ってくる。若い世代に訴えかける力を備えた作品なのです。

『黒牢城』

『黒牢城』

著/米澤穂信 KADOKAWA 1760円

『ブラックボックス』

『ブラックボックス』

著/砂川文次 講談社 1705円

豊﨑由美
第166回芥川賞の候補作は5作全部が、それぞれに異なる読みごたえを備えていて秀逸です。とりわけ、乗代雄介の『皆のあらばしり』と九段理江の『Schoolgirl』はオススメ。こちらもぜひ!

前を向いて歩いて行こう!【編集部イチオシの3冊】

『あなたの中に眠る才能を楽しくお金に変える!「教える系副業」のはじめかた』

著/仙道達也 PHPエディターズ・グループ 1540円

『あなたの中に眠る才能を楽しくお金に変える!「教える系副業」のはじめかた』

■ 得意を生かして年収アップ!

副業に憧れる人は多いが、実際に行ない成功する人はというと……。本書では「好きなこと、得意なことを〝教える〟ことで副業とせよ」と説く。具体的な他者との差別化、集客のノウハウも伝授。年収UPを目指そう。

『人生を変える!理想の自分になる!習慣化メソッド見るだけノート』

著/古井雅之 宝島社 1430円

『人生を変える! 理想の自分になる!習慣化メソッド見るだけノート』

■ 習慣ひとつで自分が、人生が変わる

日々の生活を振り返れば、いくつもの無駄な習慣があるはず。それらを排除し、なりたい自分、達成したい目的のために新たな習慣を身につけよと説く。イラスト多用で読みやすく、読後に自分を変えたくなること必至だ。

『コロナ後 ハーバード知日派10人が語る未来』

編/佐藤智恵 新潮社 1056円

『人生を変える! 理想の自分になる!習慣化メソッド見るだけノート』

■ 来るべき世界で活躍するために

コロナ禍が収束する日は必ず来る。その時に我々は何をすべきか。日本経済が再び活況を呈するには何が必要なのか。ハーバード大学で教鞭をとる10人の知日派教授たちの言葉から、その日以降の自身を見いだしたい。

文/編集部

※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2021年1月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。

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