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GIGAスクール構想の下で学校教育のICT化を促進する民間サービスの成功事例と今後の課題

2022.03.15

教育現場では今、ICT化に力が注がれている。文部科学省による教育改革案「GIGAスクール構想」に基づき、小学校、中学校、高等学校で児童・生徒(以下、生徒)1人に対して1台の端末整備や、学校教育に民間のICTサービスを取り入れるなどの取り組みが進んでいる。

こうした教育が進むと、生徒にはどのようなメリットがもたらされるのか。また現状課題について、ICT教育システムを導入している学校の事例や民間サービスから探る。

学校の授業+自主学習をサポートするサービス

「スタディサプリ」イメージ

学校の授業は今、ICT化が進められているが、民間サービスを利用しながら効率的に実施されているケースがある。

例えば、小中高校生向けの4万本以上のプロ講師の授業動画が見放題の、リクルートが提供するサービス「スタディサプリ」がその一つだ。すでに全国の小学校、中学校、高等学校等での導入が進んでいる。

学校向けは個人向けサービスとは内容が異なり、講義動画に加えて生徒の定着度に応じて最適な課題を配信できるシステムが備わっている。

●学校の利用目的

「スタディサプリ」イメージ

その利用目的は様々。授業の理解度の確認テストや、課題についての講義動画の配信、授業前の予習としての活用などがあるそうだ。

株式会社リクルートの教育支援事業企画担当 杉村哲平氏は、学校におけるスタディサプリの活用法について次のように述べる。

「基本的な活用として、先生は授業で実施した内容の理解度を『確認テスト』で生徒のつまずきポイントを把握、それぞれの状況に応じた課題として講義動画を配信します。動画は生徒がつまずいたポイントに合わせて先生が課題を選んで配信することもできますし、自動で生徒に合わせた課題を配信することも可能です。生徒は、配信された講義動画を視聴し理解を深めます。先生は、生徒の学習履歴や、課題の実施有無を管理ツールから確認ができるので、それぞれの状況に応じてコミュニケーション方法を考えたり、次の授業の内容やフォロー施策を検討することもできます。

学校によっては、復習としてだけでなく授業実施前の予習として該当する講義動画を課題として配信し、生徒が事前に見て予習するといった使い方をしているところもあります」

例えば、群馬県の吉岡町立明治小学校では、スタディサプリの活用方法は学年によって変えている。1~2学年は算数の家庭学習として用い、3学年は2学年で習った範囲の宿題配信、4学年は理科や算数の宿題配信、5学年は算数の家庭学習、6学年は理科と社会の宿題配信に加え、授業中の活用も行っているという。

活用効果として、上の学年や中学校での学習に興味を持った生徒が、自主的にスタディサプリで動画を視聴するようになった。また、教師側は授業中に生徒の理解度を可視化できるため、生徒の理解度に合った授業展開ができるようになったという。

●生徒のメリット

スタディサプリがあることで通常の授業にプラスして、生徒はどんなメリットが得られるのだろうか。杉村氏は次のように述べる。

「個別に最適な課題が配信されたり、学習状況に合わせた先生からの指導を受けることができるため、取り残されたり授業についていけないといった状況を防ぐことができます。また理解が進んでいる生徒にとっては、先回りした学習も可能です。

またスタディサプリで知識を習得し、対話的な授業の中で知識を活用しながらより深い学びにつなげることができます。

その他、地域によっては塾や予備校などがなく、学校以外で学ぶ機会が限られた環境だったり、部活動や習い事で忙しく勉強する時間が割けないといった状況の子どももいます。そういった子どもにおいても、時間や場所を選ばず、より効率的に知識を習得することができるのもメリットの一つです」

●教師側の活用術

スタディサプリは、教師側にとってどのような活用ができるのだろうか。学校の授業と合わせるなどの必要性は?

「スタディサプリは、学校の教科書に準拠した講義動画・テストとなっているため、先生がスタディサプリの内容に合わせる必要はありません。しかし、動画で講義をしている講師は有名塾の人気講師など実力派の講師陣によるものであるため、学校の先生が動画を見て自身の教え方を勉強したり、スキルアップのために活用しているといった先生もいらっしゃいます。また、国語や算数、英語などの積み上げ学習の教科についてはスタディサプリを中心に教え、対面で先生にしか教えられない探究的なまなびや主体性を引き出すようなまなびに時間を割くようにしている先生や学校も出てきています」

●学校導入における、現状課題

現状、スタディサプリを学校に導入する際にはどのような課題があるのだろうか。

「小中学校では、ICT端末の一人一台整備がほぼ完了していますが、高校ではまさに整備中であり、Wi-Fi環境が整っていないといったところもまだまだあるかと思います。スタディサプリは学習支援のツールの一つですが、基盤となるインターネット環境の整備に関しては、我々も端末を貸し出す等、できることをご支援しています。またICTサービスに慣れていない学校も多いと思いますので、リクルートの社員やサポートセンターが伴走して活用いただけるようサポートしております」

スタディサプリは、環境面やITリテラシーが整い始めている学校については、多くの学校でうまく活用されている。しかしその環境整備やリテラシー面ではまだまだ追いつかないところがある。その辺りが今後の課題となりそうだ。

Chromebookの活用支援

現在、小中高に導入が進んでいる1人1台の端末。具体的にどのような端末なのか。

ICT市場調査コンサルティングのMM総研が、2020年11月から2021年1月にかけて実施した「GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査」において、全国の自治体に尋ねたところ、GIGAスクール構想で調達する端末総数は748万7,402台となり、OS別では「Google Chrome OS」が327万8,110台で最多、43.8%のシェアとなった。次いで「iPadOS」が210万7,935台で28.2%、「Microsoft Windows」が210万1,357台で28.1%だった。

Google Chrome OSを搭載した「Chromebook」は、特に人口密度の高い都市部での採用が多かったそうだ。

そのシェアNo.1のChromebookについて、学校教育市場に特化したICTメーカーであるチエル株式会社は、学校向けに運用管理や協働学習、安全な活用、学習指導を支援するソリューションを提供している。代表取締役社長 粟田輝氏に、学校現場における端末利用についての課題を聞いた。

●学校におけるChromebook等の利用課題

・新しいツールの活用

「多くの先生は、初めてGoogle for Education(※)を使うことになるので、一から使い方を覚える必要があります」

※Googleの教育機関を対象とした教育プログラムの総称

・情報モラル教育の必要性

「今の子どもたちにとってインターネットは幼少期から触れることが多く、身近なものになっています。しかしネットの危険性や、ネットの情報を見極めていく方法を正しく学ぶ機会はそう多くありません。1人1台端末を使用した学びのためには、子どもたちが自身で情報を正しく活用する力を身につける必要があります」

・タイピング

「Chromebook等の活用を進めるためには、キーボード入力のスキルが必須です」

・クラウドの概念の理解

「Chromebookはほぼすべてクラウド上で操作するため、共有や保存の概念を新たに学ぶ必要があります」

●生徒へのメリット

「リアルタイム画面送信機能」イメージ

チエルは、Chromebook活用における様々なサービスを提供している。例えば、Google Workspace for Educationの学習履歴を教師が指導に活用できたり、同ツールの管理業務を学校現場に合わせて効率化できたりする学習指導支援ツールがある。また、授業や協働学習を支援するツールやWebフィルタリングツールもある。

これらを学校側が活用することで、通常の運用にプラスして、生徒はどんなメリットが得られるだろうか。

「安心してChromebookを活用していただくにあたって、必要な機能を持っています。

例えば、協働学習支援ツールでは、リアルタイム画面送信機能で、みんなの画面を映し出すことで、いま、他の生徒がどのようなことを考えているのか、別の視点がないか、気づくきっかけができます。

学習指導支援ツールでは、先生が生徒の学習履歴を可視化できることで、生徒一人一人に最適な指導ができるため、生徒は自分にとって最適な指導を受けられます

また、ログイン時にキーボード入力がむずかしい生徒であっても、自分専用のQRコードをかざすだけで簡単に端末を使い始めることができる機能もあります。

フィルタリングツールを活用することで、有害なサイトがブロックされるため家庭でも学校でも安心してネットを使うことができ、子どもたちをトラブルから守ります」

「QRコードログイン」イメージ

●学校導入における現状課題

本サービスを学校に導入する際には、現状、どのような課題があるのだろうか。粟田氏は次のように述べる。

「学校現場でICT端末とインターネットの活用が進むことで、ネットワークが混雑してしまい、動画視聴がむずかしくなったりすることがあります。その点をどのように解決するかが課題です。また、自治体様によってアカウントの運用や活用の仕方が異なるため、様々なニーズにお応えしながら開発を継続する必要があります」

学校現場において、現在、ICT化が進められている。まだまだDXとまではいかない段階かもしれないが、今後、学校教育についても新たな革新がもたらされる日が近づいているといえる。

【取材協力】
「スタディサプリ」学校向けサービス
チエル

【調査出典】
MM総研「GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査」

取材・文/石原亜香利


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