光触媒を搭載した保鮮ボックスで、食品が常温でも腐りにくいってホント!?
シャープ出身の染井潤一社長が立ち上げた光触媒のベンチャー企業であるカルテックから昨年12月、常温保鮮ボックス「FOOD FRESH KEEPER(フードフレッシュキーパー) KL-K01」が発売された。
同製品は、光を当てることによる抗菌・抗カビ効果を発揮する光触媒を応用し、食品などのカビの発生や腐敗を防ぐ、業界初の光触媒を搭載した常温の食品保管庫だ。
実は筆者は、果物やパンが大好物でスーパーなどに買い物に出かけると、セール品をついつい買い過ぎて、長期保管によりダメにしてしまうこともしばしば。
そこで、このフードフレッシュキーパーがあれば、そんな失敗を防ぎ、果物などを長期間に渡りおいしく食べられる上、廃棄による食品ロスの低減に貢献するのでは?と胸が躍った。
ということで、本当にそんな画期的な効果が期待できるのか試したくなり、製品を入手して実証実験を行なってみることにした。
光触媒を活用して食材を長持ちさせる!?
まずは、フードフレッシュキーパーの概要を紹介をしよう。そのデザインは、白を基調としたシンプルでとても清潔感があるため、さまざまなインテリアにも馴染みやすい。さらに、扉を開けるハンドル部分には、奈良県吉野郡の吉野桧の間伐材の端材が利用されており、やさしい木の温もりが感じられる。
奈良県吉野郡の吉辰商店が製作したハンドル部分
付属品は、トレイ、ACアダプター(1.5m)、取扱説明書
本体背面のスイッチ等
ボックスのサイズは、幅370mm×奥行256mm×高さ235mmで、容量が約10リットルとなっており、イメージ的には、よくある正方形の食パン1斤にバナナ1房(4~5本)、リンゴ2個が一緒に収まるサイズ感。2~4人家族で使用するのであれば、大き過ぎず小さ過ぎないちょうどよい大きさだと思う。
ボックス内の両脇には、ダンパーが取り付けられているため、扉を閉める際にやさしく稼働するような配慮も
そして、フードフレッシュキーパーに搭載されている光触媒は、同社の扱う空気清浄機に採用されているものと同様のもの。この光触媒フィルターに光を照射することによって、強力な酸化力が発生。その酸化力を利用して、空気中の悪臭成分や有害物質などを水と二酸化炭素に分解するという。
つまり、空気清浄機が部屋をキレイにするのと同じように、ボックス内の環境をキレイにすることでカビ菌の発生を抑制したり、果物を腐らせるガスを分解することができるという仕組みになっている。
ボックス内中央の奥にあるシルバーのフタ裏に光触媒フィルターが取り付けられている
光触媒フィルター
なお、この取り付けられている光触媒フィルターは、定期的に80~100℃の熱湯に15分以上、浸け置きした後に天日干しすれば、何度でも利用が可能なのでわざわざ買い替える必要もなく経済的。さらに、使用時間が約3か月を超えると、お手入れ時期をランプで知らせてくれるという機能も付いている。
実験スタートしたのだが…失敗!?
いよいよ実験スタート。その方法は、なるべく同条件となるように同じ生産(収穫)日や大きさの食品を2つずつ用意。それをフードフレッシュキーパーに保管した群とそうでない群と分けて、どのような変化が起きるのか経過観察するという単純なもの。
そして実際に用意した食品が、食パンと切り餅、みかん、バナナという、いかにもカビが生えたり傷みやすいものばかり。ちなみに、より厳密な比較実験となると、本来ならフードフレッシュキーパーを2台用意して、電源のオン・オフの違いで観察するというのが正しいのだろう。
ただ、一般家庭を想定しての実験のため、今回はボックス内とそのすぐ近くのテーブルの上での比較となった。ただし、テーブルの上の食パンと切り餅に関しては、そのままむき出しで置いておくのもフェアに思えないため、フードカバーすることとした。
と、ここで、先に結論から述べてしまおう。実は、今回の実験では、予想していた半分程度の結果しか出せずに失敗に終わった。というのも実験を開始した1月は、乾燥した日が続きカビが繁殖しづらく、食品がなかなか腐りづらい環境であった。
そのため、結局、25日間も経過観察したのだが、カビが発生することがなかったのだ。ただ、そんな中でもバナナやみかんなどには変化があったので、以下に報告しておこう。
■実験開始から1日目
フードフレッシュキーパー内
テーブル上
実験開始の翌日には、フードフレッシュキーパー内でもテーブル上でも、切り餅にひび割れが発生。この時点で、乾燥などの実験環境の不適切さに気づいていれば、ムダな時間を費やすことがなかったのだが……
■実験開始から4日目
フードフレッシュキーパー内
テーブル上
ほかの食品に変化がない中、バナナに明らかな違いが現れた。しかも、フードフレッシュキーパー内のものはほぼ変化がないのに、テーブル上のバナナにはシュガースポット(黒い斑点)が目立つようになってきた。
■実験開始から8日目
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
8日目ともなると、フードフレッシュキーパー内のバナナにもシュガースポットが現れ出した。一方、テーブル上のバナナは、全体的に黒い斑点に覆われるようになり、手で触るとやわらかさを感じる。
■実験開始から14日目
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のみかん
14日目あたりとなると、みかんにも違いが出てきた。フードフレッシュキーパー内のみかんは、スタート時点とあまり変わらない一方、テーブル上のものは、写真では見づらいが表面にシワが多くなってきた。
■実験開始から18日目
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
18日目では、フードフレッシュキーパー内のバナナも黒くなってきたが、反対面はそれほどでもない。一方、テーブル上のバナナは、かなり黒くなった上、しぼんできた様子。
■実験開始から25日目(最終)
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
最終となる25日目では、フードフレッシュキーパー内のバナナも相当黒くなってきた。一方、テーブル上のバナナは、真っ黒くなった上、かなりしぼんでしまった。念のため皮を剥いて確認してみたところ、フードフレッシュキーパー内のバナナは、少しやわらかいものの、そのままおいしく食べることができた。ただ、さすがにテーブル上のバナナは、やわらかすぎる上、発酵臭が強いためそのまま食べることができず、料理の下味として使用した。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のみかん
そして、みかんは、フードフレッシュキーパー内のものも多少シワが出てきたのだが、以前のものと比較しないとわからない程度。一方、テーブル上のみかんは、明らかにシワが深くなり、手で触ってもざらつきを感じる。
なお、食パンに関しては、見た目がほとんど変わらないまま乾燥によって、乾パンのようにカチカチになってしまった。さらに、切り餅に関しても、実験開始の翌日にひび割れが発生した状態のままであった。
実験に再チャレンジ!
そして、前回の実験で半分失敗したような中途半端な状態で終わるわけにもいかず、再度チャレンジを。その方法は、基本的には前回と同様なのだが、今回の実験対象に新たにリンゴを加えてみた。これは、リンゴから発生するエチレンガスが、ほかの果物の成熟を促す働きがあると聞いたことがあるためだ。
なお、肝心な実験環境なのだが、筆者の手狭な事務所ゆえ部屋を変えるということが不可能なため、まずはちゃんと暖房を効かせるようにした。というのも普段は、原稿を執筆する際にあまり暖かいと眠くなってしまうため、冬は厚着をして凌いでいるのだが、これを一般家庭の冬場の適切な室温といわれる18~22度になるように心がけた。
さらに、暖房によるさらなる乾燥を防ぐためにも、勤務時間中は加湿器を稼働させるようにして再チャレンジした実験結果が以下の通り。
■再実験開始から3日目
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
再実験でも、やはりバナナに明らかな違いが現れた。フードフレッシュキーパー内のバナナにそれほど変化がないが、テーブル上のものはシュガースポットが目立つようになってきた。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上の切り餅
さらに切り餅では、フードフレッシュキーパー内のものに前回同様のひび割れが発生したのだが、テーブル上のものは変化なし。
■再実験開始から7日目
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
7日目でフードフレッシュキーパー内のバナナにもシュガースポットが現れ出した。一方、テーブル上のバナナは、だいぶ黒くなってきてしまった。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上の食パン
カビが発生したテーブル上の食パン
そして、いよいよテーブル上の食パンにカビが発生しているのを発見!一方のフードフレッシュキーパー内の食パンは、耳の部分がやや固くなっているものの大きな変化がなかった。
■再実験開始から16日目(最終)
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のバナナ
16日目ともなると、テーブル上のバナナは、だいぶ黒くなってしぼんできてしまった。一方、フードフレッシュキーパー内のバナナは、シュガースポットが多くなったとはいえ、まだ果肉にもハリがあり美味しく食べられる状態であった。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上のみかん
みかんについては、フードフレッシュキーパー内のものは、表面にツヤとハリがあり実験スタート時とあまり変化がない一方、テーブル上のみかんは、シワシワになってきてしまっている。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上の切り餅
そして、テーブル上の切り餅にもカビが発生してしまった。一方、フードフレッシュキーパー内のものもは、ひび割れができたままでほとんど変化がなかった。
写真左がフードフレッシュキーパー内、右がテーブル上の食パン
さらに、食パンについては、フードフレッシュキーパー内のものは、多少固くなっているものの、見た目に大きな変化はなかった。一方、テーブル上の食パンのカビは、かなり増殖してしまっており、これ以上の実験の継続は不要と判断した。
なお、リンゴに関しては、16日間では見た目や手触りなどにそれほど変化や違いが感じられなかったため、割愛させていただいた。
まとめ
さて、2回の実証実験を行なってきたが、明らかにフードフレッシュキーパーで保管した方が、食品のカビの発生を抑制できたり鮮度を保つことがわかっただろう。もちろん、同様の食品(常温保存の食品)を冷蔵庫や冷凍して長く保存する方法もあるのだが、味や鮮度が落ちる場合があったり、解凍に手間がかかったりすることも多い。
そう考えると、このフードフレッシュキーパーなら、常温保存の食品を鮮度を長く保ちつつ、おいしく食べられる上、廃棄による食品ロスの低減につながるので個人的には超おすすめだ。しかも、付属の光触媒フィルターは、定期的に浸け置き洗いするだけで継続利用が可能なので、ランニングコストも抑えられてうれしい限り。
ただ注意して欲しいのが、いくら鮮度を保つといっても限度があるため、食品に表示されている消費期限を参考にしたり、状態をよく観察して早めに消費するようにしてもらいたい。
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取材・文・撮影/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)
「CanCam」「Oggi」「Domani」などのファッション誌やサイトの編集に長年にわたり携わる。現在は、DIMEにてクルマや家電、グルメ、ファッション情報、また小学館Men’s Beautyでは、男性に向けた美容・健康法、コスメ情報なども発信。