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不動産業界が炭素排出量ネットゼロを達成するために必要な条件

2022.03.11

パリ協定以降の数年間、ほとんど炭素排出量に変化がなかった

英国の独立系資産運用グループ・シュローダーはこのほど、不動産投資でネットゼロを達成するための方法を分析し、事例を紹介するレポートを公開した。詳細は以下の通り。

建築物からの二酸化炭素排出量の大幅な削減が不可欠であることは、周知の事実。しかし、実際の行動はおろか、現実的な解決策も中々見えてこない。今こそ、どうすれば達成できるかを考える時といえるだろう。

曲を作っても、誰も歌わなければその行為にほとんど価値はない。2015年に署名されたパリ協定は、大きな賞賛を浴びた。2050年までに正味のカーボンニュートラルな世界を目指すという目標を掲げ、地球温暖化を1.5度に抑えるためには2030年までに炭素排出量を45%削減する必要があった。

先日の第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で確認されたことは、残念ながらパリ協定以降の数年間でほとんど炭素排出量に変化がなかったという厳しい現実だった。Covid-19のパンデミック危機は、経済全体を閉鎖させ、世界の炭素排出量を減少させたため、楽観的な見方をもたらした。パンデミックが一定の季節に繰り返し発生するようなエンデミックになりつつあることは喜ばしいことだが、残念なことに炭素排出量の削減効果は薄れてしまった。

改善に向けた実践的かつ協調的なステップは遅々として進んでいない。最近開催された不動産業界のイベントでは、重要な市場参加者から次のような言葉が聞かれた。「これはまさに綱渡りだ。市場との調和を保ちつつ、枠組みの先を行くのは避けたい」。

これは、ネットゼロに移行するためのソリューションへの投資や施策の実施に関する質問への回答だった。市場全体がこのような考えを持ち続ければ、炭素排出量の40%近くを占める私たちの業界は変わらないと思われるが、私たちを取り巻く環境は変わっていくのだ。

ネットゼロへの移行を視野に

不動産は、2030年までにオペレーショナル・カーボン(物件運営時の総排出二酸化炭素)のネットゼロ、2050年までにエンボディド・カーボン(建築時の総排出二酸化炭素)のネットゼロの両方を達成する必要がある。

上記の基準に従って効果的に移行するためには、時間的に不動産業界はいくつかの重要なハードルをクリアしなければならない。2050年に存在すると予測される建物の40%、インフラストラクチャーの75%はまだ建設されていないが、これらの新しい建物は、ライフサイクル全体を通してネットゼロ・カーボンにする必要がある。

これには、建築材料を作成する過程で発生する炭素も含まれ、2030年までに少なくとも40%の削減、先進的な案件では少なくとも50%削減の達成が求められる。2030年までに、新築物件の100%が運営面でネットゼロ・カーボンとなることが求められているが、これはそれ以上のことを意味する。

現在のヨーロッパの物件の80%は、2050年になっても現存するため、2030年までにすべての物件のエネルギー効率を高めるための改修を完了させるか、少なくとも改修を進めていなければ、この目標を達成することはできない。

結束力と実用性、ネットゼロを達成する方法

2015年のCOP21では190カ国以上が気候変動枠組条約に合意したが、COP26ではこの合意を支持する実際の要件への解釈が広まったと結論づけた。結果として、政府のガイドラインや不動産業界の基準はバラバラで、完全に整合がとれているとは言えず、最悪の場合には、気温上昇を1.5度未満に抑えるための、ネットゼロの実現は間に合わなくなるだろう。

世界人口の85%を擁し、経済と人口の急激な成長が予測され、開発状況もそれぞれに大きく異なる新興国も含めて、より協調的かつ焦点を絞った行動が求められる。

おそらく最大の発見としては、不動産業界では運営時の排出削減よりも、データ収集や理論上のエネルギーラベルに焦点が当てられてきたということだ。もちろん、排出量の削減は測定しなければ達成できないが、報告だけで及第点やグリーンの評価が与えられると、不動産業界は誤った安心感に陥る可能性がある。

実際の排出量は、テナントの排出量も含めて、建物全体やその運用、廃棄物を対象とした対策によってのみ削減することができる。このアプローチは、最終投資家、不動産管理者、テナント間の協力に大きく依存する。

ネットゼロの達成に向けて含まれる内容とは?

運営時の二酸化炭素排出量は、テナント、不動産管理者、オーナー、投資家の緊密な協力のもと、LED照明の設置、ビル管理システム(BMS)の最適化、暖房・換気システムのアップグレード、出力測定などのエネルギー効率化対策によって削減することが可能だ。

建築時の二酸化炭素排出量の削減には、設計、建築材料、建設方法、納品、運用の委託にいたるまで、バリューチェーン全体の炭素分析が必要だ。このようなアプローチは、建物のライフサイクルの価値とカーボン・エンジニアリングに報いるものでなければならない。

上記を達成するためには、「建替えではなく改修」というように考え方を改める必要があり、また建物は「理論上」ではなく「運営面」を意識して、現実に即した形で設計されなければならないだろう。

出所:シュローダー、上記は例示を目的としている。

炭素分析は、財務分析と並んで、不動産鑑定における重要な要素になる必要がある。環境への影響を考慮後の利益を検討する必要があり、明確な炭素価格を代用として使用することで、この問題には明確に対処することができる。

カーボン・オフセットの購入が不動産ポートフォリオのネットゼロを達成するための最善の方法でないことは、不動産業界で一般的に合意されているが、このオフセットの購入が一般的に否定される理由は妥当ではないと我々は考える。

ネットゼロを達成するためにカーボン・オフセットを購入することは、経済的利益を損なうため、実行不可能であるという主張だが、これは的外れといえるだろう。炭素排出のコストは、事実上すでに存在している。

つまり、気候変動による混乱を予測するための時間割引コストは、不動産業界にとって莫大。このような将来のコストにいつまでも「ただ乗り」することを、より広い社会全体が、あるいは業界自体でさえ受け入れるとは思えない。

これらの暗黙の炭素排出のコストは、資産の引受においても考慮されるべきだ。そうすることで、適切な投資判断が可能となり、長期的に持続可能な財務パフォーマンスを発揮するための準備が整うだろう。

不動産ポートフォリオに組み込まれた炭素排出に関連するこれらの暗黙のコストの適切な代用手段は、市場で自主的に取引されているカーボン・オフセットの価格であると考えられる。シュローダーの調査では、暗黙の炭素コストをオフセット価格で資産化することは、家主が管理する炭素排出量を実際に約70%削減するために必要な設備投資の、非常に優れた代用手段であると結論付けている。以下に例を紹介する。

実際の事例の紹介

シュローダーのサステナビリティ戦略では、2019年にネットゼロを掲げ、二酸化炭素排出量の削減に意欲的に取り組んでいる。私たちのマンデートの1つであり、ドイツの不動産(主にオフィス)に投資し、4.5~5%を収入目標としているものを例として取り上げる。

物件運営時の総排出二酸化炭素は、基準年に年間約7,000トンだった。グリーン電力の契約は未締結で、純粋に建物からの排出にのみ焦点を当てるため、この数字はテナントによる消費分を除外している。大半の物件で初回のエネルギー監査が実行済みであり、現実的な目標値とプロジェクト費用を設定することができた。

資産効率の測定で、短期的には500トンの削減が可能。グリーン電力の調達により、排出量は3,800トン削減する。そこから地域暖房を確保するが、その内の40%程度を再生可能エネルギーで賄う。残りの排出量の約5~10%は、オンサイトの再生可能エネルギーを導入することで対応し、推定2,000トンの炭素排出量が残る。

これらの炭素排出削減を実現するための設備投資額は、約1,200万ユーロと予測される。興味深いことに、ポートフォリオの実際の排出量を7,000トンから2,000トンへと70%以上削減するためのこの投資額は、炭素市場で実際の炭素排出量の70%分の炭素クレジットを購入するコストと同程度だった。

建物のエネルギーコストの削減は、最終的にテナントの運営コストに貢献し、二酸化炭素排出量の改善とともに、テナントが喜んで支払うべき重要な価値をもたらす。

環境は、いずれ何らかの形で私たちに対価を要求する不動産業界は、「枠組みの先を行くのは避けたい」という考えから脱却していく必要がある。私たちは、すべての利害関係者にとって正しい結果をもたらすために自主規制を行い、短期的な利益を追求するのではなく、長期的な妥当性とパフォーマンスを重視するインセンティブを資産運用会社に与えることができるのだ。

解説/ソフィー・ヴァン・オステロム氏
グローバルヘッド・オブ・不動産

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出典元:シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

構成/こじへい

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