メタバースを新たな社会基盤とするために欠かせないのが、膨大なデータを送受信し、処理できるインフラの構築だ。NTTが進める次世代の情報社会基盤構想「IOWN」はメタバースをどう支えるのか。NTTの進めるメタバース実現に向けた取り組みを取材した。
高速クラウド&ネットワークで高い没入感を実現
「XRは働き方や学び、イベントなどがオンラインへと移行する中で生じた様々な課題を解決し、経済活動と感染対策を両立させるニューノーマルに欠かせない存在になるでしょう」と、NTT XR推進室の渡邉由紀さん。NTTグループでは、VR空間プラットフォームの「DOOR」をはじめ、VRを活用したデジタルオフィス、ヘッドセットを一括制御するシステム、ARを用いた作業支援や街ナカでのAR活用など、すでにVR、ARの幅広い技術・サービスの開発に取り組んでいる。今後はグループ各社が手がけるこうしたXR関連技術・サービスを「NTT XR」として統一し、VR、ARを統合したサービスプラットフォームとして提供していく計画だ。
「XRのサービスを設計するにあたって意識しなければならないのが、ユーザーの多様性と、バーチャルとリアルのシームレスな連続性です」と渡邉さん。バーチャルによってリアルの価値がより高まるというように、両者を近い存在にし、かつ社会的に誰も取り残さないようにすることが重要だと話す。
一方で、バーチャルをリアルに近づけるには技術的な課題もある。通信インフラもそのひとつだ。インターネットのデータ流通量は、2025年までの十数年で約90倍に増加。併せてIT機器やサーバーの消費電力量も急増する。半導体技術が頭打ちといわれる中、NTTが提唱しているのが、通信からデバイスまですべてに光技術を用いて、高速、高品質・大容量、低遅延なネットワークを実現する「IOWN構想」だ。
例えば、今はユーザーが使用する端末によって、XRの没入体験にばらつきがあるが、IOWNによってクラウドで処理できる情報量が劇的に増え、またそれをリアルタイムに届けることができれば、ユーザーの環境を問わず、誰にでも同じように高い没入体験を提供できる。
さらに将来は、映像(視覚)や音声(聴覚)だけでなく、NTT研究所などで研究が進められているように、人間の五感に関する様々なデータも送受信可能となる。そうなればバーチャルでの体験は、よりリアルの体験に近づくことになるだろう。
「NTTではXRによって、リアルとバーチャルの境界だけでなく、能力や文化の違いも超えられる世界の実現を目指しています。そのために様々な企業と手を取りあって、同じ世界観を共有し、新たな社会基盤を構築していくことが大切だと考えています」
すべてに光技術を用いたネットワークは、低消費電力、高品質・大容量、低遅延を実現。これによってユーザーは環境を問わず、同じように高い没入体験が可能に。五感に関するものなど、幅広いデータも送信できる。
VR空間のプラットフォームとして、活用されている「DOOR」。マルチデバイスに対応し、立体的なVR空間を自由に歩き回って、ほかの人と一緒に映像や展示を楽しめる。
「IOWN構想」とは?
「IOWN」とはInnovative Optical and Wireless Networkの略。電子技術の進化が限界といわれる中、光技術を用いてICTのさらなる発展を目指す。光を電子に融合した「光電融合」チップを実用化し、回線からデバイスまで、すべてに光技術を用いた「オールフォトニクス・ネットワーク」を構築。低消費電力、大容量伝送、低遅延を生かし、「デジタルツインコンピューティング」を実現するとともに、これらのリソースを「コグニティブ・ファウンデーション」という最適化技術を用いて運用することで革新的な次世代ネットワークを提供する。
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取材・文/太田百合子